川端由美の「CYBER CARPEDIA」

ドイツの巨大部品メーカー・コンチネンタルのテックショーでクルマの未来をイッキ乗り!

川端由美の「CYBER CARPEDIA」

進化はネクストフェーズへと移った。これからは走りではなく、電脳化こそが自動車の未来を決める鍵となる。2020年の“自動車の常識”をモータージャーナリストの川端由美が現場から解説する。

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THIS MONTH’S CYBER CARPEDIA CONTINENTAL

1871年創業の老舗タイヤ・メーカーであるコンチネンタルは、今では世界第2位の巨大部品メーカーへと成長した。ドイツ北部にある“世界一混んでいる自動車テストコース”として知られる同社のテストコース「コンチドローム」にて、モビリティの未来をイッキ乗りしてきた。

世界で一番、予約が困難!? コンチドロームでイッキ乗り

クルマとタイヤは切っても切れない関係である。いや、クルマというより、自転車やバイクやモノレールといったモビリティ全体を支えていると言っても過言ではない。そもそも“モビリティ”とは動きやすさであり、人が社会活動のために空間移動することである。つまり、人々が移動すればするほど、たくさんタイヤを使うから、タイヤ・メーカーにとってモビリティの未来を考えることは非常に重要なのだ。

コンチネンタルがモビリティに向かって動き出したのは、1990年代後半のことだ。丸くて黒いタイヤを作る会社から、“インテリジェントな企業になる”と宣言した。当時はまだ、記者発表に参加したメディアですら、真っ黒な丸いタイヤがどうインテリ化のするのか? 首を傾げるばかりだった。

しかし、20年を経た今になって振り返ると、ようやくその真意が理解できるようになった。電気系やセンサー類といった自動車用ハイテク部品を開発することに加えて、リチウムイオン電池やEV用電気モーターまで手を広げ、なんと2012年からは公道での自動運転の実証試験までスタートしたのだ。これを“インテリジェントな企業”と言わずして、なんと言うべきか。

▲BMWとインテルとモービルアイですでに結んでいた提携に、コンチネンタルが車載インテグレーターとして参加すると発表された。また、中国のインターネットサービス企業「百度」とは、自動運転で手を組むべく戦略的提携を行う。

その実力を試すべく、ドイツにある本社へと向かった。目的地は、世界で最も混雑しているともっぱらの噂の有名なテストコース、「コンチドローム」である。世界中の自動車メーカーが、まだ開発段階のクルマを持ち込んで、タイヤのテストはもちろん、最新のテクノロジーを搭載して、試験走行しているからだ。そんな混雑したスケジュールの中、メディア向けにコースを解放する。それが、今回開催された「テックショー2017」なのだ。最新テクノロジーを積んだテスト車が、ずらりと並んで待ち構えていた。

▲エルマー・デゲンハート/コンチネンタル取締役会会長 1959年生まれ。シュトゥットガルト大学にて航空宇宙工学を学んだ後、機械工学にて博士号を取得。フラウンホーファー研究所などを経て、1998年にコンチネンタルに入社。その後、ボッシュ・シャシー・システム部門社長、レカロ・グループCEO、シェフラー・グループ社長を歴任し、2009年から現職。

 

一歩進んだ自動運転に備えたクルマと人の関係の構築

まずは、最大の目玉である自動運転から試してみよう。“クルージング・ショーファー”と名付けられたテスト車には、「レベル2」にあたる自動運転の機能が搭載されている。これは既にテスラ「モデルS」やメルセデス・ベンツ「Eクラス」に搭載されているのと同様、車線変更を自動で行うことができる。加えて、自動運転時のリスクを減らす機能が盛り込まれている……と言われても、イマイチぴんとこないだろう。平たく言うと、高速道路で運転をクルマに任せている時、なんらかのエラーが発生したり、高速道路の終点といったことに遭遇すると、操作を人間に戻さなければならなくなる。その時、クルマがドライバーの注意を喚起して、スムーズに操作をハンドオーバーすることが重要だ。

実際にテストしてみると、その効果は絶大だ。フロントガラスに備わるカメラを使って、「高速道路の終わり」という標識を検知すると、ダッシュボードとフロントガラスの間がブルーに光って警告を発する。あくまで“テスト”なので、あえて警告を無視し続けると、今度は警告音と共に赤く点滅して、盛大に警告をする。これで気づかないドライバーがいるはずもない。だからこそ、それでも無視し続けると、ドライバーが緊急状態にあると判断して、自動で速度を下げて路肩にクルマを寄せて止める。いわゆる“デッドマン・コントロール”と呼ばれる機能だ。日本同様、高齢化の進むドイツでは、最近、運転中に心臓発作でドライバーが倒れて、クルマが暴走するという事故が多発している。ドイツのアウトバーンは、オーバー200km/hで突っ走ることも普通なので、ドライバーが意識をなくしてしまうと、深刻な事故に繋がってしまう。

▲「レベル2」の自動運転機能を搭載したテスト車。フロント・カメラで標識などの周辺環境を検知し、高速道路の終わりなどでは自動運転からドライバーへのハンドオーバーを促す。

もうひとつ面白かったのが、ドライバーの状況を把握する“ドライバー・アナライザー”という機能だ。現在、市販されている「レベル2」の自動運転では、事故を起こした際の責任はドライバーにあるが、次の「レベル3」になると、クルマの責任となる。運転中にハンドルから手を離してよくなれば、よそ見もしがち。いざ、クルマがお手上げの状況でドライバーに運転を戻そうとしたとき、ドライバーがあらぬ方向を向いているようなら、早めに警告をしなければならない。

※「レベル3」は条件付自動運転のこと。限定的な環境下、例えば高速道路上などで、システムが加速・操舵・制動を行う。通常時はドライバーは運転から解放されるが、緊急時やシステムが扱いきれない状況下には、システムからの運転操作切り替え要請にドライバーは適切に応じる必要がある。事故時の責任はクルマが負うとされている。

▲顔のパーツの位置に加えて、視線の行き先を見ることでドライバーが脇見や居眠りをしていないか分析。ナビ画面を触るなどの視線が大きく移動すると、警告を行う。

▲非接触で充電できる“オートメーテッド・ワイヤレス・チャージング”が搭載されたルノー「ゾエ」。電磁誘導で充電ができる。

▲駐車位置を学ぶ“トレインド・パーキング”は、遠隔で最適な自動駐車ができる。車両幅プラス数十センチといった車庫でも各種カメラや超音波センサーで360°を検知する。

 

誰もがワクワクして楽しい。便利で楽しい移動のあり方

コネクティビティの進化にも目を見張るものがある。すでに2017年に発売される新車のうち、約50%が繋がっているという。2020年にはほぼすべての新車が繋がり、公道を走るクルマの約20%が繋がると予測されている。

驚くことに、コンチネンタルはバックエンドクラウドまで連携して、適した時に、適した人に、適した情報を配信する方針を打ち立てた。それって、AmazonやGoogleがやっていることのクルマ版である。それが、“eHorizon”というコンセプトであり、リアルタイム・デジタルマップのHEREが提供するロケーションクラウドとIBMのクラウドと接続して、天気、事故、渋滞などのリアルタイムで起こっている出来事を把握したうえで、ルート選択や走行の制御する。……と書くと複雑だが、実際のテスト車で試すと、むしろ、高度な情報を誰もが気軽に使えるように洗練されたシステムだ。特に、混雑する町中のようなシーンで自動運転をする際に、より自動運転の精度を高めることにつながる。

▲カメラなどの情報を集め、クラウド上に蓄積して、ウェブでインタラクティブに配信する「eHolizon」では、カメラで白線や標識を認識し、そのデータをクラウド上でインフラ情報として統合されて、配信される。

居並ぶテスト車の中で異彩を放つのが、「eHorizon.Weather」の機能を積んだ“Holistic Connectivity”のテスト車シトロエン「カクタス」だ。ドイツ企業でなぜフランス車か?というと、フランス気象局と共同で実証試験を行っているから。走行中のクルマから車載データを集めて、ゲリラ豪雨や霧といった局所的な天気予報をして、情報を提供する。もちろん、自動運転が苦手な霧のような悪天候を避ける走行ルートの提案などにも役立つ。

▲フランス気象局と共同で実証試験を行っている「eHorizon.Weather」。ワイパーの稼働やカメラなど、クルマから得られるプローブ情報によって、ゲリラ豪雨のような局所的な天気予報を行う。

大型タッチパネルとボイスコマントで、スマホ風に操作できる。好みの音楽のリコメンドはもちろん、車載ディスプレイとドアフォンが連携して、遠隔で玄関のロックを解除できる。ガソリンスタンドのクーポンまで表示する。

▲共鳴によって音が発生するところを見つけ出し、それを音響システムに応用するというユニークな発想で開発されたスピーカレス・オーディオ。シートなどが音と振動を発する。

さらに、つながっていないクルマを繋げるデバイスもあって、アメリカのレンタカー「ハーツ」と共同で試験中だ。スマホでのキーレスの貸し出しが可能で、走行ルート情報やデジタル領収書による出張精算までサポートする。

▲「ハーツ」はノキア、SAP、デルといったIT企業やスタートアップが手を組んで、コネクテッド・カー・デバイスを後付けしての実証試験を行う。

タイヤ・メーカーからメガサプライヤーに成長を遂げたコンチネンタルだが、自動運転、コネクテッドといった分野を支えつつ、次世代のモビリティを支えるサービス・プロバイダへと変貌しようとしている。クルマだけではなく、他の移動手段ともシームレスにつながり、ストレスない移動ができる未来を想像すると、移動はまだまだ楽しいものになりそうだ。

文/川端由美

川端由美(かわばたゆみ):環境ジャーナリスト。自動車の環境問題と新技術を中心に執筆するほか、海外の展示会取材も積極的に行なう。

『デジモノステーション』2017年10月号より抜粋

A14 地球の歩き方 ドイツ 2017~2018

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プジョー『3008』とシトロエン新型『C3』に、フランス自動車メーカーの底力を見た!

川端由美の「CYBER CARPEDIA」

進化はネクストフェーズへと移った。これからは走りではなく、電脳化こそが自動車の未来を決める鍵となる。2020年の“自動車の常識”をモータージャーナリストの川端由美が現場から解説する。

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THIS MONTH’S CYBER CARPEDIA Peugeot 3008

この春、日本上陸を果たしたプジョー『3008』は、プジョー・シトロエン・グループの新世代を担うSUVだ。最新のプラットフォーム「EMP2」を採用し、最新のアクティブ・セーフティ機構を搭載。デザインやヒューマン・マシン・インターフェイス「i-cockpit」も一新した。

個性を放つフランスのテクノロジー

フランスのテクノロジーをナメてはいけない。近頃、そう痛感することが多い。例えば、アメリカに次ぐ世界2位のゲーム大国であり、アングレーム国立ビデオゲーム・双方向メディア学校やゴブラン映像専門学校といったコンピューターゲームを専攻できる教育機関もある。

DJIの一人勝ちの様相を呈していたドローン業界に、物をつかめるミニ・ドローンを発表して一石を投じたパロットのように、個性的な発想を持つスタートアップも登場している。また、パリの駅構内に「ステーションF」のようなスタートアップ支援キャンパスがオープンするなど、話題に事欠かない。

そんなフランスにおいて、200年を越える歴史を刻む自動車メーカーがPSAプジョー・シトロエン・グループだ。15世紀にはすでに存在していたプジョー家は、製粉業をなりわいとして成長した後、織物業に転じ、独自の手段で工業化に取り組んだ。さらに、1810年に「プジョー兄弟とジャック・マイヤール・サラン」が設立されると、製粉業から製鋼所へと変貌し、さらなる工業化へと歩を進めた。

今日でも支持されているプジョーのコーヒーミルは、19世紀に生産をスタートし、今でも連綿と作り続けられている製品である。現在まで続くプジョーのトレードマークであるライオンも、この頃から一貫して使われている。

▲フランスの家庭には、必ずあると言われるほど普及しているプジョーのコーヒーミル。1840年に初のRモデルが登場して以降、機構面では大きな変化なく、連綿と生産され続けている。

プジョーの名を冠した自動車が開発されたのは、1889年のことだ。エンジンはなんと(!)蒸気機関であった。翌年には、エンジンを積んだ自動車の発明者として知られるダイムラー製エンジンを積んだ、ガソリン車第一号『Type 2』を開発している。

商用車の製造にも進出し、蓄音機用のスプリングといった時代に沿った部品も生産し、第一次大戦の頃には、自転車6万3000台、オートバイ1000台、自動車3000台、トラック6000台に加えて、飛行機用エンジンを1000基、戦車用エンジンを1400基も製造する規模へと成長していた。第一次大戦後の好景気もあって、年産2万台を越える規模へと、急速に成長する。プジョー伝統の『0』が付く車名として、『201』が生まれたのも、この頃だ。

▲プジョーの伝統である、真ん中に『0』が入る車名は、経済危機に世界が苦しんだ時代となる1931年に登場した『201』から始まった。前輪独立懸架式のサスペンションを採用し、当時としてはモダーンな構成だった。

第2次大戦の終焉は、ヨーロッパに明るさをもたらすと共に、景気に影を投げかけた。が、’70年代には、プジョーはシトロエンを傘下に収め、今日につながる礎を構築したのだ。

▲1912年に発表された『べべ』は、オープン2シーターにコンパクトなエンジンを積んだミニマムな設計だ。自動車エンジニアとして鬼才を放つ、エットーレ・ブガッティの手になることも、話題のひとつだ。

 

クールなデザインとホットなプロダクト

自動車というより、フランスの工業史を垣間見るかのようなプジョー・シトロエン・グループの歴史だが、近年のダイナミックな産業の変化に個性的な動きが再び、加速している。

元々、コーヒーミルや胡椒挽きから、自転車やバイクといった2輪部門、そして自動車までと、プロダクト・ポートフォリオが広い。さらに、プジョー・デザイン・ラボなる工業デザインを手がけるチームの存在もユニークだ。最近では、レッド・ドット・デザイン賞を獲得した『eキック』は、マイクロ社と共に手がけた電動キックスケーターである。リチウムイオン電池を採用し、25km/hまで加速ができる。ブレーキをかけると、ハイブリッド車のようにエネルギーを回生する。キックの強さによって、アシスト量を調整するなど、メカニズムも超クールだ。

▲人気のキック・スケーター・メーカーであるマイクロと共同で開発した電動キックスケーター『e-kick』。エネルギー回生を行うだけでなく、キックする力からライダーがどれだけ加速したいかを察して、アシスト量を調整。

エアバスのヘリコプター部門が手がける中型ヘリ『H160』のデザインもまた、プジョー・デザイン・ラボの手になる。『5008』のカーゴスペースにちょうど収まる折りたたみ式電動アシスト自転車『eF01』も、クルマより自転車の歴史が長い企業らしい発想だ。

▲エアバス・ヘリコプターズの中核を担う、高速かつ長航続距離の中型機『ドーファン』の後継機『H160』のデザインを担当したのもプジョー・デザイン・ラボ。機種名は時速160kmで巡航可能なことに由来。

今年、日本に上陸を果たしたばかりの『3008』では、そんなプジョーの前衛的な姿勢が垣間見れる。デザインがカッコいい!と飛びつく前に、このクルマの基盤となるプラットフォームである「EMP2」に注目したい。フォルクスワーゲンの「MQB」、トヨタの「TNGA」といったモジュール化されたプラットフォームが最近の流行だが、この「EMP2」はさらに進化したモジュールだ。

ハッチバック、セダン、クーペ、カブリオレ、ワゴン、ミニバン、SUV…と、どんなボディにも対応できるマルチプレヤーである。ハイテン鋼はもちろん、アルミや複合材などの軽量素材を活用し、70kgものダイエットに成功している。アイドリングストップ機構や電動パワステといった電化を進め、低転がり抵抗タイヤを装着するなどにより、CO2排出量を22%も削減できる。加えて、ヨーロッパの最新の排ガス規制に対応する。

▲1800年代後半まで遡る自転車の歴史があり、現在も複数の電動アシスト自転車を発売。最新作『eF01 e-Bike』は約30kmまで航続が可能で、10秒程度で折りたためる。

最初にプラットフォームの話をしたのには理由がある。エンジンを低い位置に搭載できるため、ボンネットが低く、精悍なスタイリングができる。同時に、重心を低くできるため、プジョー一族に共通する美点である“キビキビとした走り”は失われない。

 

ドライブ体験をシェアする車載“デジモノ”

もう一方のシトロエン・ブランドからも、魅力的な一台が日本の土を踏んだ。世界中のシトロエンの新車のうち、3台に1台、日本ではなんと(!)5台に1台が『C3』というほど、売れ筋のモデルだ。第一印象は、かなりの個性派。ボディとルーフの色が異なる組み合わせが選べるのは、従来の『C3』から続くユニークなところだ。フロントウインドーがぐっとルーフまで入り込んでいて、室内に乗り込むと、自然光が指して明るい。

▲初代「C3」は、累計で350万台を販売したシトロエンの基幹モデル。新型「C4カクタス」の個性的なデザインを取り入れつつ、初代同様にブラックアウトしたAのピラーなどにより、フールが浮かび上がって見える個性派の外観を持つ。

見た目からして、“超”がつくユニークさだ。LEDランプが並ぶシャープな目つきとコロンと丸いフォルムが、コントラストしていて、どことなく愛嬌がある。ボディサイドにある“エアバンパー”は、その名の通り、空気の層で衝撃を吸収するバンパーなのだ。紫外線や雨などの気候による劣化を抑える特殊な強化ポリウレタン製の6つのカプセルに空気が閉じ込められていて、ちょっとした衝撃なら吸収してくれる。

▲「C4」カクタスから採用されたエアバンパーは、「C3」ではよりキュートで洗練されたデザインに。6つのエアが入ったカプセルのうち、先頭だけ赤いアクセントがほどこされている。

デジモノ好きにたまらないのが、ルームミラーに備わるオンボードカメラ「コネクテッドカム」である。クルマの前から見える景色が写真やムービーで撮影できて、スマホ経由でシェアできる。なんてクール!!!

▲シトロエン・コネクテッドカムは、フロントガラスに搭載されたオンボードHDカメラで、ドライブ中にフロントウィンドーから見えるものをとらえて、写真やビデオでシェア。

タッチスクリーンでサクサク操作ができる「i-Cockpit」も、日本市場向けに最適化されて投入されている。大きなスマホ風に直感で使えるのが、イマドキな雰囲気だ。楕円形のハンドルの上から、その向こうにある横長のディスプレイが見える。ここには運転に必要な情報を集めて表示し、センターパネルにある大型ディスプレイにはインフォテインメントやナビが、未来的なグラフィックで表示される。

▲「i-cockpit」は楕円型の小径ステアリングホイールを採用し、その向こう側に見えるメーターパネルと中央のタッチスクリーンで、車載インフォメーションをオーガナイズして表示する。

こんな風に、同じ企業の傘下にあって、プラットフォームやデジタルデバイスを共有して、高効率化をはかると同時に、スタイリングの表現や乗っていて楽しいと思わせるポイントは、プジョーはプジョー、シトロエンはシトロエンと独立独歩なのが、このグループの特徴である。

創業から200年以上を重ねた歴史があるにもかかわらず、その上にあぐらをかくことを知らない。むしろ、常に前衛的に、時代の最先端に立つ姿勢を見せてくれる。それがフランスの自動車メーカーの底力であり、個性的な部分でもある。

文/川端由美

かわばたゆみ/自動車評論家 環境ジャーナリスト。自動車の環境問題と新技術を中心に執筆するほか、海外の展示会取材も積極的に行なう。

※『デジモノステーション』2017年9月号より抜粋

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GPUからAIコンピューティングへ。自動運転のプラットフォーマーを狙う企業NVIDIAとは?

川端由美の「CYBER CARPEDIA」

進化はネクストフェーズへと移った。これからは走りではなく、電脳化こそが自動車の未来を決める鍵となる。2020年の“自動車の常識”をモータージャーナリストの川端由美が現場から解説する。

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THIS MONTH’S CYBER CARPEDIA NVIDIA

NVIDIAと聞くと、GeForceに代表されるゲーム用グラフィックボードを思い浮かべる人が多いだろう。ところが近年、AIコンピューティング企業へと変貌を遂げ、“AI銘柄”の筆頭に上げられるまでに成長した。そして、自動運転の分野でもキープレイヤーとなっている。

自動運転に欠かせない“謎の半導体メーカー”

先日、日本を代表する経済雑誌のウェブサイトに“謎の半導体メーカー”というタイトルが踊ったことで、一躍話題になった「NVIDIA」だが、実はゲーム用グラフィックボードのメーカーとしては、知る人ぞ知る存在だ。ところが今回、トヨタ自動車との提携を発表して話題を振りまいた。

▲すでにボルボやアウディと自動運転で手を組んでいる。今回は、トヨタとの提携を発表。自動運転用に開発された『Xavier』は、消費電力を低めることで、車載を可能にした。

なぜ、世界有数の自動車メーカーがゲーミング企業と提携したのだろうか? 実のところ、NVIDIAは近年、自動運転に代表されるAI開発を推進するプラットフォームを構築し、“AIコンピューティング”企業へと変貌していたのだ。

▲アウディとは、最も初期から、自動運転の開発で手を組んでいる。2011年のCESで発表した自動運転のシステムと比べると、大幅に小型化されている。

もちろん、多くの人にとって、いまだにNVIDIAは“謎の半導体メーカー”には違いない。そもそも、1993年の創業時には、セガの『バーチャファイター』を動かせるゲーム用グラフィックボードを設計するという、かなりマイナー路線を採っていた。その後、プレイステーションやXboxに搭載されるGPUのメーカーとして成長をしてはいた。そう、創業者のジェン スン ファン氏がスゴいのは、ボードそのものは単なる箱であり、その上で“何が動くか”を常に重視している点にある。創業時は流行のゲームソフトが、今はAIが、NVIDIAのボードの上に実装されて、新たな世界を生み出しているのだ。

同社がゲーミング企業からAIコンピューティング企業へと変貌を遂げるきっかけとなったのは、2012年にGoogleが発表した猫の画像を認識する技術、いわゆる“ディープラーニング”である。この時、GoogleはCPUを2000個も使ってニューラルネットワークを構成したのだが、スタンフォード大のチームがNVIDIA製GPUを使って同じ計算をすると、わずか12個で実現できるという研究結果を発表した。つまり、GPUを使えば、AIの研究開発に大きなコンピューターが必要ないわけで、AI研究の間口を広げたことになる。

もちろん、“AIブーム”だという人もいる。確かに、1947年にアラン・チューリングが人工知能の概念を提唱したのち、’50年代に第一次、’80年代に第二次のAIブームが起こったが、その都度、技術的な課題が常に水を指してきた。

 

自動運転の分野でも、プラットフォーマーを狙う

現在は、AI第三次ブームだが、大きな技術的課題を乗り越えたことにより、一過性のブームでは終わらない状況に進みつつあると断言できるだろう。なぜなら、例外に対処できるようになり、フレーム問題を乗り越えた。ウェブ上にあるビッグデータを活用したディープラーニングの研究が進んだことにより、“特徴から概念を取り出す”ことができるようになり、シンボルクラウンディング問題(※1)が解決されたからだ。

さらに、GPUの活用でAI開発に大型コンピューターが不要となり、AI開発に拍車がかかった。実際、NVIDIA製『Jetson』というAIを積むハードウェアは、アマゾンで6万4000円で“ポチ”れる。さらに、開発言語も無償で提供されており、AIを成長させるために最適なクラウド・センターまでNVIDIAが提供しているのだ。

AIがそれほど簡単に開発できるとは! という驚きを胸に、NVIDIAの開発者向けイベント「GTC(=GPU Technology Conference)に足を運んだ。その内容は、“AI革命”と呼べるものだった。

今回の最大の話題は、高性能GPU『Volta』が新開発されたことに加えて、AI開発に最適化されたクラウド・センターを発表したことだ。これはつまり、「AIの開発速度を劇的に加速し、かつ開発の敷居を大幅に下げた」ことを意味している。

▲GTCでは、NVIDIAのAI技術を搭載したポリスカーが登場。巡回中に長時間停車しているクルマを検知するなど、人間のお巡りさんと連携することで、より効果的な警らを行う。

前置きがいささか長くなったが、NVIDAのこうしたAI開発は、そのまま自動運転の開発に生かされていくことにもなる。昨年、発表されて話題になった自動運転向けAI実装ボード『Xavier』と、それに組み込まれている「DLA(=ディープラーニング・アクセラレータ) 」のオープンソース化を進めていると発表したからだ。

……と聞いても、なにがスゴいんだよ! とツッコミが入りそうだが、平たく言えば、「自動運転を開発するにあたって、様々な投資を軽減し、誰もが気軽に開発できるようにする」ということだ。いくらなんでも、世界有数の設計チームが生み出した推論TPU(※2)を“無料”で提供するなんてことを、誰が考えつくだろうか? 当然、誰もが大きな投資なしにAIや自動運転の研究が可能になり、その分野の研究開発が加速するワケだ。もはや、NVIDIAは自動運転の開発におけるプラットフォーマーと呼べる存在となったのだ。

▲『Xavier DLA』をオープンソース化することにより、誰もが投資なしに自動運転の開発をできるようにした。

※1 シンボルグラウンディング問題とは、コンピュータによる記号システム内で、シンボルがどのようにして実世界の意味と結びつけられるかという問題。記号接地問題とも言う。 ※2 TPUとはディープラーニング(深層学習)専用プロセッサ『Tensor Processing Unit』。

 

自動運転での通勤が前提 NVIDIA新キャンパス

もちろん、ただの社屋ではなかった。昨年のGTCで発表された3Dレンダリングの技術を使っており、建設がスタートする一年前の段階で、すでにVRで社屋内見学ができたのも驚きだったが、とうとう今年、建設中の本社社屋、“新キャンパス”の見学がかなった――。

現在の本社社屋とは、道を挟んだエリアに建設されていた。コンセプトは、“ポリゴン(=多角形)”である。ヘルメットとグラスとベストを手渡されて、建設中の新キャンパス内に足を踏み入れる。社屋全体は六角形をしており、3カ所のエントランスがある。三角形のポリゴンが凸凹して連なる外観は、まるで処理中の3Dグラフィックのようで、NVIDIAらしい。

▲新キャンパスの建築を担当するジョン・オブライアン氏。VR活用による3Dレンダリングの推進にも熱心だ。

天井にある三角形の窓やガラス張りの側面から、自然光が入る気持ちのいい室内空間だ。あらかじめ日照時間などを考慮したシミュレーションをしており、日中はほぼ自然光の光で照明を賄うことができるという。また、熱反射ガラスで覆うことに加えて、床暖房を備えており、室内の温度調整のために、エアコンが唸り声を立てるようなことはない。実際、音には非常に配慮された設計になっており、上階にあるワーキングスペースは、多少のざわつきを前提にしたパントリー、電話もおしゃべりも禁止の図書館エリア、その中間にあたるハングアウトしやすい程度にざわついた空間に、自然に分かれるように設計されている。

▲室内にもポリゴンが多用される。一階は、プレゼンテーションルームになっており、用途ごとに広さやメディアを使い分けることができる。

▲天井にはポリゴン型の明かり採り窓が開いており、天然光が降り注ぐ。

創業者のジェン スン ファン氏の席はどこか? と尋ねると、彼はいつでも会社にいるし、どこでも彼の席だよ、とのこと。冗談半分ではあるだろうが、創業社長として、現在もNVIDIAを牽引するジェン スン ファン氏が、会社のどこにでもいるというのは、半分は本気だろう。

現在の社屋に加えて、新キャンパスには、2500人ほどが勤務する予定だ。公共交通が乏しいシリコンバレーの通勤では、それだけの人がクルマで通うことになる。新キャンパスでは、自動運転のクルマが一般的になる前提で設計されており、社員がクルマを降りた後、クルマが自動で駐車することを想定した乗降エリアも設計している。自動運転の開発を牽引するNVIDIAらしい発想だ。

▲建設中の新キャンパス。外装には、熱を遮断するパネルが採用されている。

文/川端由美

かわばたゆみ/環境ジャーナリスト。自動車の環境問題と新技術を中心に執筆するほか、海外の展示会取材も積極的に行なう。

※『デジモノステーション』2017年8月号より抜粋

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