僕が父のように慕う『ナベさん』の若い頃の話。

 

時はベトナム戦争真っ只、ナベさんは沖縄へと旅立った。

 

今回の旅は某島のジャングルを縦走するのが目的だ。

 

本島でキャンプの道具を買い揃える。

 

なぜなら、米軍の“払い下げ”が安く買えるからだ。

 

そして途中で知り合った仲間数人たちと、お目当ての島へと渡った。

ナベさんは生きていた・・・

旅慣れたナベさんは定番のルートを避けてジャングルへと入って行く。

 

他のメンバーも旅慣れた者ばかりで順調に進んでいた。

 

夜は買ったばかりのシュラフ(寝袋)に包まり眠る。

 

全員同じシュラフだ。

 

旅慣れた者はみんな知っている。

 

軍用品は『質実剛健』。

 

そして払い下げとなれば値段もお手頃だ。

 

※質実剛健(しつじつごうけん)

中身が充実して飾り気がなく、強くたくましい。

 

しかし、このシュラフは新品同様なのにとにかく安かった。

 

明日も早いし、雑談もそこそこにして眠る事に。

 

・・・しかし眠れない。

 

何か、体に違和感がある・・・。

 

体を捩(よじ)る。

 

・・・いや、動かない。

 

腹が焼けるように熱い。

 

痛い。

 

何か訳の分からない声が聞こえる。

 

体が浮いている?

 

いや、誰かに運ばれている?

 

もう何がなんだか分からない。

 

そうか・・・。寝る前に聞いた話を思い出した。

 

この島は、第二次世界大戦の時に日本軍の秘密飛行場を作る為、集められた人が何百人もマラリアで死んだ。

 

飛行場建設後は秘密保持の為に全員殺されたという・・・噂。

 

仲間はどうなっている?

 

気になるが、目も開かないし耳も聞こえない。

 

ただ頭・・・、いや、魂に直接聞こえる音がある。

 

今度は何か、凄く気持ち良くなってくる。

 

気分がハイになるような、落ち着くような・・・。

 

腹の熱いような痛みも薄れていき、今はとても気分が良い。

 

荒かった息が落ち着きを見せ、静かに意識が薄らいでいく。

 

「いや違う、これは死だ!」

 

「俺は今、死にかけている!!」

 

ナベさんは直感した。

 

そして意識・・・否、生命の灯火が消えた。

 

朝、目覚めた。

 

ナベさんは生きていた。

 

確かに死んだのに・・・。

 

ナベさんは言う。

 

意識を失うのと、生命が消えるのは違う。

 

それが分からない奴はいない。

 

「俺は確かに死んだ」

 

仲間も同じような体験をしていた。

 

みんな口々に言う。

 

「俺は確かに死んだ」

 

怖くなった一団は島を後にした。

 

その夜もキャンプした。

 

シュラフに包まり、また恐怖は繰り返された。

 

次の日も、また次の日も。

 

内地(本土)に帰るまでずっと続いた。

 

数日が過ぎ、テレビでベトナム戦争のドキュメンタリーを見た。

 

ナベさんの目から涙がこぼれる。

 

全てを理解した。

 

あのシュラフは『死体専用の袋』だった。

 

そう、ナベさんたちは死んだ兵士の記憶を体験していたのだった。

 

(終)

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