ほんのりと怖い話61‐90

すいません、うちの娘が

私が大学生の頃。帰りにタバコを買おうと思って、足を止めたときのことでした。6、7歳位の女の子がそばに寄ってきたのです。「こんにちは」私は変な子だなと思いましたが、一応「こんにちは」と返しました。「なにしてるんですか」「何って、タバコ買おうとしてるんだけど」妙に話しかけてくるその子に、私はついそっけない態度で接していました。私が財布を出しタバコを買い終えるまで、その女の子は「いい天気ですね」とか、「何年生ですか」とか、話しかけ続けてきました。私は適当に答えていました。私がそこを離れようとすると、その子は「お母さんが呼んでるから来てください」と言って、私の手を引っ張るのです。私はいよいよおかしいと感じました。私に用があるとでも言うのでしょうか。私はなんとか誤魔化して帰ろうとしましたが、女の子はこちらを振り返りもせずに「呼んでますから」と言い続け、私を連れて行こうとするのです。私はその執念のようなものに引きずられるかのように、女の子の後に付いていきました。もしかしたら本当に困っているのかもしれない、と思いもしました。5分ほど歩くと、少し大きめの公園に着きました。ブランコやジャングルジム、藤棚やベンチが見えます。夕暮れ近いせいか、人影はありませんでした。女の子は藤棚の方に私を連れて行きました。その公園の藤棚は、天井の他に側面の2面にも、藤が伸びるようになっていました。中にはベンチがあるのでしょう。女の子は「お母さん連れてきたよ」と、藤棚の中に向かって呼びかけました。私からは角度が悪くて、そのベンチは見えませんでした。中を覗きたかったのですが、私の手をしっかり握っている女の子を振りほどくのが、なんだか悪いような気がして出来ませんでした。「すいません、うちの娘が」と、藤棚の向こうから声がしました。普通の、何の変哲もない女の人の声でした。ですがその声を聞いた瞬間、全身に鳥肌が立ち、ヤバいという気持ちになったのです。一刻も早く、そこから逃げ出したくなりました。「わたし、遊んでくる」と唐突に女の子が言い、藤棚のすぐ向こうにあるジャングルジムへ向かって行きました。私ははっと我に返りました。「すいません、うちの娘が」また、あの声がしました。なんの変哲もない声。今度は鳥肌も立ちません。気のせいだったのか…?私は意を決して、藤棚の向こう側のベンチが見える場所に、ほとんど飛び出すような勢いで進みました。飛び込みざま、ばっとベンチを振り返ります。…そこには、少し驚いたような顔をした女性が座っていました。肩くらいまでの髪をした、30過ぎくらいの女性です。「すいません、うちの娘が」彼女は、今度は少しとまどい気味にそう言いました。…なんだ、普通の人じゃないか。そう思うと急に恥ずかしくなり、私は「ええ、まぁ、いえ」などと返すのが精一杯でした。私はその後、その女の子の母親と軽く世間話をしました。天気がどうだの、学校がどうだの…と、どうでもいい話なので省きますが。母親も言葉少なですが、普通に話していました。女の子は藤棚のすぐ隣、私の背後にあるジャングルジムで遊んでいます。そろそろ日も沈もうかという頃合い。公園はオレンジ色に染まりつつありました。私はふと、当初の目的を思い出しました。何故私がここに連れてこられたのか、です。そこで、「あの、どうして僕をここへ…」と問いかけました。その瞬間です。「チエっ(仮名)!!」と、もの凄い声で母親が叫びました。おそらくあの女の子の名前。私はバッと、背後のジャングルジムを振り返りました。すると目の前に何かが落ちてきて、鈍い音と何かの砕ける音が足下でしました。ゆっくりと足下に視線を向けると、あの女の子、チエという女の子が奇妙にねじくれて倒れていました。体はほぼ俯せなのに、顔は空を向いています。見開いた目は動きません。オレンジ色の地面に赤い血がじわじわと広がっていくのを、私は呆然と見ていました。警察、救急車、電話…などと単語が頭の中を飛び交いましたが、体は動かなかったのです。そのとき、女の子がピクリと動き、何事かを呟きました。まだ生きてる!と私は走り寄り、女の子が何を言ってるのか聞き取ろうとしました。「…かあ…さ…」お母さんと言ってるのか!?私は藤棚を振り返りました。ですが、彼女の母親の姿はそこにはありませんでした。そういえば…最初に叫んだときから、母親はここへ駆け寄ってもきていません。助けを呼びに行ったのでしょうか。「お…いちゃ…」再び女の子が呟いたので、私はそちらの方を向きました。「大丈夫だから。お母さんが助けを呼んでくれるから」と、そんなことを女の子に言ったような気もします。でも気休めです。どう見ても、首が折れているようにしか見えませんでした。私は、今ここにいない彼女の母親に怒りを覚えました。「おか…さんが……よんで…か…」女の子はまだ呟いています。……おかあさんが呼んでるから…?私は上、ジャングルジムを見上げました。そこには、さっきの母親がぶら下がっていました。濁った目、突き出た舌、あまり書きたくない。死人の顔です。そして母親の外れた顎がぐりっと動き、「すいません。うちの娘が」。あとはあまり覚えてません。私はその時に、気を失ったのだと思います。私は気づくと、夜の公園で呆けていました。そのジャングルジムは、その後取り壊されたと記憶しています。

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すいません、うちの娘が

私が大学生の頃。帰りにタバコを買おうと思って、足を止めたときのことでした。6、7歳位の女の子がそばに寄ってきたのです。「こんにちは」私は変な子だなと思いましたが、一応「こんにちは」と返しました。「なにしてるんですか」「何って、タバコ買おうとしてるんだけど」妙に話しかけてくるその子に、私はついそっけない態度で接していました。私が財布を出しタバコを買い終えるまで、その女の子は「いい天気ですね」とか、「何年生ですか」とか、話しかけ続けてきました。私は適当に答えていました。私がそこを離れようとすると、その子は「お母さんが呼んでるから来てください」と言って、私の手を引っ張るのです。私はいよいよおかしいと感じました。私に用があるとでも言うのでしょうか。私はなんとか誤魔化して帰ろうとしましたが、女の子はこちらを振り返りもせずに「呼んでますから」と言い続け、私を連れて行こうとするのです。私はその執念のようなものに引きずられるかのように、女の子の後に付いていきました。もしかしたら本当に困っているのかもしれない、と思いもしました。5分ほど歩くと、少し大きめの公園に着きました。ブランコやジャングルジム、藤棚やベンチが見えます。夕暮れ近いせいか、人影はありませんでした。女の子は藤棚の方に私を連れて行きました。その公園の藤棚は、天井の他に側面の2面にも、藤が伸びるようになっていました。中にはベンチがあるのでしょう。女の子は「お母さん連れてきたよ」と、藤棚の中に向かって呼びかけました。私からは角度が悪くて、そのベンチは見えませんでした。中を覗きたかったのですが、私の手をしっかり握っている女の子を振りほどくのが、なんだか悪いような気がして出来ませんでした。「すいません、うちの娘が」と、藤棚の向こうから声がしました。普通の、何の変哲もない女の人の声でした。ですがその声を聞いた瞬間、全身に鳥肌が立ち、ヤバいという気持ちになったのです。一刻も早く、そこから逃げ出したくなりました。「わたし、遊んでくる」と唐突に女の子が言い、藤棚のすぐ向こうにあるジャングルジムへ向かって行きました。私ははっと我に返りました。「すいません、うちの娘が」また、あの声がしました。なんの変哲もない声。今度は鳥肌も立ちません。気のせいだったのか…?私は意を決して、藤棚の向こう側のベンチが見える場所に、ほとんど飛び出すような勢いで進みました。飛び込みざま、ばっとベンチを振り返ります。…そこには、少し驚いたような顔をした女性が座っていました。肩くらいまでの髪をした、30過ぎくらいの女性です。「すいません、うちの娘が」彼女は、今度は少しとまどい気味にそう言いました。…なんだ、普通の人じゃないか。そう思うと急に恥ずかしくなり、私は「ええ、まぁ、いえ」などと返すのが精一杯でした。私はその後、その女の子の母親と軽く世間話をしました。天気がどうだの、学校がどうだの…と、どうでもいい話なので省きますが。母親も言葉少なですが、普通に話していました。女の子は藤棚のすぐ隣、私の背後にあるジャングルジムで遊んでいます。そろそろ日も沈もうかという頃合い。公園はオレンジ色に染まりつつありました。私はふと、当初の目的を思い出しました。何故私がここに連れてこられたのか、です。そこで、「あの、どうして僕をここへ…」と問いかけました。その瞬間です。「チエっ(仮名)!!」と、もの凄い声で母親が叫びました。おそらくあの女の子の名前。私はバッと、背後のジャングルジムを振り返りました。すると目の前に何かが落ちてきて、鈍い音と何かの砕ける音が足下でしました。ゆっくりと足下に視線を向けると、あの女の子、チエという女の子が奇妙にねじくれて倒れていました。体はほぼ俯せなのに、顔は空を向いています。見開いた目は動きません。オレンジ色の地面に赤い血がじわじわと広がっていくのを、私は呆然と見ていました。警察、救急車、電話…などと単語が頭の中を飛び交いましたが、体は動かなかったのです。そのとき、女の子がピクリと動き、何事かを呟きました。まだ生きてる!と私は走り寄り、女の子が何を言ってるのか聞き取ろうとしました。「…かあ…さ…」お母さんと言ってるのか!?私は藤棚を振り返りました。ですが、彼女の母親の姿はそこにはありませんでした。そういえば…最初に叫んだときから、母親はここへ駆け寄ってもきていません。助けを呼びに行ったのでしょうか。「お…いちゃ…」再び女の子が呟いたので、私はそちらの方を向きました。「大丈夫だから。お母さんが助けを呼んでくれるから」と、そんなことを女の子に言ったような気もします。でも気休めです。どう見ても、首が折れているようにしか見えませんでした。私は、今ここにいない彼女の母親に怒りを覚えました。「おか…さんが……よんで…か…」女の子はまだ呟いています。……おかあさんが呼んでるから…?私は上、ジャングルジムを見上げました。そこには、さっきの母親がぶら下がっていました。濁った目、突き出た舌、あまり書きたくない。死人の顔です。そして母親の外れた顎がぐりっと動き、「すいません。うちの娘が」。あとはあまり覚えてません。私はその時に、気を失ったのだと思います。私は気づくと、夜の公園で呆けていました。そのジャングルジムは、その後取り壊されたと記憶しています。

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ここは

これは俺が5年前に体験した、世にも奇妙な話だ。ある夏の日、俺は友人である男Aの車に、女Bと女Cを乗せドライブしていた。時計はすでに0時を回っていた。その日は雨がしとしとと降り続けており、じめじめして生暖かい日だった。A「どうせなら、肝試ししようぜ!なんか天気も気持ち悪いし。ははは」そんなAの突拍子もない提案に、他のみんなは嫌な表情を浮かべた。なかでも一番嫌がっていたのは、カエルとお化けが大の苦手だった俺である。俺「いやいやいや。いいって!帰って酒でも飲もうぜー」そんな怖がる私を見て、Aはますます面白がり、いよいよ皆を説得にかかった。A「わかったわかった。んでも、どうせ帰り道だし、○○霊園にちょっとだけ寄ってこうよ。 いいっしょ?寄るだけ寄るだけ。すぐ帰るから。そしたら飲もうぜ!パーっと!はは」そんなノリノリのAの様子を見て、後部座席に座る女性陣も俺も、渋々ながら承諾してしまった。雨は依然シトシトと、フロントガラスにこびり付いてくる。A「おっ、もうすぐだな!」強がるかのように、車内はたわいもない話で盛り上がっていた中、そのAの言葉に3人は少し顔をこわばらせながら、今から向かううっそうとした森に目を向けた。○○霊園は、国道から細い道へと入り、400メートルほど森の中を進んだところにあった。A「暗ぇーー!こえーー!ははは」B「マジ怖いマジ怖い。やめようよ、やっぱり」車は国道から、その細い道へと進入した。周りは木々がうっそうと生い茂り、もちろん街灯など一つもなく、暗闇そのものだった。車のライトだけを頼りに、舗装されていないその道を、ガタガタと車体を揺らしながら奥へと進む。C「いやー!チョー怖い、マジ怖い。つーか細くてユーターンできないじゃん!」A「余裕余裕!どっかでターンできるって。つーかマジ暗いな~」後ろを振り返ると、すでに国道は見えなくなっていた。幾分目が慣れてきたものの、そのことがかえって恐怖心をあおった。あれだけ乗り気だったAもさすがに少し怖くなったのか、CDのボリュームを上げた。A「おっ!あそこにターンできそうな場所があるぞ!どうする?」中間地点ぐらいなのだろうか。道幅がやや広いところがあった。そのAの言葉には、すでに引き返したいという意思がこもっていたようにも思える。俺「もういいって。帰ろうぜ!マジ勘弁だよ」B「早くユーターン!」A「ははは。おまえらビビリだなー。んじゃ帰っか」C「マジもう無理。つーかAもビビってんでしょ!早く帰ろうよ!!」そんなCの言葉に、強がりのAは急に車のエンジンを停めた。辺りは一瞬にして暗闇に閉ざされた。今まで車内に大音量で流れていたCDも止まった。ただ雨の音だけがシトシトと聞こえてくる。俺「うわっ!」B「きゃぁーー」C「きゃあー!」A「はっはは。やべー、マジでこえーな。やべーやべー。ん?あれ…」俺「マジ殺すぞA!!早くエンジン付けろボケェ!」B「なんなの、早くつけてよ!もう最悪―!」A「あれ?あれ?つかねー。なんだよ!つかねーよ!」俺「おい、マジでふざけんなよ!怖えーから早くつけろって!マジ殺すぞ!」A「マジだって!つかねーんだって!お前やってみろよ!」発狂してAを殴ってしまいそうな衝動を抑えながら、車のキーへと手を伸ばした。ガチャ、キンキンキンキーン キンキンキンキンキーン俺「おい、なんだよ!マジかよ!」キンキンキンキーン キンキンキンキンキーン   スターターの金属音だけがむなしく鳴り響き、エンジンはかからなかった。俺「マジかよ!おまえ、余計なことすっからだろ!マジで殺すおまえー」A「悪ぃって。つーか何でだろ?ちょっと見てくるわ。ちっ、最悪だよ!」Aはボンネットを開け、雨の中、車の外へと飛び出していった。後ろの二人も大分怖がっているようで、不安そうな表情を浮かべながら震えているようだ。すると、後ろに座っていたBが突然、B「ちょっと!マジ、あれ何?ちょっとあそこ見て見て、早く!」Bの指差した方を見てみる。車の左前方の森の中に、何やら光っているものが見える。俺「あっ!何だよ、あれ!」後ろの二人はすでに発狂している。俺も気絶しそうなほど怖かった。その光がだんだんと近づいてくる。なにやらライトのようにも見える。なにか危険を感じた俺は、Aを車内に戻すべくドアを開けようとした。その瞬間その光の正体は、突然車の目の前に現れた。中年の男性のようだ。つなぎのような服を着ていて、手には懐中電灯を持っている。こんな雨の日に傘も差していない。Aはびっくりして車内に飛び戻ってきた。A「なにあいつ?なんなの、あいつ?やべーよ、マジでやべーよ!」その男は、しきりに大声で何かを叫んでいるようだ。幾分強くなった雨脚のせいでよく聞き取れなかったが、確かに険しい表情で怒鳴り声を発している。ドンドンドンドン男は運転席の窓を強く叩いた。もう何がなんだかわからない。頭の中が真っ白だ。ドンドンドンドンドンドンドンドン「あ…」ドンドンドンドンドンドンドンドン「あけろ…」ようやく聞き取れた男の言葉に、Aは無意識にドアを開けてしまった。A「すいませんすいません!エンジンがかからなくて、すいません…」男はあいかわらず何かを言っている。「こ…おま…だな…どけ…」男はグイとAを車の外へと引っ張り出して、運転席へと座った。キンキンキンキン…ブルンブルンブルルルルル…突然エンジンがかかった。Aを運転席に戻したその男は、ものすごい大きな声で叫んだ。「ここはお前達が来る場所じゃないんだ!」混乱して、その後どうしたのかよく覚えていないが、気付くと4人はコンビニにいた。俺「マジ怖かった…」A「やばかったなーあいつ何者なんだよ…」後ろの女の子二人は、声を出して泣いている。A「落ち着いて、とりあえず便所でも行くか?」そのコンビニのトイレは、外に設置してあった。車を降りた4人は、フラフラな足取りで便所へと向かう。そこで俺は、ふとあることに気付いた。俺「おいっ!A、おまえ、なんで血ついてんの?」A「え?嘘!あっ…」Aの右手は血で赤く染まっていた。女の子二人は気を失ったのか、その場に崩れ落ちた。A「なんで…なんだよ、この血…」俺とAは急いで便所にある洗面所で、その手についた血を洗い流した。A「気持ちわりーよ。なんだよ、この血…」ジャブジャブ俺「んでも、怪我はしてねーみたいだな」A「そうだな。あっ!ま…まさか…」俺「えっ…」Aがジーンズの右ポケットから取り出した車の鍵は、血で真っ赤に染まっていた。なにやら毛のようなものも付いている!?ぎゃぁーーーーーー!!!その日は朝になるまで、俺の部屋で4人で呆然としていた。外はまだ雨が降り続いていた…

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