山根康宏のケータイ西遊記

カジノの街ラスベガス。スマホショップへ導くのは歌うタクシードライバー!?【山根康宏のケータイ西遊記:第18回】

ケータイ西遊記 -第18回- アメリカ/ラスベガス編

携帯電話研究家・山根康宏が、世界各地でお宝ケータイに出会うまでの七転八倒デジタル放浪記。

「山根康宏のケータイ西遊記」連載記事一覧

 

【ラスベガスで購入した端末】 Nokia Lumia 2520 販売価格(2014年1月当時):499ドル あのノキアが出していたタブレットだがLTE内蔵で単体通信できる、スマホの親玉と言える存在。ドライバー行きつけの店で実機を触り、そのあと正規店で購入した。

カジノの街ラスベガス スマホを探しに街中へ

カジノやショーを目当てに世界中から多くの観光客が集まるラスベガス。そんな客を目当てにブランド品や土産品を売るショッピングモールも、街中にはたくさん連なっている。だが、そんなラスベガスの中心部で、スマホを買おうとすると大変だ。アップルストアがある以外、スマホを売っているような店は存在しないのだ。

▲巨大ショッピングモールが多いがスマホが買えるのはアップルストアくらい。

自分がラスベガスへ行く目的は、年に何度か行われる展示会取材。その取材の合間にカジノでお金を使うくらいなら、アメリカならではのスマホを探索をしたいもの。しかし、そのためにはカジノ街からちょっと離れた地元の人向けのショッピングモールへ行かなくてはならない。初めてラスベガスを訪問した時は土地勘が無く、カジノホテルからモールまで歩くこと1時間。汗だくで到着したが、家電量販店に並ぶスマホの山を前にすると、疲れなど一瞬で飛んでしまう。どれを買おうか悩みながら至福のひと時を過ごしたあとは、フードコートでアメリカンな中華料理を頬張れば、その日は自分にとって最高の休日になるのだ。

その後は路線バスが走っていることも知り、展示会が終わった夕方からバスでモールまで出かけたり、帰国最終日の朝にホテルからモールへバスで往復するなど、ラスベガスの移動に路線バスは欠かせない存在になった。運転間隔は20分〜30分で本数は少ない。今ならスマホアプリでバスがいつくらいに来るかもわかるようになり、バス移動も楽になっている。

しかし時間が無いときはタクシーを使ってモールまで一走りすることもあった。これも今ならライドシェアサービスを使うが、数年前まではタクシーのみが好きな時間に自由に移動できる移動手段だったのだ。

▲モール巡りはバスかタクシーを使う。

陽気な運転手との出会い スマホは彼らの必需品

ラスベガスでタクシーに乗り込めば、ドライバーが必ずといっていいほど話しかけてくるが、そこから思わぬ情報を得ることもある。「どこまで」「ウォルマートまで」「食品の買い込みかい?」「スマホを買いにいくんだよ」「え、わざわざスマホを買いにタクシーに乗ったのか!」こんな具合に驚いてくれたらこちらのもの。何かしら関心を持ってもらえるからだ。

あるときは「おれの友人が代理店やってるからそこへ連れて行ってやるよ」と、地元の人しかいかないような小さい店へ連れていてもらったこともあった。その店にはカタログ落ちしたやや古いモデルも販売されており、思わぬ掘り出し物を見つけることも出来た。また、「おれもスマホ大好きで半年ごとに買い替えてる」というドライバーの車に乗った時は、「この前の発表会、あれは納得いかないよなあ」などと最新モデルのメーカー発表会について、議論に夢中になったこともあった。タクシーのドライバーは意外にもスマホ好きが多いのだ。一日中一人で運転してるからこそ、外と連絡が取れるスマホへの愛着が人一倍湧くのだろう。

▲ドライバーに連れられ地元のケータイショップに行ったこともあった。

ラスベガスらしいタクシーに乗ったこともある。なんとドライバーが歌を歌ってくれるのだ。とあるドライバーは歌詞カードも用意し、客に選ばせる本格派。だが、こちらもノリを合わせて手拍子や掛け声をかけねばならず、実はあまり楽しめなかった。歌手を目指して断念して、今はドライバーをやっているのだろうか。降りるときはチップを多めに渡したのは言うまでもない。

一方、こちらから進んでチップを渡したドライバーもいた。乗り込むや否や「ジェントルマン、お前が一番好きなものは何だ?」と、いきなり話しかけてきたのだ。「ええと、スマホかな」と答えると「困ったな、スマホか、じゃあこんなのどうだ」と、彼は走り出しながらアカペラでラップを謳いだした。歌には「RingRing」という掛け声が混じっている。そして歌いながら「どこへ行く?」と聞いてくるのだ。こちらも「ベストバーイ」のようにノリで答えてしまう。こんなドライバーばかりだったら、ラスベガスでスマホを買うのも毎回楽しみになる。いつか再び彼の車に乗ってみたいものだ。

文/山根康宏

山根康宏(やまねやすひろ):香港在住の携帯電話研究家・ジャーナリスト。世界の携帯電話事情を追い求め、1年の約半分を海外で過ごす。携帯電話1500台、SIMカード500枚以上を所有するコレクターでもある。

『デジモノステーション』2017年11月号より抜粋

B09 地球の歩き方 ラスベガス セドナ&グランドキャニオンと大西部 2017~2018

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突然の塩対応!アテネの家電店で女性店員恐怖症に?【山根康宏のケータイ西遊記:第17回】

ケータイ西遊記 -第17回- ギリシャ/アテネ編

携帯電話研究家・山根康宏が、世界各地でお宝ケータイに出会うまでの七転八倒デジタル放浪記。

「山根康宏のケータイ西遊記」連載記事一覧

 

【アテネで購入した端末】 MLS Easy S 販売価格(当時):119ユーロ スマホなのに数字キー付きというちょっと変態な端末。しかし画面のタッチ操作もできるので意外と使いやすい。通話用としても最適で、1台持っているとなにかと便利だ。

歴史を感じるアテネの街 店のスタッフも好印象

ギリシャの首都・アテネを初めて訪れたのは何年前だっただろうか。ヨーロッパを移動中に行ったことのない都市を訪れようと、わずか1泊で立ち寄ったのが最初だった。アテネ中心部に位置するパルテノン神殿を訪れなくとも、市内を歩き回るだけでギリシャ数千年の歴史を感じられる遺跡に出会うこともできる。アテネの街は史跡好きではなくとも十分楽しめるのである。

▲一歩路地裏に入れば古いたたずまいが残るアテネ。

アテネ滞在はいつもシンタグマ広場付近と決めている。地下鉄やバスの交通の要の場所なので、アテネのどこへでも移動しやすいからだ。空港バスも24時間ここから運行している。付近には通信キャリアの店も各社揃っているのでプリペイドSIMの購入も簡単だ。

その年は滞在が数日だったためにデータ通信容量が多めのSIMを買うべく、広場付近にあるキャリアの店に立ち寄った。こちらのスマホの言語はあらかじめギリシャ語に変更、これで相手は苦も無く設定もできるというわけだ。自分が表示言語を読めなくなるが、設定画面を開いて言語設定を戻すくらいならアイコンを見ているだけでもわかる。これくらいのことができないようでは世界各国を回れない。ただしアラビア文字だけはさっぱりわからず、さすがに中東を訪れたときは店のスタッフに英語へ戻してもらった。

さて赤い看板の有名キャリアの店でプリペイドSIMがほしいと伝えると、40歳前後の彫りの深い顔立ちの女性がてきぱきと「滞在は何日?データ通信は必要?現金で払える?」と聞いてくる。観光地でもある場所柄か外国人慣れしているのだろう。こちらから細かい説明をしなくともいいのは助かるものだ。「5日間で2ギガバイトくらい」と伝えパスポートを渡すと、これまた店の端末に情報を打ち込んでいく。ここまでスムースならば10分もかからずSIMを入手できそうだった。

▲シンタグマ広場には家電店やキャリアの店も多い。

休息を重んじるのがアテネ人 オンとオフの切り替えは瞬時

ところが彼女は腕時計をちらりと見るや、不機嫌な顔になりほかの店員と何やら話をし始めた。どうやらSIMの在庫がないような口調なのだが、男性店員が1枚のSIMを差し出してきても彼女は受け取らず、こちらを振り向くと「ごめんなさい、2時間後にまた来てね」というではないか。時計を見ると14時、シエスタの時間になったところだったのだ。スタッフは急に店じまいの支度をはじめ、自分も追い出されてしまった。その後あらためて2時間後に店を訪問したが、なぜか彼女の姿は見つからず。男性店員からSIMを買ったものの、どうにもすっきりしない気分で店を後にしたのだった。

さて翌日はスマホでも買おうとアテネの家電店を探索してみた。日本円で1万円程度の格安機もあり、どれを買おうか悩んでしまう。時間は17時過ぎで、シエスタは終わっている。そばにいた女性店員に話しかけると「日本人のお客さんははじめてだわ」と歓迎ムード。ベーシックな機能でいいから安いものをと伝えると、3機種を出してくれた。ヨーロッパにしかない地場メーカーのマイナーなモデルは記念に買いたくなる製品だ。よし、それを買おうと伝えると、彼女はレジに向かうのではなく別の店員に話しかけ、そのまま店の奥へ向かっていった。数分待っても出てこないので残っている店員に話しかけると「彼女の勤務時間が終わったので、僕が対応することになったよ。それで買うものは決まった?」と聞いてくるではないか。ギリシャの女性は休みになると仕事のことはそっちのけになってしまうのだろうか。彼の顔の表情も仕方ないよね、というものだった。

その後何度がアテネを訪れたが、愛想のいい店員には話しかけず、むしろぶっきらぼうであまりフレンドリーでは無い店員を探すようにな癖がついてしまった。2017年にも再訪したときは、ケータイスタイルのスマホという面白い端末を家電店で発見! しかし女性店員しかフロアーにはおらず、みな満面の笑みでお客さんを出迎えている。

本来なら喜ばしいことなのだが、女性店員恐怖症になっている自分は声をかけられない。どうしたものかと店内をうろついていると、こちらが挙動不審と思ったのだろう、警備員の男性が「どうしましたか?」と英語で話しかけてくれた。さすがに女性が苦手とは言いづらく「ギリシャ語ができないのだけどスマホが欲しい」と伝えると、彼がレジまで一緒に行ってくれて、買いたい商品までも説明してくれた。レジのスタッフも女性だったが、さすがに会計の途中で席を外すことはなかった。アテネで安心して買い物できたのは実はこれが初めての経験だった……。

文/山根康宏

山根康宏(やまねやすひろ):香港在住の携帯電話研究家・ジャーナリスト。世界の携帯電話事情を追い求め、1年の約半分を海外で過ごす。携帯電話1500台、SIMカード500枚以上を所有するコレクターでもある。

『デジモノステーション』2017年10月号より抜粋

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中国広州で幻の謎スマホに遭遇!しかし店主の取った行動は?【山根康宏のケータイ西遊記:第16回】

ケータイ西遊記 -第16回- 中国/広州編

携帯電話研究家・山根康宏が、世界各地でお宝ケータイに出会うまでの七転八倒デジタル放浪記。

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【広州で買いたかったケータイ】 モトローラ MPx 販売価格(当時):1万元(約13万円) 縦横に開く変形ギミックスマホ。定価でも8万円程度だったが中古店ではさらに高値の13万円が提示され、さすがに買えなかった。

食の都な中国広州で 中古ケータイ屋巡り

「食は広州にあり」と言われる中国南部の巨大都市、広州。“四本足のものならテーブル以外は何でも食べる”と揶揄されるほど奇食も多いのが特徴だ。レストランの隣に動物園があると思いきやそれは食材だった、なんて逸話も聞かれるほどである。

そんな広州は古くから海外との貿易が盛んな都市だ。世界の工場と化した同じ広東省の深センが発展したのはわずかここ十数年のことだが、広州ではずっと前からモノの取引が世界中と行われてきた。中古の自転車やバイクが広州からアフリカなどへ輸出もされていたのだ。当然、ケータイの中古を扱うビルも市内に多く点在していた。

自分は数カ月に一度の広州通いを行っていたが、目的はもちろん食事ではなく中古ケータイ。広州に集まる中古機は古い製品も多く、見たことも無いような端末を見つけることも多かった。大抵の店ではこちらが日本人と知ると「なんでこんな古い端末を買うんだ? コレクションにしているのか? だったら安くしてやると」と、フレンドリーに中古機を売ってくれた。

中国人ですら買わないような古い端末を、わざわざお金を出して買うこと自体、不良在庫、いや“ゴミ”がお金になっているようなもの。そうやってゴミ漁りをする外国人など、彼らにとっては上客だったに違いない。

▲広州と深センを結ぶ高速鉄道。香港からも2時間程度で広州入りできる。

幻の謎スマホを発見 売らない店主の秘密

広州にもだいぶ慣れた2005年、いつものように中古ビルの1つを訪問し、お店を片っ端から回り始めた。このビルには小さなショーケースに自分で仕入れた中古端末を売る店が百軒以上入っている。

今回は予算があるので古いスマホを探そうと全てのお店を片っ端から回った。だが、中古屋巡りはお金があるときに限ってモノは見つからず、無いときにレアなブツと巡り合えるのが“あるある”だ。

そうやって店内の7割程度の店を回り終えたときに、1台のスマホが目に飛び込んできた。モトローラが出していた『MPx』という変形スマホだ。ガラケーのように折り畳み式だが縦に開くだけではなく、横にも開くという変態ギミックが魅力の製品だ。しかもキーボード部分はパソコンと同じフルキーボードを備えている。発売になったかどうかも不明な製品が、ショーケースの片隅に置かれていたのだ。

しかし店員は不在。どうやら昼食に行っているようだ。待つこと30分ほどして30歳前後だろうか、金髪でやり手に見える店主が戻ってきた。「これが欲しい!」と真剣な眼差しで訴える……。しかしこれは売らない、と突っぱねるのだ。両隣の店員も「この日本人はずっと待ってたよ」「現金も持っているぞ」と助け船を出してくれる。すると店主は仕方なく「1万元」とぶっきらぼうに言い、また店を離れてどこかへいってしまった。当時のレートで約13万円。そんなお金はもちろん持っていないし、レア品とは言え高すぎる。

諦めきれずに再び1時間ほど待っていたが、店主は戻ってこなかった。その間にショーケースに並ぶ製品を見ると、他にも珍しい端末が多数おいてある。両隣の店員に聞くとこの店主は珍しい端末を買い集めているという。つまりここは店ではなく、彼のコレクションを並べている場所だったのかもしれない。この『MPx』も入手したてのブツだったのだろう。しかし、それならばなぜここで店を開いているのだろう? それに端末を売らなくてどうやって生計を立てているのだろう?

店主が店にいるのは週の半分で昼間だけと隣の店員が教えてくれた。もしかすると本業を持ちながら、自分と同じマニアで古い端末を収集しているのだろうか。そしてここは家族にも知られたくない、彼の憩いの場所だったのかもしれない。ケータイを集めているマニアだと話しかければ、あんな対応はされなかったかもしれない。

数カ月後に再訪したが、ビルは再開発され店内は洋服店に入れ替わっていた。彼はいまでも変形スマホを持っているのだろうか? 一度会ってマニア談義をしたいと、今でも広州に行くたびに彼のことを思い出すのだ。

▲広州では当時PHSもサービスされていた。名も知らぬメーカーの端末たち。

文/山根康宏

やまねやすひろ/香港在住の携帯電話研究家・ジャーナリスト。世界の携帯電話事情を追い求め、1年の約半分を海外で過ごす。携帯電話1500台、SIMカード500枚以上を所有するコレクターでもある。

※『デジモノステーション』2017年9月号より抜粋

D05 地球の歩き方 広州 アモイ 桂林 珠江デルタと華南地方 2017~2018

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大航海時代を思わせる葡リスボン。ケータイで繋がる30分の恋【山根康宏のケータイ西遊記:第15回】

ケータイ西遊記 -第15回- ポルトガル/リスボン編

携帯電話研究家・山根康宏が、世界各地でお宝ケータイに出会うまでの七転八倒デジタル放浪記。

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【ポルトガルで気になったケータイ】 ファーウェイ Y201 Pro 販売価格(当時):89.90ユーロ ファーウェイ『Y201 Pro』は、当時ポルトガルだけではなく、欧州各国で売られていたプリペイド格安スマホ。ポルトガルで購入すると、1カ月間使用できるデータ定額SIMも付属していた。

大航海時代を思わせる リスボンの街並み

ヨーロッパの各都市へ行くと今でも道路は石畳のまま、レンガ造りの古い建物が並んでいる光景を目にすることが多い。時代が変わっても街の景観になるべく手をくわえないという考えは、ヨーロッパならではのものだろう。

ポルトガルの首都、リスボンを訪れた時はその考えに深く感銘したものだ。陶器が壁一面に貼られた建物や、そこから馬車が出てきそうな門構えの建屋などは、今まで訪問した他の都市には見られないものだった。歴史の教科書に出てくる「大航海時代」、そんな太古の昔にタイムスリップしたような光景が目の前に広がっていた。

▲タイルを貼り付けた建物が目立つのはポルトガルの特徴だ。

しかも道路は狭くほとんどが坂道で、街歩きをしようと思うと建物が迷路のように入り組んでいる。携帯電話屋を探そうとグーグルマップを頼りに歩いていても、1本道がずれていると坂道を登りなおさなくてはならないなど一苦労してしまう。そんな狭い坂道を一両編成の小さな路面電車がブレーキ音をきしませながら下っていく。

リスボンを訪問したのは2月。夜6時を過ぎると暗くなり、気温も10度を切り肌寒くなってきた。これは早めにホテルに戻ってベッドの中にもぐりこみたくなる。しかしなかなか携帯電話屋を探せなかった自分は、このまま宿に戻るつもりは無かった。なぜならリスボンには、夜中までやっているショッピングセンターがあるからだ。

深夜の店に彼女と二人 甘い香りで恋に落ちた

コロンボショッピングセンターはポルトガル最大規模を誇り、深夜24時まで営業している。携帯電話やキャリアの店があるのでスマホを買うこともできる。自分は夜22時すぎに訪れたが客の数は多く、まるでアジアの歓楽街に来たような感さえ覚えた。

わくわくしながら中に入り、何か1台スマホを買おうと関連の店を片っ端から回ってみた。残念ながら掘り出し物は見つからなかったが、夜遅くに携帯電話屋巡りをできるだけでも楽しかった。気が付けば閉店時間まであと30分、ファーストフード店で一服してからホテルに帰ることにした。

何を注文しようかとカウンター上のメニューを見ようとしたところ、自分のすぐ横を甘い香りが駆け抜けていった。その方向を見ると、黒髪の女性がテイクアウトした小袋を持って店を後にしていくではないか。しかも彼女の来ているシャツには携帯電話メーカーのロゴが描かれている!

気が付けば自分は無意識のまま彼女の後を追っていた。そして彼女は家電量販店の中に入るやフロアに立ち接客を始めた。メーカーのプロモーターなのだろう。年齢は30代前半だろうか? 閉店時間前のためかやや疲れの見える表情だったが、そのそぶりを見せまいと満面の笑みを作りながら、来客を待っている姿にキュンとしてしまった。

意を決して彼女に近づくと、アジア人が珍しいのか英語でハローと大きい声で話しかけてきた。ふと周りを見ると家電店内に他に客はおらず、彼女と二人っきりでいるような状況だ。

「リスボンに1カ月いるのでスマホを買いたい」とウソをつきアドバイスを求めると「仕事? 食事はどうするの? 観光にもいくの?」など接客とは関係ないことを次々と聞いてくる。もちろん単に珍客であるアジア人の話が聞きたいだけだろう。しかし自分の返事に大きいジェスチャーで応える姿を見ると、自分に興味を持っているかのように思えてしまう。さらに閉店時間を気にしてか時計をちらちらと見ているのだが、それは「このあとどこかに行きませんか?」と誘っている仕草に思えてしまうのだ。

このまま永遠に雑談を続けたかったが、24時になると彼女は「また明日来てね」というと足早に従業員出口へと向かっていった。しかし途中で足を止めてこちらに振り返り、手を振ってくれたのだ。その場には残り香だけがほのかに漂っており、まだそこに彼女がいるかのようだった。このまま目を閉じていれば自分の恋心に火が付いたかもしれない。だが、やってきた警備員の「もう閉店だよ」という言葉で現実に戻された。リスボンの夜は30分間だけの甘い思い出を残してくれたのである。

▲ファーストフード店でポルトガルっぽい料理を堪能。

▲フライト時間を変えて彼女にもう一度会いに行くべきだっただろうか。

文/山根康宏

やまねやすひろ/香港在住の携帯電話研究家・ジャーナリスト。世界の携帯電話事情を追い求め、1年の約半分を海外で過ごす。携帯電話1500台、SIMカード500枚以上を所有するコレクターでもある。

※『デジモノステーション』2017年8月号より抜粋

光の街、リスボンを歩く (KanKanTrip15)

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