怖 78巻

肝試しをしたの翌日に

 

僕が高校生の頃の話です。

 

ある晩、先輩たちと6名で飲み会をしていると、肝試しをすることになり、某トンネルへ行くことになりました。

 

そこは山の中腹にあり、近くには廃屋があって、すぐ隣に軽自動車が一台通れるぐらいの真っ暗な気味の悪いトンネルです。

 

話を聞くと、その廃屋では一家惨殺があり、その中のお婆さんが隣のトンネルに逃げたところ、犯人に追い詰められ殺されて、気が狂った犯人もその場で自殺したという。

真っ黒い波を打った何かが・・・

酒も入り、初めての肝試しということで、僕はワクワクしていました。

 

車に乗り込んで1時間ほど走り、現場近くに車を停め、5分ほど歩くと到着しました。

 

そこは、想像以上に気味の悪い場所でした。

 

廃屋は昔ながらの一軒家で、縁側から中が一望でき、家の中は布団や家具が散乱していました。

 

あまりの不気味さに、トンネルだけ入って帰ろうということになりました。

 

トンネルに入ると、夏なのに涼しく、足元はドロドロで、何とも言えない空気が漂っていたのですが、皆無事に出てくることが出来ました。

 

トンネルを出た僕たちは帰ることになったのですが、なんとなく廃屋を眺めていると3名が先に車に戻ってしまい、気付いたら僕を含めた3人だけになっていました。

 

「先に行っちゃったね。俺らも帰るか」

 

・・・なんて言っていたその時でした。

 

山の上の方から「キャー!!」という女性の声が聞えたのです。

 

「聞こえた?」

 

「聞こえたよ。早く帰ろう」

 

3人とも、その声を聞いていました。

 

怖くなった僕たちは急いで車に戻りました。

 

帰りの車の中では、怖かった半面、話題が出来たと思い、僕は少し上機嫌でした。

 

次の日。

 

夜、母と二人で食事をしていた時にその話をしました。

 

「昨日さ、先輩たちと肝試しに行ったんだ」

 

僕は母に事細かく話しました。

 

すると、僕は段々と寒くなってくるのを感じました。

 

頃は真夏です。

 

クーラーをつけていましたが、涼しい程度です。

 

話が進むにつれ、僕はどんどん寒くなっていき、話が終盤に近付くと歯をガチガチしながら話していました。

 

「なんだこれは?!」と思いながら話を進め、震えながらやっとの思いで話し終えました。

 

話が終わると、今度は母が徐々に俯き始めました。

 

様子がおかしいと思っていると、母が弱っていくにつれ、僕の震えが少しづつ治まってきました。

 

僕の震えが止まり、母が完全にダウンすると、「今あんたから真っ黒い波を打った何かが私に入ってきた。これは私が何とかする。だからあんたはもうそんな所に行っちゃだめだよ」と母。

 

何がなんだか分かりませんでした。

 

今、母は元気です。

 

僕はそれ以来、肝試しへは行っていません。

 

(終)

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衝撃の結末を迎えたストーカー事件

 

日本でも、ストーカー事件は急増している。

 

そんな中で、衝撃の結末を迎えたストーカー事件を紹介しよう。

 

この事件を担当した、(株)ジャパン・プライベート・サービスの樋渡氏に話を聞いた。

 

1998年1月、都内に住む山本さん(仮名)が会社から帰宅すると、彼のアパートの部屋の前に一人の女性が立っていた。

 

彼女は山本さんが以前に少しだけ付き合ったことのある慶子(仮名)という女性で、半年前に山本さんから別れを切り出し、もう会うことはないはずだった。

 

ところが、慶子は山本さんを忘れることが出来ず、毎日のようにアパートを訪れるようになっていた。

 

あまりにしつこく毎日のように姿を見せる慶子を気味悪く思った山本さんは、樋渡さんの会社へ相談に訪れた。

 

最初は樋渡さんも、悪質なものではないだろうということで、「様子を見るように」と山本さんにアドバイスをしたという。

慶子の望んだ形とは・・・

ところが1ヵ月後、山本さんが家に戻ると部屋の前には慶子の姿がなかった。

 

安心してドアを開けて部屋に入った山本さんだったが、彼はそこで息を呑む。

 

慶子は部屋の中で待っていたのだった。

 

管理人にドアを開けてもらったという慶子に山本さんは、「俺にはもう彼女が出来たので、いい加減彼女面をするな!」と思わず怒鳴ってしまった。

 

すると慶子は突然立ち上がり、片手に持っていたカミソリをゆっくりと持ち上げ、何故か微笑みながら自分の手首に降ろした。

 

驚いた山本さんは慶子を病院に運び、一命を取り留めた慶子はそのまま入院することになった。

 

慶子のこの異常な行為が恐ろしくなった山本さんは、慶子が入院している間に東京での仕事を辞めて実家のある長野県に引っ越した。

 

ところが引っ越してから3ヵ月後、彼は想像を絶する恐怖に襲われることになる。

 

仕事から戻って家族のくつろぐ居間に行くと、なんとそこには慶子が楽しげに家族と話していたのだ。

 

驚きのあまり声の出ない山本さんに、母親は「あなたのお姉さんになるのよ」と言った。

 

慶子は立ち上がり、「はじめまして。慶子です。よろしくね、弘さん」と言った。

 

慶子は、山本さんの兄と結婚することになっていたのだ。

 

ストーカーが自分の兄と結婚するという、信じられないような結末。

 

慶子はその後、本当に結婚して子供までもうけたという。

 

これで2人は一生付き合い続けなけらばならないのだ。

 

これが、慶子の望んだ形だったのだろうか・・・。

 

(終)

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絶対に口外してはいけない過去

 

うちの父方の家は長崎のとある島にあって、議員さんも出た名のある家柄でした。

 

その家は、『絶対に口外してはいけない過去がある家』でした。

 

今は父方の家系にあたる人間は私しかおらず、私の父が家出同然で東京へ出てしまい家を継がなかった事と、父の死後、その家を取り潰してしまった為、今は断絶したことになります。

 

父は去年亡くなりました。

 

父方の親戚もいません。

 

だから今ここで書くのも、もはや問題ないと思います。

その島では今もきっとタブーでしょう

それを知ったのは高校1年の頃でした。

 

その家へ遊びに行った時に、爺様から教えてもらいました。

 

「この家は海外への人身売買を生業にしてきた」と。

 

正しくは、人身売買で引き取った子を海外に輸出する前に、ある程度の作法やら言葉を教育するという事を行っていました。

 

その稼業は室町以前から始まり、昭和初期まで続いていたそうです。

 

2002年に95歳で亡くなった爺様も、関わらないでもそれを実際に見ていた、ということになります。

 

まず、全国の農村の子を買って回る業者から子供を引き取ります。

 

爺様が言うには、当時で大体男子が50円、女子が20円程度だったと聞きます。

 

10円が今で言う1万円くらいだったらしいので、人ひとりの命が2万円や5万円程度だったことに驚きです。

 

末端価格でその値段ということは、実際にはその半額程度しか支払われていなかったことでしょう。

 

あまりに哀れですが、それほど困窮していたとも取れます。

 

連れて来られたその子たちは、うちの家で大切に扱われます。

 

綺麗な洋服を着て、美味しいものを食べ、遊んで暮らします。

 

そして、色々と教えていきます。

 

言葉、文字、作法、女子には料理。

 

ですが、全ては洋式の事ばかりです。

 

海外へ往っても困らないように養育したそうです。

 

さて、子供たちはどこに住んでいたのかと言うと、長崎の家は一見2階建てと気づかない2階部分がありました。

 

その2階には一切窓がありません。

 

外から見ても窓が無いので、2階があることさえ分かりません。

 

しかし、当時は煌(きら)びやかな壁紙や装飾が施された部屋がいくつもあり、その部屋に子供たちが引き取られるまでの一時期だけ暮らしていたそうです。

 

1階と2階を繋ぐ階段には、ちょっとした特徴がありました。

 

2階へ上がるのには階段から簡単に上れるのですが、降りる場合には1階から移動階段を渡してもらわないと降りれないようになっていたそうです。

 

つまり、逃げ出せないようになっていたのです。

 

ちなみに、私は爺様にその場所を教えてもらったのですが、移動階段も外されていて上ることが出来ないようになっていました。

 

また、家の中央付近には釣瓶(つるべ)のような仕掛けがあり、一種のエレベータのようなものが置かれていました。

 

※釣瓶

縄や竿の先に付けて井戸水をくみあげる桶。

 

片方の下は井戸になっており、石を繋いで落とすと、滑りの悪くしている滑車がゆっくりと片方に乗せられた盆を上げていく仕組みです。

 

あくまで料理や生活や教育に必要な道具を上げるだけで、人は乗れないモノだったそうです。

 

私が見た時は井戸が埋められていて、ロープも無く、上の暗い穴のところに滑車の車を外したモノがあるだけでした。

 

一番オカルトチックだったのは、発育の悪い子や貰い手が無いまま15歳を超えた女子を殺して捨てる井戸があったこと。

 

本当かどうかは分かりませんが、逃げ出そうとしたり、知能が遅れすぎて役に立たない子は、牢屋に入れて毒で殺した挙句、その井戸から落としたそうです。

 

貰い手が無かった男子は、そのまま近隣の島の人間の労働力として貰われていくことが多かったそうです。

 

私が行った頃には、すでに井戸は跡形も無くなって、庭の片隅に鳥居と鎮魂の為と思われる文字が刻まれた岩があっただけでした。

 

爺様は「幽霊なぞは見たことが無い」と言っていましたが、子を落としてからしばらくは、井戸から声が聞こえることがあったらしいです。

 

でも、この話を聞いてから、二度とその家へ行かないと決めたものです。

 

実際に取り壊しの時も、私は立ち会いませんでした。

 

父は祖父が死んだ時、一切合切の財産は、島で家を管理されていた人に任せることにしました。

 

きっと父も、その呪われた島に行きたくはなかったのではないでしょうか。

 

これらの事は、島では今もきっと禁忌だと思います。

 

(終)

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私の中にある「母を殺せ」という感情

 

子供の頃の記憶。

 

物心ついた時から、母が嫌いで嫌いで仕方なかった。

 

母は性格も良く、人に慕われ、親としても文句のない優しい人。

 

けれど、何故か母の声を聞くだけで怒りが湧き、中学になる頃には「殺したい」という感情で一杯の自分がいた。

 

そう思う原因は何もなく、ただただ心の内側から自然にそういう感情が湧き上がっていた。

 

私のやることなすことが母を追い詰め、悲しませ、意識しない行動でも最終的には母にダメージを与える結果になる。

 

そして、成人してから『見える人』に出会った時にこう言われた。

 

「○○さん、親元を離れた方がいいよ。お母さん嫌いでしょ?言い難いんだけど、今まで何度生まれ変わっても、○○さんはお母さんの子供として生まれているみたいなんだ。いつの時もお母さんの命を狙ってる。でも成就していない」

 

なんでも、母も私も男として生まれた時代は、常に戦争のある世の中で混乱期の国。

 

母が治める立場にいて、私はその座から母を引きずり落とし乗っ取ろうとするけれど、最後はその野望を利用され、他者に陥れられて母を殺せず自分が先に死ぬはめになっているらしい。

 

それを聞いた時、客観的に見て人間の出来た母を何故憎むのか、「殺せ」という感情が沸くのか、なんとなく納得できた気がした。

 

こんな感情はおかしいと思って、今は母から離れて穏やかに過ごしている。

 

世間で理不尽な殺人のニュースを聞く度に、もしかしたら生まれた時から持っている宿命的な感情というものがあって、それが原因で起こる事件があるのかも知れないと思った。

 

(終)

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風を呼ぶ事が出来る家系

 

うちの女系は『風』を呼べる。

 

自分でも胡散臭い話だと思うので、今まで一度も誰にも話したことはありません。

 

蒸し暑く空気の入れ替えをしたい時に、風を呼んだりする程度。

 

小さい頃はよく使えたが、今では全く何の力も無い。

 

と言うのも、この力は母から娘に伝わるものらしく、祖母はそれこそ自由自在と言った感じだったが、祖母の子は息子ばかり。

 

祖母の姉妹たちも女の子には恵まれなかった。

この力には黒い一面がある

祖母がこの話をしてくれた時は、おとぎ話のように聞き入ったものですが、その祖母も今年他界してしまいました。

 

祖母の「○○ちゃん(私)だけは幸せになって欲しい」という言葉が忘れられません。

 

風を呼ぶ力は昔からあったようで、祖母の家系は江戸や平安の頃から重宝されていたようです。

 

ただ、風が吹いたからといって、作物が実ったり富が築かれたりするわけではないので、崇められるようなことはなかったそうです。

 

また、力が強ければ強いほど美しく、時の権力者の側女として不自由のない暮らしをしていました。

 

祖母も若い頃の写真も晩年大変きれいな人で、気立ても優しく求婚者が絶えなかったそうです。

 

ただ、祖母には思い人がいて、全て断ってしまったそうです。

 

当時のことですから、恋愛結婚なんてとんでもなく、祖母の家は大地主だったからなおさら親には反対もされたのでしょうが、たぶん不憫に思われたのでしょう。

 

結婚は許されました。

 

・・・が、実はこの力には黒い一面があるのです。

 

祖母の家系は皆、不可解な亡くなり方をしていたそうです。

 

ある日から衰弱し始め、ひと月を待たずに元の面影を残さずやつれ果てて亡くなるのです。

 

祖母もそうでした。

 

祖母は町医者にかかっていたのにガンで亡くなりました。

 

臓器の外側にガンができ、通常の15倍もの速さで進行していき、なすすべもなかった・・・と医者も首を傾げていました。

 

こちらも死なせてやりたくなるほど苦しんでいました。

 

ただ、祖母は苦しいとか、そんなことは一言も言いませんでした。

 

あまりにも苦しそうな最後でした。

 

祖母は、「みんなそんな風に死んでいくんだ」ということも私に話していました。

 

だからその理由がガンだと言うことも、通常では信じられないくらい進行が早いということも、そんなことよりずっとずっと変わり果てた祖母の姿が私には恐ろしかった。

 

そして、祖母の葬儀の日はやってきた。

 

小春日和、気持ちいい風が不意に強く吹いて祖母の骨を舞上げた。

 

「あぁ、送っているんだ」と思いました。

 

よく分からないけれど、それは確信できました。

 

(終)

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現場作業に親しい仲間を誘わない訳

 

知り合いのNさんは、鋼材関係の専門の現場作業員だ。

 

会社勤めではないが色々と資格を持っている為、大手企業の下請けや手伝いをやっている。

 

人集めを任されることもあるが、そんな時は親しい仲間を誘うのは極力避けるようにしている。

 

ある時、Nさんにその訳を訊いてみた。

 

すると少し間を置いて、こんな話を聞かせてくれた。

真夜中に会いに来たのは・・・

昔、山間の村で、橋の架け替え工事の手伝いをした事があった。

 

親しい相方と二人、民宿に泊まり込みで現場に通っていた。

 

Nさん達の担当は、橋桁の上に掛かるアーチ部分の工事だった。

 

谷の両岸から緩いカーブを描く角筒状のパーツを繋げてゆき、最後はアーチの頂点で接合する。

 

その日は、相方と二人で最後のパーツ内部で作業をしていた。

 

Nさんは右岸側で接合部分のボルト締めを、相方は左岸側で溶接作業を。

 

すでに結合されたパーツの内部は暗く、背後から固定式のライトで手元を照らす。

 

その明かりが一瞬点滅した。

 

一旦手を休め、ライトの具合を確かめる。

 

ゴンッ!ガンッ!!

 

背後から大きな音と振動が。

 

反射的に振り返って唖然とした。

 

接合部から先、左岸側のパーツが無い。

 

一瞬前までそこにあった暗闇は消え、目と鼻の先にある四角い開口部からは、青い空と対岸の尾根がクッキリと見えた。

 

ドーン!ズズズズン!!

 

下の方から、腹の底に響くような物凄い音と揺れが伝わってきた。

 

思わず立ち上がりかけたが、腰が抜けて動けない。

 

が、何が起こったのかは半ば本能的に理解していた。

 

左岸側のアーチが落ちたのだ。

 

何が原因かは分からないが、こちら側は辛うじて残っているようだ。

 

Nさんはその縁ギリギリにいて助かった。

 

しかし、反対側に居た相方は・・・。

 

突然、涙が溢れてきた。

 

俯いたまま子供のように泣きじゃくる。

 

すると、足先に見慣れないものがあるのに気付いた。

 

曲がったボルトか、小エビの様にも見える。

 

体を前倒しにして顔を寄せてみる。

 

根元から切断された指が3本転がっていた。

 

その後、警察の聞き取りや労働基準監督署への報告などがあり、ようやく身柄を解放された頃には夜の9時を回っていた。

 

事故の原因は、左岸側で橋を支えていたアンカーが抜けてしまった事。

 

その為、橋の半分が谷底へ崩れ落ちてしまった。

 

相方の他にも作業員が数名、巻き添えになって死んだ。

 

瓦礫から亡骸を回収した作業員によると、相方の遺体は一見綺麗なものだったそうだ。

 

「まぁ中身はミンチだろうな」

 

騒然としている現場事務所で、JVの監督がそう呟くのを聞いた。

 

※JV

建設業における共同企業体。ジョイントベンチャー。

 

宿へ戻ってから、遅い夕食を食べた。

 

食欲は無かったが、明日以降のことを考えて黙々と食った。

 

いつもより酒の量を増やした。

 

そうでもしなければ眠れそうになかった。

 

銚子を3本持って二階の部屋に上がり、布団に潜り込んでチビチビ飲む。

 

四角く切り取られた青空、腹に響く轟音、足元に転がる指・・・。

 

思い出す度に全身に震えが走り、それを忘れようと杯を空ける。

 

そんな事を繰り返すうちに、ようやく眠りにつくことが出来た。

 

ペタリ・・・

 

唐突に目が醒めた。

 

辺りは真っ暗。

 

どうやら誰かが明かりを消してくれたようだ。

 

ペタリ・・・ペタリ・・・

 

部屋の外からスリッパの足音が聞こえる。

 

廊下を誰かが歩いているのだろう。

 

ペタリ・・・ペタリ・・・ペタリ・・・ペタリ・・・

 

足音は部屋の周囲をグルリと回って、なお続いている。

 

宿の人間だろうか?

 

ペタリ・・・ペタリ・・・ペタリ・・・ペタリ・・・

 

もう何周したのだろうか。

 

さすがに不審に思い始めた頃、ようやくおかしな事が起こっているのに気付いた。

 

この部屋を取り囲む廊下は”コの字型”だった。

 

一方の突き当たりは便所で、もう一方は布団部屋。

 

どちらも、Nさんが枕を向けている壁の延長線上にある。

 

壁の向こうは外で、地面までは数メートの高さ。

 

当然、廊下など無い。

 

なのに、足音は部屋の周囲をグルグルと回り続けている。

 

ペタリ・・・ペタリ・・・と、スリッパを引き摺るような足音。

 

・・・違う、スリッパではない。

 

もっと粘り気を感じさせる音。

 

滑り止めにアメゴムを底張りした地下足袋で歩くとこんな音がする。

 

相方が愛用していたので、嫌と言うほど聞き慣れた音だった。

 

ペタリ・・・ペタリ・・・ペタリ・・・ペタリ・・・

 

足取りは次第に緩やかになり、部屋の入口辺りで止まった。

 

恐る恐る頭を起こし、その方向を見る。

 

廊下と部屋とを隔てる障子に、人影のようなものが映っていた。

 

この頃には、それが死んだ相方であることを確信していた。

 

相方は、生き残ったNさんに会いに来たのだ。

 

いや、死んだ事に気付かずに宿に戻って来たのかも知れない。

 

嬉しくなどなかった。

 

ただひたすらに怖かった。

 

目の前の光景から目を背けたいのに、それが出来ない。

 

視線を外した途端、『ソレ』が障子を開けて入ってくるような気がしたからだった。

 

しかし、影は戸口に突っ立ったまま動こうとしない。

 

月明かりに照らされたソレは、よく見るとプルプルと震えていた。

 

まるで液体が詰まった革袋にように、形を保つのが困難であるかのように見える。

 

不意に、現場監督の呟きを思い出した。

 

「中身はミンチだろうな」

 

そうだ、中身がミンチだから戸を開けることが出来ないのだ。

 

中身がミンチだからプルプルと震えてしまうのだ。

 

「・・・Nさ~ん・・・Nさ~ん」

 

障子の向こうから、そう呼ばれる声が微かに聞こえてきた。

 

「・・・Nさ~ん・・・Nさ~ん」

 

それだけしか言わない。

 

声までもが震えている。

 

「・・・Nさ~ん・・・Nさ~ん」

 

もう限界だった。

 

頭から布団を被り、目を瞑り耳を押さえた。

 

「成仏しろ!成仏してくれ!」

 

それだけを願って、震えながら南無阿弥陀仏と唱え続けた。

 

「お客さん、大丈夫かね?」

 

気が付くと布団がめくり上げられ、宿の婆さんが覗き込んでいた。

 

部屋の明かりが点けられ、婆さんの背後には数人の男が立っている。

 

彼等は少し青ざめた顔でボンヤリとこちらを見ていた。

 

窓の外は真っ暗で、時計を見るとまだ真夜中だった。

 

障子は開け放たれていたが、もちろんそこには誰も居ない。

 

「随分と魘(うな)されとったようだが、早う寝とかんと明日がキツイよ」

 

婆さんはそう言うと、持ってきた水をテーブルに置いて電気を消した。

 

障子を閉めると、婆さん達の影は階段の方へ。

 

すると、降り口の所で立ち止まり、布団部屋の方に向かって声を掛ける。

 

「あんたも指の3本くらいさっさと諦めて早う来なされ」

 

やがて、婆さんは幾つもの影を引き連れて階下へ降りていった。

 

翌朝、宿の主人に尋ねてみた。

 

やはりと言うか、この民宿に男の従業員はいないらしい。

 

ただ、婆さんは本当に民宿の婆さんだった。

 

しかもその婆さん、地元では有名な祈祷師らしい。

 

他県から依頼が舞い込むこともあるそうだ。

 

「オババがそう言ったのなら、その相方さんはココに居たんでしょう」

 

宿の主人は真剣な顔でそう言った。

 

「でも、オババが連れて行ったのなら安心ですよ。何の心配もいりません」

 

やけに自信たっぷりの主人の言葉だったが、何とも言えず救われた心地がした。

 

後日聞いたところによると、橋の工事再開にあたっては、オババが祈祷を捧げたらしい。

 

その甲斐あってか工事は無事に終了し、今のところ怪異な現象も起きていないようだ。

 

(終)

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私が生霊になった時のこと

 

10年付き合って同棲していた彼が浮気をし、その女の所から帰って来なくなった時の話です。

 

自宅に戻っていないのは明白なのに、彼は「夜勤で働いていて、お前(私)が家を出た後に帰って寝て、お前が帰ってくる前に家を出ているんだ」と言い張っていました。

 

当時は帰宅していないのは分かっていましたが、浮気かどうかは確信がありませんでした。

 

単に私に飽きて別れたいだけなのか、それとも他に好きな人が出来たのか、私は随分と悩みました。

 

おかげで夜は殆ど眠れず、食欲も何かをする気力も無くなり、会社に行く以外は横になって天井を眺めるだけの日々を2ヶ月も過ごしました。

なぜ急に本当の事を言うのか?

そんな状態でも仕事だけはしていたのは、彼の嘘を決定的にするのが怖かったからです。

 

本当に彼が言うように、私が居ない間に帰って来ているのかも知れないし、思い過ごしなのかも知れないと。

 

それと同時に、嫌いなら嫌いになった、または好きな人が出来たならそれでも良いからハッキリして欲しい、と願うようになりました。

 

気持ちは徐々に変化して、私がこんなにも苦しんでいるのに彼は楽しく遊んでいる。

 

悔しい・・・。

 

憎い・・・。

 

そんな事を考えるようになりました。

 

いつの日からか、不思議と彼が浮気している女の存在がハッキリと感じられ、彼女の顔までは分からないけれど、髪型や体型、それに彼と二人でシングルの布団で寄り添って寝ている姿までも頭に浮かぶようになったのです。

 

そうなってから数日後、半泣きになった彼から電話がありました。

 

「嘘を付いていた。女の所に寝泊まりをしていた。家には帰っていない。悪かった。許して欲しい」

 

そんな内容でした。

 

なぜ急に本当の事を言うのか?

 

最後まで嘘を付き通して女の存在を隠したまま別れる事も出来たのに、と問い詰めました。

 

すると彼は、「毎日のように昼夜問わずお前が現れる」と言うのです。

 

昼は視界の隅に居て、振り返ると居ない。

 

眠っていると、いつの間にかすぐ側にいて金縛りになり、耳元で「嘘付き、嘘付き、嘘付き・・・」と呟き続けるのだそうです。

 

「嘘がバレている、もう隠し通せないと思った。好きな女性が出来たけれど、長く付き合ったお前とこんな別れ方をして良いものか悩み、別れを言い出せなかった」

 

「でも、もうお前の元には戻れない。お前が怖い。そうしてしまったのは自分の責任だけれど、怖い。許して欲しい」

 

そう言って彼は泣きました。

 

彼の罪悪感が私の影を見せたのではないか?

 

よりによって私の生霊のせいにするなんて、私を悪者にしたいのかと憤りを覚えたのですが、ふと私が見ていた彼女の特徴を口にしてみました。

 

明るい茶髪のショートカット、身長155センチくらいでポッチャリ体型・・・。鎖骨の辺りにホクロが二つ並んでいて、左腕に火傷の跡がある。

 

号泣して「ゴメンナサイ」と言い続ける彼の震える声を聞いて、私も別れを決意しました。

 

以上が、私が生霊になった時の体験談です。

 

(終)

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鏡を正面に自分を見て45度下を向く。そして・・・

 

鏡にまつわる話です。

 

これは叔父から聞いた話なのですが、ある日叔父は行きつけのバーに行き、酒を飲んでいました。

 

アイヌ人のママと話していて、その時に鏡に関する話になったそうです。

 

ママ「鏡を正面に見て、斜め45度下を向く。そうしたら左右どちらかに振り返ってみて。そうすると今の貴方には何か見えるはずよ」

 

叔父「へぇ。(そんなわけあるかよ。へっ)」

 

叔父は家に帰った後、歯を磨いている時にママのその話を思い出し、あるわけ無いと思いながらも彼女の言った通りに鏡の前でやってみたそうです。

 

その時に叔父が何を見たのか、それは僕には教えてくれませんでした。

 

でも『何か』を見たそうです。

 

叔父いわく、鏡は自分自身をありのままに映してしまう物で、例え自分の心を偽っていても見透かされてしまうのだそうです。

 

ママの言っていたのは、『鏡を利用して4次元空間を覗く方法』らしいのです。

 

僕はこれを聞いてから、あまり鏡を見たくなくなりました。

 

興味がある方は試してみてください。

 

何も見えないかも知れないし、『何か』が映し出されるかも知れません。

 

(終)

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サービスエリアに居たタチの悪い霊

 

霊感なんて無い私ですが、唯一の怖い体験話を聞いてください。

 

私は去年まで、親の脛をかじる貧乏学生でした。

 

しかも実家から離れていて、アルバイトもろくに出来ないくらい厳しい学業生活の二重苦。

 

恥ずかしながら、骨までバリバリむしゃむしゃな気合いの入った脛かじりでした。

 

余分なお金などありません。

 

学費に生活費まで出してもらっていたので、帰省時の交通費をおおっぴらに「新幹線で帰るから2万くらい頂戴よ」なんて、口が裂けても言えません。

 

が、今は便利な時代。

 

ネットで夜行バスを予約すればかなり安く帰れます。

 

お盆や年末は短いながら必ず帰るようにしていたので、毎回一番安く済むバスを予約して帰省していました。

霊体験なんて懲り懲り・・・

盆を前にして、その時も四列ぎゅうぎゅうトイレ無し、ゴワゴワしたブランケット付きの夜行バスで関西から関東を目指して、他の乗客同様に私も狭い座席に身を縮こめておりました。

 

夜行バスを利用した事のある方なら分かると思いますが、こういったバスは2~3時間置きにサービスエリアに寄ってトイレ休憩を挟みます。

 

大体10分~15分程度のものですが、トイレの無いバスには特に大事な休憩です。

 

私はそれとは別に、帰省時に毎回ご当地キティちゃんを欲しがる友人がいるので、サービスエリアには必ず起き出してバスを降りていました。

 

その時もバックを持って降り、まずはトイレに向かいました。

 

深夜でしたが、同じように関東へ向かう夜行バスが何台も駐車場に停まっているのもあり、人はそれなりにいます。

 

なので、トイレから出た私の後ろに同じくトイレから出てきた男性が付いて来ても、なんら違和感を感じませんでした。

 

自販機が並ぶ室内に入ったところで、背後から沸き立つ異様なプレッシャーに気が付きました。

 

それと・・・臭いです。

 

花火大会の簡易トイレの中のような、むわっと熱気を伴った不快な臭い。

 

胃から何かが逆流した気がして、思わず俯いて口を押さえました。

 

私はそこでさらに気持ち悪いことに気が付いたのです。

 

左側の研きあげられた白い床に映る、私のすぐ後ろにピタッと立つ男の姿に。

 

ドッと胃液と冷や汗が湧きました。

 

背後に立つ人物は、背の低いずんぐりむっくりな私より遥かに身長が高く、床に映る姿をちらっと見る限りでは、私の頭頂部を一心に見つめているようでした。

 

悪いことに自販機コーナーには誰も居らず、お土産物コーナーからは死角になっていました。

 

緊張で動くことが出来ず固まっていると、後ろの自動ドアから誰かが入ってくる音が聞こえました。

 

すると、背後の気配もスッと消え、臭いも遠ざかっていったのです。

 

最後に髪を触られた感触がしたのですが、変な男に襲われなくて済んだ安堵で気にも留めませんでした。

 

私は休憩時間の終わりが近づいていたので、去っていっただろう男を振り返らず慌ててバスに乗り込みました。

 

座席に座った時、またあの不快な臭いがした記憶があります。

 

その後は無事に目的地に着き、さらに電車を乗り継ぎました。

 

実家に帰ってきた私を見るなり、母は「ダメだ、髪切らないと」と、私の下ろした長い髪をまとめあげ、かなりの長さをいきなり切ってしまったのです。

 

私はボー然。

 

でも、母が玄関を開けて外に散らした髪を見て、ようやく意味が理解出来ました。

 

私の髪は黒髪なのですが、外を舞う髪は真っ白だったのです。

 

まだ母の手に残っていた髪は、まるで埃のようでした。

 

途端、襲ってくるあの不快な臭い。

 

サービスエリアで嗅いだものをより濃縮したような強い臭いに襲われました。

 

また背後にあの男が立っている気がしてビクビクしていると、台所に走った母が塩を持って戻ってくるなり、私の頭を目掛けて塩を投げつけてきた。

 

鬼の形相で「娘に手を出したら承知しない!」だとか、「誰の子に目つけてんだ、このドクサレ野郎!」とか言ってくるので本当に怖かったです。

 

やがて塩も尽き、あの不快な臭いもしなくなると、母は塩と散った髪を丁寧に掃き集め、庭の隅で燃やし始めました。

 

その上、髪の毛入りの塩釜でも作るように追加の塩を盛りながら、「地獄で高血圧になって死ね!」と呟いていたのでさらに怖かったです。

 

どうやら私は、サービスエリアにいたタチの悪い霊に何故か目をつけられ、霊が憑きやすくなる何かを髪に付けられたらしいのです。

 

もうすでに何体か憑いて来ていたようですが、母の鬼気迫る除霊で事なきを得ました。

 

母には霊感があると、本人や母方の親類からは聞いていたのですが、こんな荒っぽい除霊方法では、確かに親類がこのことを話すとき苦笑いになるはずです・・・。

 

私が落ち着くと母は、「ぼやっとしてるからあんなろくでなしに声かけられるんだよ」と、一緒にゲンコツを落としました。

 

正直、あんなに怖い思いをするなら、もう絶対に憑かれたくないです。

 

霊体験なんて懲り懲り・・・。

 

(終)

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登校しなくなったクラスメートの家にて

 

俺が小学5年生だった頃の話。

 

夏休みが終わってから、同じクラスに登校しなくなった女子(A子)がいて、まるっきり顔を見なくなった。

 

「新しい教科書を渡してほしい」という名目で、集団登校が一緒だった俺に白羽の矢が立った。

 

要は、「ちょっと様子を見て来い」という事だったんだと思う。

 

もう夏が終わりかけていたので、涼しい風が吹いていた。

 

A子は以前から割と控えめで、それまで一緒に遊んだりしたことがなかった。

 

あまり目立たない感じではあったが、イジメを受けているわけでもなく、友達を作るぐらいの要領は持っているような静かなタイプの女子だった。

 

貧乏でもないし、特別裕福というわけでもない。

 

2階建ての家に住んでいて、ちゃんとした両親もいる。

 

不登校になるような原因は思い当たらなかった。

忘れられない恐怖体験をすることに

A子の家の呼鈴を押す。

 

少ししてドアが軋んだ。

 

ドアの覗き窓から誰かが俺を見ているのだ。

 

その時間が異常に長かった。

 

少なくとも1分以上は見られていた気がする。

 

視線のやり場に困って右の方を見ると、犬が夏バテでもしているのか、ぐったりと地面に寝そべっていた。

 

体も顔もピクリとも動かないが、ギラギラした目だけが俺をずっと見ていた。

 

犬から目を離せずにいるとドアが少し開き、A子が「ああ、○○くん。待たせちゃってごめんなさい。今、お料理してたの」と笑顔を見せた。

 

ドアの気配からして、ずっと覗き窓から俺を見ていたのはA子だったはずだ。

 

想像していたよりA子は元気そうだった。

 

普段より活気を感じさせるほどの様子に少し安心して、事情を話し教科書を渡して帰ろうとすると、「せっかくだから上がっていって」と強く引き留められた。

 

「今、私一人しか居なくて暇してたの」と彼女は言って俺の手を取った。

 

家の中は玄関を入って目の前に階段がある間取りで、2階の辺りから階段を照らす明かり以外は全て落とされて真っ暗だった。

 

他人の家の匂いというのは大体にして違和感を感じるものだけど、A子の家のそれは何か異質な感じがした。

 

家の匂いに混じって、ほのかに便所のような臭気があった。

 

2階のA子の部屋も、同様に明かりが点いていない状態だった。

 

ただ、ゲームの途中と思われるテレビの明かりだけが煌々と部屋の中を照らしていた。

 

嫌な汗が流れるのを感じた。

 

A子が不登校になったのは、精神的に何か異常をきたしつつあるからなのではないだろうか。

 

連れられて部屋に入るなり、横から「よぉ!」と声をかけられ、飛び上がって確認するとA子の兄だという。

 

テレビの光でようやく顔が見えた。

 

A子の家は電気を落とした部屋に居るのが常態化しているのだろうか。

 

さっき、A子は「一人だ」と言ってはいなかったか?

 

あまり深く考えたくはなかったので勧められるままにA子とゲームをしていると、兄が「喉が渇いた」と言ってオロナミンCを3人分とお菓子を持ってきた。

 

口を付けると生温かった。

 

それに、何やらしょっぱい。

 

味も違うし、嫌な臭いがする。

 

ふと横を見ると、何故かA子も兄もゲーム画面そっちのけで俺の顔をじっと見ていた。

 

「まさかと思うけど、これ小便じゃないよね?」と問いただすと、兄は「小便なわけないだろう」と驚いたように大声で否定した。

 

その直後、階段の辺りだろうか、おばさんのものらしき大きな笑い声が一秒ほどして不自然にピタっと止んだ。

 

笑った口を手で抑えたみたいに。

 

A子はずっと俺の顔を見ていた。

 

テレビの光に照らされて反面しか見えなかったが、ニヤニヤしているのは分かった。

 

お菓子をよく見ると、ガムの包装紙が明らかに一度開かれてバレないように戻されている。

 

ここに至り、俺の頭は「この家に長居したくない」という感情で一杯になり、トイレを借りるという口実を作って部屋から脱出した。

 

階段には誰も居らず、階段の明かりも点ったままだった。

 

出来るだけ自然な様子で、「そのままこの家から出て行ってしまおう」という腹づもりで階段を下りて玄関に到着した。

 

真っ暗で何も分からない。

 

壁際のスイッチを押し込むと、明かりが点いた。

 

いつの間にかドアに鍵が掛かっている。

 

後ろが気になって振り向こうとして、部分的に明かりに照らされた真っ暗なリビングが視界に入った。

 

そこには、イスに座ったおばさん(おそらく母親)が居て、ニヤニヤしながらこちらを見ていた。

 

床には無数のビンが並んでいたが、中身は黄色い液体の入った何かだった。

 

おばさんが立ち上がる。

 

2階の方からも床が軋む音がした。

 

生きた心地がせず、靴を手に持って玄関から飛び出した。

 

犬が狂ったように俺に吠えかかったが、そんなものを気にしている場合ではない。

 

走り去る途中で、A子の家の方を振り返った。

 

おばさんは追っては来なかったが、2階の窓から逆光になったA子と兄らしき影が並んでこちらを見ていた。

 

先生にはA子は案外元気だったとだけ報告し、それ以外のことは誰にも口外しなかった。

 

A子はそれ以降も学校には登校しなかった。

 

(終)

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