動物の骨

家賃がたったの月々7千円なワケ 2/2

前回までの話はこちら

以下、大家さんの話。

 

今から6年前までは、このアパートも新築同様で住民も沢山いたんだ。

 

家賃も、他の普通のアパートとほとんど同じだった。

 

俺もアパートの大家っていう仕事に生き甲斐を感じていたし、自分なりに色々頑張っていたよ。

 

ある日、一人住民が引っ越して別のアパートに住む事になったもんで、部屋に一つ空きが出来た。

 

空きが出来てから数週間後に、その空き部屋に女が越してきた。

 

その女は異常なまでの動物愛好家で、アパートの部屋で猫やら犬は勿論、どこから拾ってきたのか、ウサギやタヌキなんかも飼っていた。

 

分かっていたら最初から住まわせなかったけど、ある日突然急に飼い始めてな。

 

俺も大家として最初のうちは注意したよ。

 

「ここで動物を飼ってもらっては困ります。どうしても飼うというなら出て行ってもらいますよ」ってね。

 

でもその女、俺が注意する度に「じゃあこの子達をどうすればいいんですか!捨てるんですか!?そんな事するくらいなら死んでやる!!」って怒鳴り散らしてね。

 

手に負えない訳よ。

 

当時の俺は甘かったせいもあって、隣の住民から苦情が出たら強制的に出て行ってもらおうとか考えていた。

 

まあ案の定、その女が越してきてから3週間と経たないうちに苦情が出てな。

 

あんだけ動物飼ってりゃ、まあ当たり前だ。

 

約3週間ももったのが逆にすごいよ。

 

で、すぐに出て行くよう説得に行ったよ。

 

今度はかなり厳しくな。

 

「出て行かない場合は法的手段を取らせてもらう」って。

 

そしたらその女、発狂してのたうち回ってね。

 

しばらくしたら静かになって、「分かりました」って言ったんだ。

 

「3日経っても出て行かない場合は、分かってるね」って念を押して、その日は女の部屋を後にした。

 

でも3日経っても女が出て行く様子が全く無い。

 

それでまた部屋に押しかけた。

 

でも鍵が掛かっていてドアが開かないから、合鍵で無理矢理に開けた。

 

そしたらどうなっていたと思う?

 

その女、部屋で首吊ってやがった。

 

あんだけ沢山いた動物も逃がしたのか知らないけど、キレイさっぱり居なくなっててね。

 

女の死体の足元に遺書みたいなのがあって、俺に対しての悪口やら、隣の住民の悪口やらが色々書いてあった。

 

まあすぐに警察に通報したよ。

 

大家として結構事情聴取されたけど、まあ死体を見れば自殺だって一目瞭然だわな。

 

女のこれまでの行動とかも細かく話して、警察も俺や隣の住民に同情していたな。

 

まあ特に大層な事も無く、キチ○イ女の自殺ってことで終わった。

 

大量の動物の行方については警察もちょっと調べたらしいけど、結局は分からんままでな。

 

君の話を聞いてようやく分かったよ。

 

まさか押し入れの床下だったとはね・・・。

 

警察もまさか床下に大量の動物が埋まってるなんて思わなかったのかな。

 

まあ実際、動物についてはどうでもいい感じだったし。

 

床板を張り替え前と後で全く同じ様にするなんて、あの女も手の込んだ事をするな。

 

それで、女が死んでから1週間後くらいに、アパートの住民全員から不思議な苦情があってな。

 

なんでも、冷蔵庫の中の食材なんかが、買って来たばかりの物まですぐに腐っちまうらしいんだ。

 

『原因不明』。

 

まさにこの言葉がお似合いだった。

 

そんな事が何度も続くもんだから、住民がどんどん出て行ってね。

 

最終的には住むもんが居なくなった。

 

住むもんが居ないって事は、アパートの経営が難しいって事。

 

家賃を相場よりも馬鹿みてえに安くして、なんとか経営を続けさせようとしたんだがな。

 

家賃に目がくらんで来る奴は沢山いたが、みんな2週間と経たないうちに出て行きやがる。

 

みんな出て行く前に言うセリフは、「腐る」、「カビが・・・」、これがほとんどだったね。

 

そう、今の君みたいにな。

 

ちなみに余談だが、君が住んでいたのはその女が自殺した部屋だよ。

 

まあそれで、いくら安くしても出て行かれる。

 

そのうち本気で生活が苦しくなって、アパートの大家以外に仕事を探さないといけなくなった。

 

なんとか職探しして、今はパチンコ屋の正社員さ。

 

給料もそこそこ良い。

 

現役で大家していた頃よりは少ないけど、充分に暮らしていける。

 

ま、そんな感じだな。

 

ただ、アパートに人が全然住まなくなってから、変な植物が沢山生えやがって、今じゃ全体を覆い尽くしている。

 

これも、あの女や動物達の怨念かも知れん。

 

それにしても、やっぱり人の死体ってのは恐ろしいもんでな。

 

あの女の死に顔、忘れられんのよ。

 

舌をだらっと突き出して、目が完全に白目剥いててな。

 

トラウマもんだぜ、ありゃぁ。

 

まあ、結局は自業自得だけどな。

 

そう言い終えて、大家さんは笑った。

 

俺は大家さんに、「まだアパートの大家を続けるんですか?」と訊いた。

 

「多分もう君が最後の住民だろうし、辞めようと思う。何より儲からんしな」

 

そう言って大家さんはまた笑った。

 

そして最初に会った時と同じ様に、うちわを扇ぎながら奥へ下がっていった。

 

俺はその後、初めに紹介された家賃3万2千円のアパートに住む事になった。

 

少し苦しかったが・・・。

 

20歳になる頃には正社員にもなり、安定した収入が得られるようになった。

 

現在24歳。

 

まだ家族は居ないが、頑張って生きている。

 

仕事の帰り、通勤電車に揺られながら時折大家さんの事が頭をよぎる。

 

あの出来事から6年経った今でも、喉に刺さった骨のように、折に触れてあの記憶が蘇る。

 

笑いながら奥へ下がっていった大家さんの後ろ姿。

 

その背中に寄り添うようにして、しがみ付いている女。

 

大家さんが後ろを向く時、確かに目が合った。

 

その目は冷たく、無機質に笑っていた。

 

(終)

The post 家賃がたったの月々7千円なワケ 2/2 appeared first on 怖いもん通信.

家賃がたったの月々7千円なワケ 1/2

 

俺は18歳の時、父親に耐え切れなくなって家を飛び出した。

 

昔から酒癖は悪かったが、俺が13歳の時に母親が脳梗塞で他界してからというもの、さらにそれは激しくなった。

 

毎日のように暴力を振るい、怒鳴り散らす。

 

挙句、仕事から帰って来ては酒に溺れていた。

 

そして父親は1年前に仕事を辞め、残った金をパチンコやら競馬やらで使い、それらに勝った金で酒などを買い生活していた。

 

ただ、それでも俺の学校(高校)の学費だけは出してくれていた。

 

その部分と、今まで育ててくれた事には父親に感謝したい。

 

出て行った理由として、毎日の理不尽な暴力と罵声、そして最後のこのセリフ。

 

「もうお前なんて息子でもなんでもねえ!縁切るからとっとと出てけ!」

 

普通に家で勉強していただけなのに、こんな事を言われたら、たまったもんじゃない。

 

これで何かが吹っ切れたのかも知れない。

その部屋での生活がスタートした

高校を卒業して数日が過ぎた頃、荷物をまとめて家を出た。

 

祖父は俺が2歳の時に、祖母は俺が5歳の時に亡くなっている。

 

だから実質、俺は18歳にして家族という存在を全て失った。

 

一人っ子だから兄弟もいない。

 

高校卒業という”最低限の学歴”だけが残った。

 

それに、俺はアルバイトをしていたから、月に7~8万円の収入もあった。

 

しかし家を出たは良いものの、住む場所が無い。

 

その日のうちに不動産屋へ相談しに行った。

 

とにかく安い家賃のアパートにこだわっていたから、「一番安い所はどこですか?」と訊いた。

 

「それなら・・・」と見せられたのが、『家賃3万2千円!』と書かれた比較的キレイなアパートの写真だった。

 

しかし、月の収入が7万円程しかない俺には痛い出費だ。

 

無理を言って、「もっと激安な物件はないんですか?」と問い詰めた。

 

すると、不動産屋の担当者は少し顔を曇らせながら、ウチで紹介できる最も安い物件は・・・。

 

そう言って、今まで俺に見せていた新品同様のキレイなカタログをしまうと、棚の隅からくたびれた一枚の茶色い紙を取り出した。

 

「ここになります」

 

俺が見せられた紙の表には、『家賃7000円、敷金礼金0円』と書かれた文字とアパートの写真。

 

家賃にも驚いたが、そのアパートにも驚いた。

 

建物全体が何だか分からない緑色の植物に覆われている。

 

玄関もベランダも窓も、そのツル状の植物に覆われ、2階建てのそれは『緑の館』と化していた。

 

「凄いっすね・・・」

 

俺がその写真を見た時、最初に出た言葉がそれだった。

 

「最も安いのがここで、これより上となりますと、先程紹介した物件になりますが・・・」

 

迷ったが、背に腹は変えられない。

 

「ここに決めます」

 

俺は渋々承諾するしかなかった。

 

このアパートは、その日のうちに住むことが可能との事。

 

ざっと書類に記入やらサインやらをして、不動産屋の担当者にそこへ案内してもらった。

 

そのアパートは写真で見た通り、得体の知れない植物に覆われていたが、実際に見るとさらに迫力があった。

 

“今から住むのを拒もうとする”、そんな迫力というかオーラみたいなものだ。

 

植物を掻き分けて、なんとか2階の俺の部屋となる入り口の扉に辿り着いた。

 

不動産屋の担当者が伐採用の大きなハサミで、ツルやら葉っぱやらを切り裂いて扉を開けた。

 

ムワッと、湿気とも臭気とも熱気とも似つかないものが一気に漏れ出した。

 

だが、中を見た俺は拍子抜けした。

 

そのアパートの見た目とは裏腹に、部屋の中は悪くなかった。

 

もっと言えば、少し埃っぽいが、ごく普通のアパートの部屋と言っていい。

 

呆気に取られている俺を見て察したのか、不動産屋の担当者が口を開いた。

 

「かなり前に住人が出て行って清掃されてるから、もう誰も住んでいないんです。それにしてもここまでキレイとは、私も驚きました」

 

キッチンなどは勿論、共同だがトイレや風呂も付いている。

 

それに加えて8畳半の広さ。

 

部屋の中の設備も悪くない。

 

なのに家賃7千円とは、どう考えても納得がいかなかった。

 

不動産屋の担当者に別れを告げ、俺のその部屋での生活がスタートした。

 

ちなみに、アパートへ向かう途中、ここの大家さんにはすでに会っている。

 

夏だったせいもあるが、白いランニングシャツにトランクス一枚でうちわを扇ぐ、メタボリックな中年男だった。

 

「ああ、住むの?そうか・・・。まあ頑張って」

 

それだけ言うと、その男は欠伸(あくび)をしながら奥へ下がっていった。

 

アパートの大家以外にも仕事はしているらしく、ごく普通の家に住んでいた。

 

腹が肥えているのが何よりの証拠だ。

 

(こんなヤツが大家とは・・・。あんなアパートだというのも頷ける。というか、頑張れってなんだよ!)

 

俺は心の中でそう思った。

 

出来る限り安いもので家具やら何やらを揃え、なんとかそのアパートの部屋に自分の生活空間を作りあげた。

 

バイト先からそう遠くないという事もあり、外観は最悪だが、内心では良い所に住めたとその時は思っていた。

 

住み始めて数日が経ったある日、冷蔵庫の中の異変に気づいた。

 

昨日買ったばかりの牛乳パックの中身が、妙にドロドロになっているのだ。

 

まるで、日光の下で何日か放置させたかのように・・・。

 

冷蔵庫は別段壊れている様子は全くなかった。

 

その証拠に、他の食材は新鮮そのものだった。

 

首を傾げながらも、もうその牛乳は飲めないため捨てるしかなかった。

 

それからまた数日後、バイトから帰ってきた俺は、何か飲もうと冷蔵庫を開けると驚愕した。

 

冷蔵庫の中の食材が腐っていて、白とも紫とも赤とも似つかないような得体の知れないカビに覆われていたのだ。

 

肉はパックの中に入ったまま、白いサンゴ礁のようになっていた。

 

それらは昨日買ってきた食材ばかりだった。

 

これは一体・・・。

 

しかし冷蔵庫が壊れているという事はなく、開けると冷気が体を包んだ。

 

仕方が無いので、その日はコンビニで弁当や飲み物を買って食事をした。

 

冷蔵庫の中の物は腐りきっていた為、全て処分した。

 

その翌日はバイトが休みだった。

 

快晴だったこともあり、ベランダを掃除して敷布団を干そうと持ち上げた俺は、強い吐き気を覚えた。

 

まるで何年も敷布団をそこから動かさずに放置していたかのように、その裏面にはビッシリとカビが生えていた。

 

黄色いシミのようなカビ、黒いカビ、赤いカビ、緑のカビ。

 

それらが敷布団の裏全体を覆っていた。

 

思わず俺は、その敷布団をベランダから外へ放り出してしまった。

 

もう泣きそうだった。

 

その日は新しい敷布団を買いに行くために出掛けた。

 

もうあまり金の無い俺は、一番安い煎餅布団を買う以外なかった。

 

そして部屋に帰り着き、扉を開けた瞬間、あまりの腐臭に軽い目眩を覚えた。

 

部屋全体を覆う、カビ、カビ、カビ・・・。

 

冷蔵庫の中からは、薄く黄色がかった透明な液体が滴っていた。

 

あまりの異様な光景に、俺は放心状態になっていた。

 

その時、黒色とも緑色とも思えるカビ部屋と化したその空間に、1箇所だけキレイな場所がある事に気づいた。

 

部屋の隅にある、目立たない『押入れ』だ。

 

その押入れの戸だけが妙にキレイなままなのだ。

 

越して来てから一度も開けた事の無かったその押入れが、この凄まじい腐臭の原因の様に思えた。

 

俺は靴を履いたまま部屋にあがると、その押入れを躊躇なく開けた。

 

だが、そこには何も無かった。

 

床の中心部分が紫色に変色している以外は・・・。

 

床板の中心部分だけが楕円状に変色している。

 

俺は意を決してその板を剥(は)がした。

 

板は腐っていた為、簡単に剥がすことが出来た。

 

途端、凄まじい腐臭が鼻を突く。

 

そこにあったものは『大量の動物の骨』。

 

とにかく沢山の動物の骨が床下に敷き詰められていた。

 

なぜ骨がここまでの腐臭を放つのか分からなかったが、俺にはそれが死んだ動物達の怨念のように思えた。

 

冷静になって考えて確かな事は、俺はもうここには住めないという事。

 

そして、前の住人による動物虐待と虐殺があったという事。

 

このアパートの家賃が安かったのも納得だが、理由がこんな事だと知っていたら千円でも御免だった。

 

なんとかまだ大丈夫な荷物をまとめ、俺はこのアパートを後にした。

 

しかし、このアパートについて何も知らないまま去るのも何となく嫌だった為、大家さんの家へ行き、この部屋であった事を詳しく話した。

 

すると、別段驚く様子も無く、「そうか・・・」と言って大家さんは語り始めた。

 

(続く)家賃がたったの月々7千円なワケ 2/2

The post 家賃がたったの月々7千円なワケ 1/2 appeared first on 怖いもん通信.

裏山で見てしまった恐ろしい集団 2/2

前回までの話はこちら

さっきまでノリノリだった先輩も、さすがに顔が真っ青で、硬直している俺達に「逃げるぞ!」と言うと、俺達を後ろから追い立てるように走り出した。

 

俺達が走り出すと、そのおばちゃんも物凄い形相のまま追いかけて来た。

 

走っている最中に気付いたが、おばちゃんは走りながら何かを叫んでいる。

 

内容は殆ど聞き取れないが、言葉の節々に「ソーカツ」もしくは「ソーカン」と言っている事だけは判別できた。

 

が、意味はよく分からない。

 

どれくらい逃げただろうか。

 

大学や民家の明かりが見えるようになった頃、もう追って来ていないのではないかと、俺は後ろを振り向いた。

 

すると、先輩が必死の形相で走ってはいるが、その後ろには誰も居ないように見えた。

 

俺は息を切らしながら先輩と田中と松本に、「もう追って来ていないみたい」と途切れ途切れに言うと、体力が限界だった事もあり、その場にヘタリ込んでしまった。

 

先輩も田中も松本も同じように座り込むと、先輩が「アレ、幽霊とかじゃなく人だよな?」と自分に言い聞かせるように訊いてきた。

 

「人なんだろうけど・・・あれは普通じゃないっすよ」と田中が返した直後、俺達の座り込んでいる場所の後ろの藪からガサガサッと音が鳴り、僅かに人影が見えた。

のちに大量に見つかったものとは・・・

あのおばちゃんだった。

 

しかも、それだけではない。

 

後ろに少なくとも『あと4人の人影』が見える。

 

おばちゃんは1人ではなかった。

 

おばちゃんは相変わらず物凄い形相でこちらを睨み付けている。

 

さらに後ろの方の人影の内のおっさんっぽい人が、「君たち、どこまで見てた?危害は加えないからちょっと話をしようか?」と喋りかけてきた。

 

口調は平和的なのだが、明らかに声は悪意に満ちている。

 

俺達は本能的に「このままここにいたら殺される・・・」と感じ、目配せをすると先輩がおばちゃん達の集団に掴んだ砂を投げかけ、それを合図にまた全力で逃げ出した。

 

山の坂道を転げるように走り抜け、大学の構内へ逃げ込むと、松本がどこかに電話をし始めた。

 

警察に電話していたらしく、しばらくするとパトカーがやって来た。

 

警官に事情を話し、何度か無線でやり取りをした後、詳しく事情を聞きたいという事で俺達はパトカーに乗って警察署へ行く事になった。

 

警察署である程度の事の成り行きを話した。

 

だが、これで終わりかと思えば、「もう一度詳しく事情を訊きたいので、もう少し居て欲しい」と言う。

 

俺達は警察署で朝まで待たされた。

 

そして朝になると、今度はやたらガタイの良い私服警官が2人やって来て、俺達ひとりひとりにまた詳しく事情を訊いてきた。

 

俺はさすがに不安になり、私服警官に「俺達なんかヤバイ事しちゃってるんですか?」と訊くと、警官はにっこり微笑んでから、「君達は大丈夫だよ。ちょっと念の為に詳しく事情を訊いているだけだから昼には帰れるよ」と言ってきた。

 

警官の人が言った通り、俺達は昼頃には帰って良い事になり、連絡を受けたらしいゼミの教授が車で迎えに来てくれた。

 

教授に色々と訊いてみると、教授も事情はよく知らないらしいが、どうも例の裏山で警察が『山狩り』をしている最中らしい。

 

先輩が、「あの集団は指名手配犯か何かなんですか?」と教授に訊いたが、その辺りも良く知らないとの事だった。

 

だが、明らかに大事(おおごと)になっているようだった。

 

その後、俺達は警察に再度呼ばれることも無く、あの集団にまた出会うことも無く、誰も事情を教えてくれないので詳細も分からずいたのだが、事件から3ヶ月ほど経った頃に少しだけ情報が入ってきた。

 

どうもあの建物、何かのカルト集団の『儀式の場所』になっていたらしいという事と、警察の捜査の結果、あの辺りから『大量の動物の骨が見付かった』という。

 

その後は事件らしい事件は無かったが、あの事件から一つだけ変化があった。

 

それは、先輩があの一件で懲りたのか、軽はずみに「探検に行こうぜ!」とは言わなくなった。

 

(終)

The post 裏山で見てしまった恐ろしい集団 2/2 appeared first on 怖いもん通信.

裏山で見てしまった恐ろしい集団 1/2

 

俺がまだ学生だった頃、大学の先輩がどこからか怪談話を聞いてきて、得意気にサークル部屋で話していた。

 

その話というのが、60年代か70年代頃に、当時うちの大学もいわゆる安保闘争とかいう学生運動が盛んだったのだが・・・。

 

その中の結構な数の一団が、テロ的な活動ではなく、何かオカルト的な儀式による革命のようなものに大真面目にはまっていたらしく、大学の裏山の既に使われていない建物内で『何らかの儀式をしたらしい』という話だった。

そこで4人が見たものとは・・・

そして、ここからがありがちな話なのだが、儀式の結果『何か』を呼び出してしまったようで、学生の何人かがそれを見て発狂し、殺人事件にまで発展したと。

 

今でもその廃屋には、その時に殺された学生や『何か』がまだ潜んでいるという、そんなベタな話だった。

 

俺は、「オチそんだけかよ!」と心の中で突っ込みを入れた。

 

確かに大学の裏には小さな山がある。

 

そこの大部分は森というより藪だが、そもそもあそこに建物なんてあったか?あれば気付くよな?などと考えていると、先輩が突然「今日の夜、その建物を探しに行こうぜ!」と訳の分からない事を言い出した。

 

その時に部屋に居たのは、俺と先輩。それに、俺と同じ1年の田中(仮名)と松本(仮名)だったのだが、ノリノリなのは明らかに先輩だけ。

 

俺と田中と松本の3人は、「マジかよ・・・」と明らかに面倒くさそうに顔を見合わせた。

 

さっきまで居たはずの他の先輩達はいつの間にか居なくなっている。

 

多分、色々と察して逃げたのだろう。

 

実はこの先輩、普段から面倒見が良く凄くいい人で、周囲の評判も上々で友達も多い。

 

なのだが、なんというのか・・・、やたらこの手の話に騙されやすい上に、無駄に行動力もあり、良い人ゆえに俺達は断れず、何度か先輩のこの手の『探検』に付き合わされたことがあった。

 

その夜、俺達は結局先輩の探検に付き合い、その”あるかどうかも分からない建物”を探す事になった。

 

季節は夏。

 

山の中に入れば当然ヤブ蚊がいっぱいいるし、夏なのでやたら暑い。

 

要するに、山の中を歩き回れば蚊に刺されまくるし、無駄に汗だくになる。

 

俺はぶっちゃけ、「建物は見付からずに朝まで山の中を歩き回る事になるんだろうな・・・」と覚悟を決めていた。

 

そんな俺とは真逆で、やたらハイテンションな先輩。

 

そして、この後の展開を考えると色々と重苦しい雰囲気の俺達1年の3人は、大学の裏道から雑草が生い茂った明らかに何年も人が入っていない山道を進んでいった。

 

山道に入り、40分ほど歩いた頃だろうか。

 

なんと、意外とあっさりとコンクリートで出来た小さな資材置き場のような建物を見つけた。

 

俺達3人は意外と早く見付かった事にホッとしたが、どうも先輩もこんなにあっさり見つかるとは思っていなかったらしく、さらにテンションが高くなっている。

 

正直なところを言えば、建物はあったが実際ここが目的の場所かどうかなんて分からない。

 

分からないのだが、「次を探そう!」などと言われたら堪らない俺は、その事を先輩に黙っていた。

 

俺と田中と先輩が近付いて中の様子を探ろうとすると、急に松本が真顔で「ちょっと待った!」と俺達を小声で呼び止めた。

 

松本は3人に姿勢を低くするようにジェスチャーすると、「あそこに誰かいるぞ!」と建物の窓を指差した。

 

俺達は松本の指が指すその方向を見てみた。

 

明かりも点いていないので気付かなかったが、窓のところにはハッキリと人影が映っている。

 

髪型からして女性だろうか。

 

この時になって、俺は昼間の先輩の怪談話が頭を過(よ)ぎった。

 

「いや・・・まさかね・・・」

 

そうは思ったが、背筋が寒くなり、暑さとは違うイヤな汗が体から吹き出てくる。

 

俺だけでなく、田中と松本も多分同じように感じていたのだと思う。

 

2人とも一言も言葉を発さずにジッとしていた。

 

・・・だが、先輩だけは違った。

 

先輩は、「人が居るなら噂が本当か訊いてみねぇ?」と、とんでもない事を言い出した。

 

俺は唖然として、「この人は物凄く勇気があるのか?それともありえないくらいバカなのか?」と真剣に先輩の思考を疑った。

 

『真夜中に真っ暗な廃屋内で何かをしている人影』

 

怪しいにも程がある。

 

仮に人だったとしても、とてもまともな人とは思えない、そんな怪しい人物に自分からか関わろうなどと普通は思わないだろう。

 

良く考えると、こんな真夜中に男4人で山の中をウロウロしている俺達が、人のことを言えた立場ではないのだが。

 

とにかく先輩を思い留まらせないといけないと感じた俺達3人は、思い付く限りの事を色々と言ってみて、先輩を踏み止まらせようとした。

 

だが、その会話の声が少し大き過ぎたのかも知れない。

 

ふと気付くと、窓のところにあった人影が無くなっている事に田中が気が付いた。

 

俺達4人は辺りをキョロキョロとしていると、ドアのところに人影が見えた。

 

ビクッ!となった俺が、思わずその人影に懐中電灯の光りを当てたのだが、その姿は異様としか言いようのない姿で、俺達はヘビに睨まれた蛙のように身動き一つ出来なくなってしまった。

 

年齢は50代後半から60代くらいのどこにでもいそうなおばちゃんなのだが、髪の毛は長くてボサボサだった。

 

血まみれのエプロンをして、右手にはデカイ包丁。

 

左手には何か原形を留めていない血まみれの肉塊を握り締め、何かブツブツと呟きながら物凄い形相でこちらを睨み付けている。

 

おばちゃんは暫らくこちらを睨み付けていたが、唐突に悲鳴とも絶叫とも聞こえるような凄まじい声で、「誰だぁぁぁぁぁぁぁ!!!」と叫んだ。

 

そうして早足にこちらに向かって来た。

 

(続く)裏山で見てしまった恐ろしい集団 2/2

The post 裏山で見てしまった恐ろしい集団 1/2 appeared first on 怖いもん通信.