日本実業出版社

激務で知られた世界的コンサルティング企業が「働き方改革」に成功した理由

アクセンチュア「改革の軌跡」

(写真=日本実業出版社より)

『アクセンチュア流 生産性を高める「働き方改革」』(江川昌史著、日本実業出版社)は、長時間労働が常態化していたアクセンチュア(総合コンサルティング企業)が取り組んだ「働き方改革」の軌跡を、改革を推進した経営トップが自ら解説した書籍です。

アクセンチュアが断行した改革は、残業時間の削減や女性採用比率の向上など労働環境の改善に加え、生産性の大幅な向上をもらたしました。

アクセンチュアはなぜ変わらなければならなかったのか。改革はどのようにして成し遂げられたのか。反発するマネジャーや社員たちをどう巻き込んだのか。本書によれば、経営トップの改革を成し遂げる強固なリーダーシップと、徹底したコミュニケーションがその原動力だったと言えそうです。内容の一部を紹介します。

「アクセンチュアさん、ものすごく評判悪いですよ」

2015年にアクセンチュア日本法人の社長に就任した江川昌史氏は、前年の12月、付き合いのある人材紹介会社の担当者から衝撃的な言葉を投げかけられました。

「アクセンチュアさん、採用関係では、ものすごく評判が悪いですよ。激務で長時間労働という噂が立っていて、人を紹介しづらい状況にあります」

世界的なコンサルティング企業であるアクセンチュアは人材がすべての会社です。人材紹介会社が人を紹介したくないという状況は既存の社員の長時間労働を常態化させ、ひいては会社の成長に影響を与えます。

その時すでに、労働環境に課題があることを認識していた江川氏ですが、外部からここまで言われるようになっていたのは想定していませんでした。抱いていた懸念が、差し迫った危機感に変わった瞬間でした。

当時のアクセンチュアは噂の通り、社員の多くが長時間残業し、終電で帰宅するのが当たり前でした。長時間労働はむしろ美徳であり、よい仕事、早い出世の条件だという思い込みが蔓延。体力勝負の“体育会系カルチャー”が根強い会社だったのです。

改革の前に行われた社員に対するヒアリングの結果が同書に掲載されています。一部紹介しましょう。

部門別調査で寄せられた「改革前」の社員の声

■ワークスタイルに関して ・遅くまで働いて“頑張り感”を出す人が多い ・夜中に送られてきたメールを即返信できることが尊ばれる ・オンライン会議や在宅勤務など、フレキシブルな働き方を許容しない雰囲気

■コミュニケーションに関して ・上司に「いちいち話しかけないで」という雰囲気がある ・誰が何の専門性をもっているのかお互いをよく知らない ・挨拶しない人が多い

■モラル・マインドに関して ・外資系コンサルタントは偉いと思っている節がある ・自分のスキル向上だけを考え、チームとしてパフォーマンスを出す意識がない

(同書14、15ページより抜粋)

想像以上に、社員の疲弊が職場の雰囲気をギスギスしていたものにしていました(自分の会社にもあてはまる、という読者も多いのではないでしょうか)。

会社は成長していたものの、このままではいずれ行き詰ってしまう。社長就任が予定されていた江川氏は、「絶対に会社を変えなければならない」と決意し、それを就任の際のコミットメントとして掲げることにしました。アクセンチュアの社内カルチャー改革『プロジェクト・プライド』はこのような状況からスタートしたのです。

トップ自らが改革を主導、役員たちも巻き込む

解決すべきことはたくさんありましたが、江川氏は優先課題を次の「3つのチャレンジ」に絞り込みました。

■3つのチャレンジ 「ダイバーシティ・チャレンジ」→女性、ダイバーシティ、クリエイターなど、さまざまな人が活躍する状態をつくる 「リクルーティング・チャレンジ」→急成長し続けるスピードに合わせて、継続的に優秀な人材が参画し、活躍する状態をつくる 「ワークスタイル・チャレンジ」→より短い時間で、高品質の価値を生み出す働き方を定着させる

通常、このような取組みは掛け声だけで終わってしまいがちです。過重な業務を抱える社員にとっては新たな負担でしかないからです。しかし江川氏は、危機感からくる強固なリーダーシップと、プロジェクトを確実に進めるための体制づくりによって改革を断行すべく、動き出しました。

『プロジェクト・プライド』のリーダーは江川氏自身が務めました。自ら責任を持ち、トップダウンで強力に推進していかなければ改革は絶対に実現できないと考えたからです。さらに直轄の事務局をつくり、人事や管理部門の責任者、「組織改革」専門の社内コンサルタントなど5名のスタッフを集めました。

また、役員クラスの部門長もコアメンバーとしました。彼らのコミットメントなしに改革は動かないからです。さらに各部門にはチェンジエージェントと呼ばれる『プロジェクト・プライド』の担当者を置き、実働を担ってもらうこととしました。

ただし、このような体制づくりは当初からスムーズにいったわけではなく、形になるまでに3ヶ月を要しました。社内から相当な反発があったからです。

「業績も悪くないのに、なぜ変わらないといけないのか」 「これだけ長く男性カルチャーでやって来たのに、簡単に変われるわけがない」

反発は、プロジェクトのフェーズが進んでも完全になくなることはありませんでしたが、それを乗り越えることができたのは、徹底した社員の意識調査とディスカッションにあったようです。

噴き出した社員たちの「本音」

2015年4月、全社員ミーティングにおいてオリジナルビデオが流され、『プロジェクト・プライド』のキックオフが宣言されました。以降継続的に、事務局や江川氏自身がプロジェクトの意義を伝えるメッセージを発信するとともに、詳細に設計されたロードマップに沿って改革は実行に移されました。

ところが、現場のリーダー(部長クラス)や社員の本気度はなかなか上がっていきません。そもそもが多忙なうえに、プロジェクトを醒めた目で見るリーダーも多かったのです。

そこで江川氏は、部長クラス200人を一堂に集めて、3時間にわたって自由にディスカッションする機会を設けました。

改革に懐疑的だったリーダーたちも、仲間たちと議論する機会を得て変わっていきます。ディスカッションはカラフルな付箋を手に大いに盛り上がりました。「根本原因は何か」「具体的にいまどんなアクションを起こすべきか」と次々にアイディアが提案され、このディスカッション以降、順次実践していくことになります。

実は、マネジャー未満の現場スタッフたちも不満を抱えていました。とくにある部門では、「付加価値を提供する我々は、突きつめて考えることが仕事であり、効率化などできない」と、プロジェクトに対してきわめてネガティブな受け止め方をしていました。

プロジェクトについてディスカッションを行なったこの部門のスタッフミーティングでは、彼らの「本音」が次々と噴き出したそうです。

「ある上司が飲み会でこんなことを言っていました。こういう動きって、何年かに一回あるよね、と」 「毎日、途方もないほど忙しいのに、本当にやろうとしているとは、とても思えない」 「まったく本気が感じられません」 「マネジャーと飲みに行くと、『プロジェクト・プライド』なんて関係ない、とみんな言ってますよ。本当に、会社を変える気なんて、あるんですか?」

最後の発言には会場から大きな拍手が出たそうです。反発はある程度想定されたこととはいえ、この状況を放置していては改革はとん挫してしまいます。

ディスカッションの内容は、発言者を伏せたうえでリーダーたちに共有されました。リーダーたちは危機感を募らせます。「現場も疲弊し、変わりたいと思っているが、“どうせ無理だろう”という空気に支配されている。これではいけない」ディスカッションによって表に出てきた社員たちの本音を知り、リーダーたちは改革により積極的に取り組むようになります。

この部門では、プロジェクトの事務局によって四半期に一度行われる全社員の意識調査とは別に、毎月、独自の調査を行うことにしました。さらに、リーダーたちは積極的に現場に足を運び、直接スタッフたちとディスカッションを重ねるようになったのです。

「なぜ無理だと思うのか」を本音で語ることができるようになれば、改革は大きく前進するはず。このときが、リーダーたちが改革に対して本気になった瞬間でした。

そして会社は変わり始めた

社内調査はプロジェクトの浸透を物語ります。開始から一年後、調査項目に対するポジティブな回答が着実に増えていたのです。例えば、「職場では“限られた時間で成果を出す”という意識が浸透している」という設問に対して、プロジェクトの開始時は「強くそう思う」「そう思う」のポジティブな回答は45%に過ぎませんでしたが、1年を経過した頃には69%に増加しています。

また、調査では社員が自由なコメントを書き込める欄もあり、ポジティブな声が増えていきました。以下は直近の調査におけるコメントの一部です。

「時流にあった素晴らしい活動だと感じる」 「継続した取り組みに賛成/今後に期待している」 「改善を実感している」

最後に『プロジェクト・プライド』の、数字にあらわれた成果に触れておきましょう。

■女性の採用率 ・22.7%(2015年)→30.5%(2016年)→38.7%(2017年) ・新入社員の女性比率は43%で数年前から倍増

■採用人数 ・500人(2014年)→1000人(2015年)→1500人(2016年)

■残業時間 ・平均1人1日1時間まで減少 ・月60時間以上残業している社員の比率:開始前は8.9%→2017年4月 1%

■退職率 ・開始前:13.6%→直近:6%

また特筆すべきは、働き方改革をすすめながらも、アクセンチュアの業績が2年で50%以上成長していることです。経営者にとって、働き方改革や時短への取り組みは、社員の反発や業績の下降というリスクを考えなければならない難しいチャレンジです。しかし、「悪いカルチャー」の放置はいずれ大きな問題を引き起こす可能性があります。そうなる前にアクセンチュアは改革を断行した。その結果社員の意識が変わり、生産性、収益性の向上につながったのです。

アクセンチュアの改革を詳細に解説した『アクセンチュア流 生産性を高める「働き方改革」』は、同社の改革の軌跡をたどりながら、リーダーシップのあり方やチームマネジメント成功のノウハウが学べる、企業経営者、経営幹部、人事・マネジメント部門のビジネスパーソンにすすめたい1冊です。

(提供:日本実業出版社)

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所得税の給与天引きは「憲法違反」? 納税制度のカラクリとは?

教養としての「税法」入門

会社員のみなさんは毎月、給与明細を見ていますか? 当たり前のように所得税が引かれているはずです。

「そういうもの」と思ってやり過ごすこともできますが、少し立ち止まって考えてみてください。確かに「納税は義務」ですが、給料から天引きで納めなければいけない理由はどこにあるのでしょうか。

青山学院大学法学部教授で、弁護士として法律をわかりやすく解説する本を多数執筆されている木山泰嗣先生の『教養としての「税法」入門』に、その答えが書かれていました。ここではそのポイントを説明していきましょう。

(写真=日本実業出版社より)

月々差し引かれる所得税は「前倒し」で納めている

前述の通り、会社員として働いているならば、所得税は毎月給料から天引きされている人がほとんどでしょう。

これは「源泉徴収制度」という、本来個人が税務署に申告して納めるべき税金を、会社が「前取り」して代わりに納めてくれる制度が採用されているからです。

なぜ「前取り」と表現するかというと、本来その年の所得税の納税義務が成立する12月31日(*1)より前に、所得税を徴収するためです。納税者側から見れば、納税義務が発生する前に所得税を納めたかたちになっているのです。

そして、最終的な納税額は、さまざまな控除などをふまえたうえで確定します。ただ、前払いした納税額とズレが起きるときがあります。その場合は年末調整を経て、個人に還付されたり、追加の徴収が行われたりするのです。

*1…国税通則法で「暦年(カレンダー・イヤー)の終了の時」=12月31日と規定されている。

戦後すぐにガラリと変わった日本の納税制度

しかし、実は日本の基本的な納税方法は「源泉徴収」ではなく「申告納税」、つまり自分で納税額を申告する制度です。

なぜ「申告納税制度」と「源泉徴収制度」が入り混じった状態になっているのでしょうか。それを知るには納税制度の歴史を紐解く必要があります。

戦前は「賦課課税制度」という、税額を税務署が決める制度が採用されていました。

なかでも所得税は少し複雑で、まず納税者から提出された申告書を参考に税務署が所得調査書を作成します。そして所得調査委員会という機関の意見を聴いたうえで、税務署長が税額を決定するという仕組みになっていました。ちなみに現在でも、国税の一部や地方税では賦課課税制度が採られています。

一方、現在の国税の主要税目では「申告納税制度」が採用されています。申告納税制度が導入されたのは戦後間もなく、1947年のことでした。日本の戦後処理にあたったGHQから推奨があったといいます。

どうして日本は申告納税制度を導入したのでしょう。一つは当時激しいインフレーションが起きており、前年をベースにした課税では所得税の税収を賄えない事態が発生していたため、それを解消するという理由がありました。

また、もう一つの側面として1946年に制定、1947年に施行された日本国憲法(新憲法)との関係があげられています。新憲法でうたわれている国民主権の理念に、申告納税制度の「納税者が自ら税額を確定させる仕組み」が合致していたのです。

それに加えて、アメリカでは1913年の所得税法創設時から申告納税制度が採用されており、GHQの母国の制度としてなじんでいたという背景もあります。

もし全員が確定申告をしたら税務署は大変なことに?

しかし、会社員の多くは所得税を「申告納税制度」ではなく、「源泉徴収制度」で納税しています。「申告納税制度」があるのにもかかわらず、なぜ会社員は「源泉徴収制度」なのでしょうか。

「源泉徴収制度」の元となる制度がつくられたのは1899年のこと。そのときはまだ給与所得には定められておらず、戦争へ向かう1940年に給与所得に対する源泉徴収制度が採用されます。戦後もこの制度は生き残り、1947年に現在のような源泉徴収に年末調整を加えた仕組みが導入されました。

この制度が採用されている背景には、税務署と給与所得者双方の作業の効率化があります。

日本の給与所得者は約5600万人いますが、確定申告を一人ひとりに課すのは大変なこと。そして、約5600万人全員の申告を受け付けると税務署の事務処理だけでも膨大な量になります。

そこで、会社には負担をかけることになるものの、事務の煩雑さを解消するために、税金の徴収を「代行」させているのです。

「源泉徴収は違憲ではないか」が争われた裁判で最高裁が出した結論は……

最後に本書からからこぼれ話を一つ紹介しましょう。

実は「源泉徴収制度は憲法違反ではないか」という議論があります。

これは源泉徴収義務者、つまり会社側の立場に立った見方によるもの。なぜ個人が自分で納めるべき所得税を、会社が納税しなければいけないのか。そして義務を怠ると「不納付加算税」や「延滞税」といったペナルティが課されるのは納得がいかない、というわけです。

確かに、会社は徴税の代行をさせられているにもかかわらず、手数料ももらえず、ペナルティも存在します。「これは財産権を侵害し、法の下の平等にも反し、憲法違反ではないか」という主張が裁判で争われたこともあります。最高裁の判決が出たのは、1962年のことです。

裁判所の判断は「違憲ではない」というものでした。源泉徴収制度はとても合理的なシステムであり、「公共の福祉」による制約として許されるし、補償も不要であるという判断が下されたのです。

給与明細をもらっても、ほとんど見ないという人は多いでしょう。また、経理担当者や源泉徴収制度の仕組みを知っている人でも、なぜこうした制度になっているのかまでは知らないという人は少なくないはずです。

『教養としての「税法」入門』は、税法の歴史やしくみを切り口に税金について教えてくれる一冊です。社会人の教養として、ぜひとも税法の基礎について学んでみてください。普段納めている税金に対する見方が一変するかもしれません。

(提供:日本実業出版社)

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アメリカをクレカ社会にした「痛い過去」

貨幣と経済の移り変わりから見る近代史

世界金融の中心地・シティを抱えるイギリス。近現代の経済メカニズムが生まれた国でもある(写真=Thinkstock/GettyImages)

今、当たり前だと思っていることでも、過去には当たり前のことではなかったり、その逆に未来になったら当たり前でなくなったりすることはよくある話です。それは永遠のシステムと思われている「お金」にも当てはまります。

例えば「貨幣」というシステムは人類が生んだ発明ですが、ビットコインをはじめとした仮想通貨の登場が少しずつ貨幣の存在を脅かしています。

そんな「常識」を覆す話を、「お金」を切り口にしながら世界史の流れと転換点を解説する『世界〈経済〉全史』(宮崎正勝著)から紹介しましょう。

世界通貨といえば真っ先に思い浮かぶのは「ドル」。でも、150年前は…?

現在世界で流通している通貨のうち、基軸となるものはというとやはり「ドル」が思い浮かびますよね。「ユーロ」や「円」もありますが、為替相場の中心にいるのはドルです。

しかし、ドルが現在のような地位を確立したのは20世紀に入ってからのことです。では、それ以前はどの通貨が世界の覇権を握っていたのでしょうか。

それは、イギリスが発行している「ポンド」(正式名称はスターリング・ポンド)です。

19世紀はまさにイギリスの世紀でした。産業革命によって急速に進んだ工業化による圧倒的な軍事力・経済力の成長を背景として「海洋帝国」を築き上げます。

最盛期には「太陽の沈まない国」と呼ばれていたように、世界の4分の1ともいえる広大な土地を支配していたイギリスは、インド(1877年に直轄領化)、カナダ、オーストラリア、アフリカ最南端の喜望峰を擁する南アフリカなど、大国や要所をおさえていました。また、中国(当時は清)とのアヘン戦争でも勝利し、イギリスに有利な不平等条約を結んでいます。

こうして、世界の要所を海路によってつないだ「大英帝国の領土」間では、自由貿易が活発に行われます。その中でも有名なのが、東インド会社の「アジアの三角貿易」。実は、このビジネスが今では当たり前となっている「紙幣」をスタンダードにするきっかけを生んでいるのです。

19世紀後半、お金のスタンダードは貨幣から紙幣へ変わった。

アジアの三角貿易はイギリス、インド、中国の3ヶ所を拠点に行われた貿易です。この貿易では、イギリスからインドに綿織物を、インドから中国にアヘンを、そして中国からイギリスには紅茶や陶磁器を輸出します。

現在、イギリスで国民的飲料として広まっている紅茶が広まったのは18世紀後半のこと。そのときイギリスは、茶葉の輸入元である中国に対して莫大な貿易赤字を背負っていました。これにより、当時の国際通貨ともいえる銀がイギリス、ひいてはヨーロッパから国外へ大量に流出してしまいます。

そこで銀不足を解消するために、イギリスは画期的な金融システムを構築することになりました。それが「国際金本位制」の導入と「紙幣の発行」です。

それまでの4000年間は、銀貨が世界の通貨として流通していました。国際金本位制は、その「銀本位」から「金本位」へ、そして貨幣から紙幣へのパラダイムシフトを起こすものだったのです。この後、ドイツが金本位制に踏み切ったこともあって、世界的に金本位制へ移り変わる動きが相次ぎました。当然、アメリカや日本もその流れに追従しています。

こうして、つい最近まで続いていた「紙幣と金本位制度に裏付けられた経済基盤」が、イギリスによって19世紀末に完成しました。これは同時にイギリスの通貨であるポンドの覇権を意味していたのです。

アメリカのドル紙幣は銀行券ではないという事実

ポンドが世界経済の覇権を握っていた19世紀、大西洋を隔てたアメリカでは、経済体制が混乱の極みにありました。19世紀前半、通貨発行の権限を持っていた合衆国銀行が廃止され、各州の銀行の認可と取り締まりの権限にゆだねられるようになったのです。このとき、紙幣の発行も州が認可した銀行によって行われ、さまざまな紙幣が統一されることなく出回ります。

さらに、偽造紙幣も多発し混乱に陥るアメリカ経済。実は、クレジットカードを率先して使う今の風潮は、このときの経験が大きく影響しているといわれています。余談ですが、日本では今なお現金による決済が主流ですが、これがカードへシフトしていかない原因の一つとして「偽金の流通量が少ないこともあり、現金(紙幣)に対する信用が極めて高いこと」を挙げるという人もいます。

さて、アメリカが経済大国に成長したのはいつでしょうか?

それは19世紀終わりごろ。南北戦争で国が一つになったアメリカには、まだ開拓されていない広大な土地が広がっていました。そこに「アメリカン・ドリーム」を見た移民たちがヨーロッパから殺到、西部の開拓が進みます。そして、大陸の東西をつなぐ鉄道も建設され、開発ラッシュが荒々しく進んだ結果、イギリスを抜き去り世界第1位の工業国となったのです。

さらに、国内経済を整えるためにアメリカ流の中央銀行「連邦準備銀行」を設立。そして「連邦準備券」としてドル紙幣を発行することになります。

ここで気を付けてほしいのは、ドル紙幣は「準備券」だという点です。普通、紙幣は「銀行券」と呼ばれ、金と交換されるのが建前ですが、アメリカの場合は通貨の発行権が議会にあると規定されており、連邦準備銀行は紙幣を発行できません。そのため「金の裏付けが必要ない」「国債の購入にあてられる」ということで準備券という位置づけで発行されているのです。

あんなに強かったドルも沈み始めて…次の時代の新たな経済へ

ドルの強さが決定的になったきっかけは、第一次世界大戦でした。この戦争でヨーロッパが疲弊し、「漁夫の利」という形でアメリカが躍進を遂げます。1920年代になると、大量生産・大量消費社会が訪れ、国力はますます強くなります。その後、バブルの崩壊から世界恐慌が1929年に始まりますが、第二次世界大戦を経て、アメリカは世界でその地位を確立します。

その象徴ともいえる出来事が、1944年にアメリカのブレトン・ウッズで開かれた連合国の財務・金融担当者たちによる会議で成立した金・ドル本位制(ブレトン・ウッズ体制)です。

ここでドルだけが金と交換できる唯一の通貨となり、「1ドル=〇円」というような、各国の通貨の価値が示される固定相場制が採用されました。最初に金本位制を導入したのはイギリスでしたが、通貨戦争でアメリカに敗北したということになります。

しかし、盛者必衰というように、栄えたものはいずれ衰えます。それは「ドル」も例外ではありません。

その決定的な出来事が1971年のニクソン・ショックです。当時のニクソン大統領がテレビ会見を行い、ドルと金の交換の一時停止と輸入品に対する一律10%の輸入課徴金の徴収を表明。ブレトン・ウッズ体制は事実上、崩壊しました。

このころから叫ばれ始めたのが「グローバリゼーション」であり、アジアをはじめとした新興国が力をつけていきます。安価な労働力を揃えたそれらの国々は世界企業を次々に誘致、租税回避を目的とした「タックス・ヘイブン」も生まれました。また、EUでは2002年にユーロを現金として導入、国境をこえて同じ通貨を使うという壮大な実験が始まりました。

しかし、今やそのユーロも限界だと言われているほか、リーマン・ショックによって資本主義に懐疑の目が向けられ、世界の市場は大きく変わろうとしています。

18世紀からの流れを見ていると、世界の覇権を握る通貨の入れ替わりが、早くなっているようにも見えないでしょうか。また冒頭のように、これまでの通貨に代替する存在――「仮想通貨」が少しずつ広がりを見せています。

歴史は「お金」が動かしてきたのは、経済史を辿れば、まぎれもない事実です。そして、今、私たちが生きているこの瞬間がまさに経済史の転換点になっているのかもしれません。普段何気なく使っている「円」も、遠い未来には過去のものになっている可能性もあるのです。

(提供:日本実業出版社)

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「言った言わない」でモメないための、コミュニケーションの基本

あなたは「読み手型」or「聞き手型」?

(写真=PIXTA)

「コミュニケーションをとることが苦手」「ちゃんと伝えたはずなのに、言った言わないでモメることがある」という悩みをもつ人に、質問です。

あなたは「読み手型(=読んで理解する人)」でしょうか? それとも「聞き手型(=聞いて理解する人)」でしょうか?

何かを確認するとき、文字を読むほうが理解しやすいなら、あなたは「読み手型」、聞いた方が理解しやすいのなら、あなたは「聞き手型」です。(本書117ページより)

大企業でコンサルタント・マネージャーやアナリストを務め、現在は武蔵野大学でビジネス・コミュニケーションを教える金子敦子さんは、著書『「その話、聞いてないよ」と言われない伝え方』にこう記しています。

私たちは生まれてから、毎日のように言葉のシャワーをあび、口頭のコミュニケーション(聞く・話す)を習得します。また、小学校にあがる前後に文章によるコミュニケーション(読み・書き)も行なうようになり、口頭と文章の両方のコミュニケーション手段を使うことができるようになります。

といっても、その両方に秀でている人は少なく、誰もが得意不得意をもっているものなのだとか。どうやらそこに、コミュニケーションに対する不安を減らすヒントがありそうです。金子さんの著書、第4章「『伝える手段』を選ぶ」から見てみることにしましょう。

相手のタイプがわかれば、コミュニケーションは円滑になる

私たちは日常的に、さまざまな方法でコミュニケーションを行なっています。とくにビジネスシーンでは、会議や打ち合わせ、電話といった「口頭」のコミュニケーションと、文書やメールなどの「文章」によるコミュニケーションが中心的な役割を果たしています。

この2つのうち、どちらかというと、文章よりも「聞く・話す」といった口頭でのコミュニケーションに時間を割いている人が多いのではないでしょうか。しかし世の中には、文字による情報のほうが理解しやすい「読み手型」の人も存在することを忘れてはいけません。

たとえば、上司に報告をしたとき「話だとよくわからないから、紙にまとめてもらえないかな?」といわれたとしたら、それはあなたの伝え方が悪いのではなく、相手が「読み手型」の人の可能性があります。

相手にうまく伝わらないと、「なぜわかってもらえないんだろう」と落ち込んだり、「この人は自分の話しを聞いてくれない」と決めつけてしまいがちです。しかし、もしかしたら相手の得意不得意を意識して伝達手段を変えてみれば、簡単に解決できるかもしれません。

たとえば、「読み手型」には多くの情報を口頭で伝えないようにする、「聞き手型」の人に長文のレポートを提出するのは控えるなど。このように「口頭」と「文書」とのバランスを意識して伝達手段を選べば、相手にメッセージを受け取ってもらえる可能性が高まります。

ではさらに、伝えるための代表的な手段の、それぞれのメリット・デメリットあげてみます。

「伝える手段」、どれを選ぶ?

やっぱり「対面のコミュニケーション」が一番伝わる

慣れた相手との慣れた仕事であれば、メールや電話でも十分に伝わります。しかし、今までと違う新しいことをはじめたり、問題解決を目指すのであれば、対面のコミュニケーションが欠かせません。

対面で話すのはときに勇気がいることですが、真剣な表情や落ち着いた声の調子など、非言語コミュニケーションを駆使して気持ちを伝えることができます。さらに相手の反応に応じて臨機応変に調整でき、「それはいいね」「違う気がする」などのフィードバックをその場でもらいながら、考えを深めていくことも可能です。シンプルに相手と向き合うことができる点もメリットといえるでしょう。

デメリットとしては、直接会って話すのは、時間的にも体力的にも、気持ちの面でも、電話やメールより負担が大きくなること。もし、お互いに疲れていたり、感情が高ぶっていたりすると、コントロールがきかずにケンカになってしまうこともありえます。そんなときは、お互いに少し距離をとり、落ち着くのを待ってみるのもひとつの方法だと金子さんは述べています。

「電話」のよさは、即時性と双方性

電話のよいところは、相手の反応がすぐにわかることです。訪問するよりも手短に気軽にやりとりができますし、メールで書きにくいことも伝えやすくなります。

また、相手にメッセージが届いているかどうかが、その場で確認できるのも電話のメリットです。メールのように、気づかないうちに迷惑フォルダに入っていたり、システムの不具合で届かないということはありません。「遅れます」というような急ぎの連絡はメールではなく、電話をつかうのが賢明です。

確定情報、重要な情報は「書面」で伝える

口頭のコミュニケーションは重要ですが、書面がそろうことで次の段階に進む仕事もたくさんあります。たとえば「この仕事を50万円で受注する」というような金銭が関係する内容には、正式な書類や請求書でのやりとりが必要です。また、大人数が関わるイベントの案内などは、口頭で伝えていたとしても、あらためて書面での案内が必要です。

また、会議や打ち合わせでは「議題表(アジェンダ)」をつかって議題を明確にして進行をすることで、議論の迷走を防ぐことができます。さらに、決まった内容を「いつ、誰が、何を、どのようにする」のかを、議事録にしておけば、「じゃあ、そういうことで」となんとなくまとまったものの、その後は具体的にものごとが進まない……ということを防止できます。

「微妙なニュアンス」はメールでは伝わらない

メールは便利なものですが、それだけに頼らないようにすることが大切です。

メールで伝えられるのは言語情報だけです。書き言葉だけで微妙なニュアンスを伝えるのは、それほど簡単なことではありませんし、転送されて困るような「デリケート」な内容には向きません。

また、ちょっとした意見を伝えるとき、メールは口頭よりも厳しい印象を与えます(絵文字や顔文字はビジネスメールには使えませんね)。また、宛先の入力間違えや編集途中で送信ボタンを押してしまうなど、ミスのリスクもあります。微妙なことや込み入った意見を伝える場合は、メールよりも対面でのコミュニケーションを選択したほうが賢明です。

また、コミュニケーションは人と人との関わり合いなので、メールだけでの関わりは、対面に比べるとどうしても印象が薄くなってしまいます。会ったこともない相手へのメールは、「スルー」されてもしかたがないと思っていたほうがいいかもしれません。

コミュニケーションは1つの方法だけに偏らないことが大事

相手が「口頭」と「文章」のどちらを得意としているのか、すぐにはわかりませんし、3人以上の打ち合わせでは、「聞き手型」と「読み手型」が混在することもあるでしょう。また、伝達手段の方法にもメリット、デメリットがあることがわかりました。

相手に「伝える」必要があるとき、以上のことを意識してみることで、今までとは違ったコミュニケーションが生まれるのではないでしょうか。

本書のなかには、さらに「適切なコミュニケーションの距離の取り方」や「簡潔、明瞭に伝えるコツ」など、「伝えたつもり」で失敗しないためのノウハウが満載です。その内容を実践すれば、不安ばかりだった「一方通行」のコミュニケーションが少し楽しいものに変わるかもしれません。

(提供:日本実業出版社)

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ソシャゲプレイヤーは絶対知っておくべき確率の授業

正しい使い方ができてる人は案外多くない

(写真=Thinkstock/GettyImages)

日本人は「確率や統計が好きな国民」と言われています。広告はもちろん、タイトル勝負のメディアでも「婚活成功組に聞いた『勝率9割アップのメイク術!』」「【悲報】ハゲの遺伝率は▲▲%」など、人目を引けるように確率を混ぜた表現が多く見られます。

一方で「確率や統計に関する正しい考え方」が根付いているとは言いがたい現状があります。たとえば、将棋やスポーツなどの勝率について「勝つか負けるかの50%」で考える人もいますが、勝負事には実力差など多数の因子が影響するため、コイントスのように考えるのは現実的ではありません。

そこで「確率に関する正しい考え方の基礎」を学び、生活に密着した使い方をみてみましょう。

確率とは一体何か

ほとんどの人は、確率について小中学校で次のように習っていると思います。

ある試みをn回行ない、Aという結果がm回でたとする。そのとき、この試みによってAという結果が出る確率をm/nと表す。

しかし、ここでいくつか注意しなければならない点があります。たとえば、正しく作られたサイコロを6回振って、たまたま2が一回もでなかったとします。それを受けて「サイコロを振って2が出る確率は0である」と言う人がいたら、さすがにおかしいと思う人も多いでしょう。

このように試行回数が少ないと結果のばらつきが大きく、確率とはみなせない値になりますが、これを100回、1000回、1万回……と繰り返していくとm/nがほぼ一定の値に収れんしていきます。こうして定まったm/nの値を統計的確率と呼びます。

一方、計算によって求めた確率を理論的確率(もしくは数学的確率)と言います。上記の例で言えば「2の目が出る確率は1/6≒0.167(約16.7%)」と計算で求めた値がそうです。

ガチャと天気と理論的確率

理論的確率は、一部の結果から全体を推測する「推測統計学(あるいは推計統計学)」でよく用いられています。たとえば、天気予報では「今日午前の降水確率は30%」などと確率を用いて表現されますが、実際に同じ天気を何度も繰り返して試すことはできません。

この場合、過去の似たような天気や大気の状態、雲の配置、風向きなど、多数の要素から算出し「今日の午前のような天気が仮に100回あったとしたら、そのうち30回は雨だろう」という意味で「降水確率30%」と表現しています。

その他、身近な理論的確率の使い方として「ソシャゲ(ソーシャルゲーム)のガチャにおける、アイテムの出現確率」があります。まず、アイテムの出現方式が統計学でいうところの復元抽出方式か非復元抽出方式かで計算が異なるため、そこから整理します。

抽出方法の違い(『中学数学でわかる統計の授業』(涌井良幸・涌井貞美 共著)P.89より引用のうえ加工)

一般的にイメージしやすいのは、非復元抽出方式のガチャでしょう。現実のガチャガチャがまわすたびに中のカプセル数が減っていくように、最初に定められた抽選対象がガチャをまわすたびに減っていくもので、「ボックスガチャ」などと通称されています。

例として、抽選対象が100あるなかから出現率1%のアイテムを狙う場合を考えてみましょう。初回でとれる確率は1%とそのままですが、2回目は1/99≒1.01%、10回目で1/90≒1.11%……と入手確率が上昇し、どんなに運が悪くても100回まわせば確実にゲットできる計算になります。

しかし、復元抽出方式のガチャの場合は事情が異なります。初回もそれ以後も、母集団である抽選対象の数は変わりません。上の「100の抽選対象から出現率1%のアイテムを狙う」と同じ条件で、ガチャを100回まわすまでにアイテムを取れる確率を計算してみましょう。

100回目までにゲットできる確率は「全体から、100回連続で外し続ける確率を引く」ことで算出できます。この場合、外れる確率は99%なので、1から0.99の100乗を引いた数、約0.639(≒64%)が求める値となります。

逆に言えば「100回まわしてもゲットできない確率は約36%」ということなので、100人がこのガチャをまわしたとすると、36人は目当てのアイテムが取れないことになります(ちなみに200回だと約14%、300回でも約5%の人が取れない計算になります)。

ガチャの例のように、同じ1%を狙う場合でも結果が大きく異なることがあるように、確率の世界は奥が深く、身近なところで役に立つものです。興味がわいてきた方は、計算や数字を毛嫌いせずに学んでみてはいかがでしょうか。

(提供:日本実業出版社)

【編集部のオススメ 日本実業出版社記事】 ・選挙速報で開票率1%なのに当確が出るしくみありきたりの問題に飽きた人に贈る数学<超絶>難問集データ分析手法をたくさん知ってたってムダなだけ“論理的な間違い”はこうして生まれる ―ロジカル・シンキングの落とし穴数学はこんなに働いている【著者からのメッセージ】

「お金の話」を嫌がる人にお金は回ってこない

「いい人」ほどお金に嫌われる

(写真=Thinkstock/GettyImages)

「万人に好かれるように行動する“いい人”の人生は、窮屈で不自由で、つまらない!」と説く書籍、『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』が好評です。著者は、会社員時代から不動産投資で資産を築き、会社経営者を経て、現在はコンサルタントやビジネス書作家として活躍する午堂登紀雄氏。

「いい人」でいようとすることがどれだけ無意味かが軽妙かつ痛快に語られる本書では、「お金」についても1章が割かれています。曰く、「いい人はお金に恵まれない。いい人ほど貧しくなる」。

午堂氏に、自由な人生を生きるためのお金との向き合い方について、話を聞きました。

お金が寄ってこないのは「お金の話」をしないから

──著書の第3章「お金」の冒頭に、「“いい人”をやめられない人はお金に恵まれない」とあります。なぜでしょう?

「いい人」は、お金に対してネガティブなイメージを持っています。お金の話をすると、「いやらしい感じがする」「お金にうるさい人と思われてしまう」と考えているんです。つまり、お金の話をすると嫌われるという思い込みがある。他人に嫌われることは、いい人にとってもっとも避けたいことですから、お金の話を避けるんです。

──たしかに、お金の話はいやらしいと考えている人は多いような気がします。

本当に不思議ですね。私のいう「お金の話」とは、表面的な「儲け」の話ではありません。稼ぐことができた原因や根拠について、興味を持って考えることなんです。

会社の儲け話は、みんな日常的にしているはずです。「あの企業の業績が良いのは戦略がよかったから」とか、「競合他社はこんなビジネスモデルで儲けているらしい。ウチだったらこうすれば儲かるんじゃないか」などと、みんなで一生懸命議論しますよね。これも「お金の話」です。お金の話をすると、経営戦略やマーケティングなどの知識がレベルアップしていく。MBAもそうです。MBAは企業が儲けるための方法論なのに、「いやらしい」という人は少ない。

企業も個人も、お金を稼ぐことに興味があるはずなのに、個人がお金を儲けた、稼いだ、という話になるととたんに「いやらしい」って感じる人が多い。おかしいと思うんですよね。

個人のお金の話でも同じように、「なぜあの人は何億円も資産ができたのか」「なぜ株で儲けられるのか」という議論をして、その背景や判断の根拠を考えてみると、お金に関する知識が増えて、興味も出てくると思うんです。だから、もっとお金の話をしようと言っているわけです。

──話をしないから知識も深まらず、お金が寄ってこないと。

そうです。お金の話を避けるのは、じつはお金にとらわれているからです。まだ未練が残っている昔振られた恋人の話をしたくないのと同じです。お金に関心のないふりをしていても、本当は、心の中では「お金のあるなしが人の優劣を決める」というくらいにこだわっている。

まずはお金に対する「いやらしい」という先入観を捨てて、もっとオープンに話すことができれば、お金との適正な距離感が生まれて、客観的に考えられるようになります。

貯めることが目的になってはいけない

──いい人によく見られる「お金に嫌われる行動」はありますか?

典型的なのは、節約と貯金です。「いい人」は常識人ですから、「何かあったときのためにお金はきちんと貯金するもの」という親の教えに忠実です。貯めること自体が目的になっていて、「貯めたお金を有効活用して人生を豊かにする」ということに思考が向かわない人が多い。

節約と貯金が大好きで、「30歳で1000万円貯めました」といったって、それでどうするんですかと聞くと、「いやもしもの時のために」と。もちろん、もしもの時の保険という機能はあります。でも、「もしも」とはどんな時のことか、その時にいくら必要か、まったく計算していない人がほとんどです。1000万円じゃ到底足りないかもしれないし、多すぎるかもしれないのに。

お金は、幸せのなるための道具にすぎません。ただ貯めるだけではなくて、今よりもハッピーな人生を送るために自己投資するとか、上手に使ったほうが、より満足度の高い生き方になると思っています。

──いい人は貯金はするけど投資はしない、と。

『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』著者・午堂登紀雄氏(写真=日本実業出版社)

いい人は、「失敗してはいけない」という固定観念が強いんです。つまり挑戦をしない。お金に関してもそうで、1円でも損するのがいやなんですね。1回でも負けたくない。これもまたおかしな話です。

たとえば、スポーツをする人は、うまくなるために練習します。シュートを外しても外しても、練習すればそれだけうまくなるじゃないですか。仕事もそうです。若い頃に多くの失敗を経験しながら、成果を出せるようになっていく。上達のためには練習が必要です。

でも、なぜか投資に関しては、練習もしないのに全戦全勝したい。ものすごく虫のいい話ですよね。それで、1回でも負けるとあきらめてしまう。

にもかかわらず、買ったとたんに価値が1割下がる新築マンションを3000万円で買って、300万円損しているのにまったく意に介さない。こういう人に限って、儲け話にウラも取らずに一口のって、失敗したりします。失敗しても、それを教訓にして次に活かせばいいんですが、そうせずに誰かのせいにする。

いい人には「自己責任」という概念が欠けているんですね。誰かが何とかしてくれるという発想がある。でも、結局は誰も何もしてくれないから、国に文句を言ったり、会社のせいにしたりする。依存体質の傾向が強いように感じます。

また、いい人は、他人の言うことをむやみに信用し過ぎることがあります。銀行に対して全幅の信頼を持ち、窓口で手数料が高い投資信託を買ったり、企業の広告宣伝を鵜呑みにして効果が怪しい健康食品を買ったりする。人の話や常識を、「本当か?」「なぜそうなのか」と疑い、本質を問うような思考をしないのです。

「貯めよう」から「稼ごう」へシフトしよう

──では逆に、「お金が寄ってくる人」はどんな特徴を持っていますか?

お金が寄ってくる人は、「貯めよう」とせずに「稼ごう」とします。お金は、稼げば稼ぐほど使いきれなくなって自動的に貯まるものです。そのためには「先行投資」という考え方を持つことです。

「稼ぐ」という行為は、誰かの「困っている」や「こうしたい」を探し、自分の持っている能力を人や社会へ提供し、相手に貢献することで感謝という対価をいただくことです。自分だけではなく相手もハッピーになる、発展的な行動なんです。一方で、「貯める」は自分だけの満足で終わってしまう行為。内にこもる行為であって、誰の役にも立ちません。

「稼ごう」へ発想をシフトして、稼ぐ力をつけるために、スクールやセミナー行くとか本で勉強するなど、自分に「先行投資」をする。「まず貯めよう」という発想では、「先行投資する」という考えすら浮かばないでしょう。

先行投資のためには「お金を借りる」という方法もあります。たとえばMBAを取るために留学したいとします。その費用が貯まるまで3年も5年も待っていては、得られるはずのチャンスを逃してしまう。借金してでもすぐ留学すれば、取得後に就いた仕事で、年収や経験というリターンを回収できると考えることもできます。

「先行投資」でチャンスを買って、それを活かしてお金を「稼いで」、幸せという「リターン」を手に入れる。この一連の流れを体験すれば、人生の選択肢が広がります。

──では金融商品などに投資する場合はどのように考えたらいいでしょう?

投資で大切なのは根拠・判断軸・再現性です。その商品になぜ投資をするのか、どんなリターンを得るのか、という根拠や方向性をしっかりもって、成功しても失敗しても理由を考えて教訓とし、次につなげることを意識すると良いと思います。

その意味で、投資信託は個人的にはあまりおすすめしていません。他人が運用するものだし、「なんなく上がりそうだしいいかな」という曖昧なイメージで買ってしまいがちだからです。根拠がないから判断軸が養われない。判断軸がないから再現がない。つまりは、多少儲かったところで、次に活かせないんです。

「ビットコイン」で億万長者になった人もいるにはいるが……(写真=Thinkstock/GettyImages)

──「ビットコイン」などの仮想通貨はどうですか?

現在のところ、価値が上がっていくイメージはありますが、なぜ上がったか下がったかを深い洞察とともに説明できる人はほとんどいません。たしかに跳ね上がって億万長者になった人もいるにはいます。いち早くその機会に気が付き、他人より早く参入したというセンスや勇気があったと言えなくはありません。しかし、上がった根拠を説明できなければ、再現性はもたらせない。だから次に同じように稼げるかというと、それは難しいのではないでしょうか。

論理的に考えて、自分なりの判断軸をつくる

根拠と判断軸という点でおすすめするのは、株式投資と不動産投資ですね。

株式投資は、企業の未来に投資します。その企業の戦略や財務状況をもとに潜在的な成長力を調べて、現在と比べてどうか、株価が上がるかどうかを判断してその未来を買う。それはつまり、その企業の本質的な価値を推し量るということ。しかしそのためには、事業環境など様々な材料を検討し、論理的に考えて、「自分なりの判断軸」を持つ必要があります。

株式投資を通じて論理的思考や判断軸をつくることに慣れてくると、ビジネスやプライベートでの投資判断や、先々の予想を立てたりするときにも役に立つはずです。

不動産投資は、結婚相手を選ぶのに近いというとわかりやすいでしょうか。その物件は世界に1つしかないし、収益性や資産価値からみて、20年30年と付き合っていけるかを判断する行為ですから、見た目や雰囲気など、一時の情動で選んでしまうと失敗してしまいかねない。

だからこそ、不動産投資も論理的に考える訓練になります。毎月の家賃収入とローンの返済額から差額を計算して、さまざまな材料をもとに収益性を評価する。現在だけでなく、10年後の家賃がいくらになるかも考えて、収支を割り出す必要がある。おそらくお金を借りることになるでしょうが、自己満足のための借金ではなく、将来の収入源を確保してハッピーになるための借金ですから、「先行投資」にあたります。

投資の大前提は「自己責任」です。そのためには勉強もして知識を蓄えて、論理的思考によって根拠と判断軸を明確に持つこと。そのうえで積極的に向き合ったら、自然とお金は寄ってくるのではないでしょうか。

午堂登紀雄氏プロフィール

1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒。米国公認会計士。大学卒業後、東京都内の会計事務所にて企業の税務・会計支援業務に従事。大手流通企業のマーケティング部門を経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。2006年、株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。現在は不動産投資コンサルティングを手がけるかたわら、資産運用やビジネススキルに関するセミナー、講演で活躍。『捨てるべき40の「悪い」習慣』(日本実業出版社)など著書多数。

(提供:日本実業出版社)

【編集部のオススメ 日本実業出版社記事】 ・20~30代はメリット大! 確定拠出年金制度とは3つの思い込みが、あなたをお金から遠ざける!?「億り人」になる最後の決め手は、知識でも初期資金量でもないいい人仮面を捨てる!? 心をラクにする本『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』「愛想笑い」で疲れた人必見。いい人でいることは人生を無駄にする?

トーク上手なのに売れない営業マンが使うNGワード

お客様に言ってはいけない言葉がある

(写真=PIXTA)

「いまの時代、押しのトークだけでは売れません。お客様の気持ちに寄り添って、信頼を得る言葉の使い方が求められているのです」と指摘するのは、サイレントセールストレーナーとして、内向型で売れずに悩む営業マンを専門に指導する渡瀬謙氏です。

幼少期から極度な無口、あがり症だった渡瀬氏は、学生時代にとくにやりたいことも見つけられず、周囲に流されるように営業職としてメーカーに就職しました。待っていたのは売れない日々。不得手であるトークも人一倍練習しましたが成果は出ません。

しかしあるときから、自分のトークよりもお客様の気持ちにフォーカスして、相手を立てるスタイルに変えたところ徐々に成績が伸び始めて、当時勤めていたリクルートで、なんと、トップセールスになったそうです。

そんな経験をした渡瀬氏は、内向的か外向的かに関わらず、売れない営業マンはお客様に「言ってはいけない言葉」を発しているから売れない、と言います。いくら一生懸命セールストークに磨きをかけても、「言ってはいけない言葉」を使っていたのでは成果が出ないのも当然ですね。

どんな言葉がNGなのでしょうか。渡瀬氏の著書、『トップセールスが絶対言わない営業の言葉』から3つのNGワードをピックアップしました。

「そういえばおもしろい話がありましてね」はNG!

雑談の目的は「相手にしゃべってもらうこと」

営業マンにとって「雑談力」は重要とよく言われます。もちろん間違いではないのですが、話がうまく場を盛り上げるのが得意なタイプの人が、営業マンとしてはなかなか芽が出ないことも多いようです。話し上手な人材は周囲の期待も大きいだけに、成果が出ないとそのギャップに本人の悩みも深くなります。

営業マン「先日、うちの上司がバカなことを言っていましてね……」 お客さま「ほう」 営業マン「私が◯◯と言ったら勘違いしたようで、……そして、……だったんです(笑)」 お客さま「それはおもしろいね」 (60ページ)

上の会話のように、笑えるネタを持ち歩いてはお客さまに披露する営業マンがいますが、相手がのってくるならまだしも、単に聞いているだけだとしたら、その雑談の効果はありません。

営業での雑談は相手の警戒心を取り除くことが目的です。そのためには、相手にしゃべってもらうことが重要なのです。相手を笑わせることが重要なのではありません。

相手側の話題を使う

売れている営業マンは、雑談に「相手側の話題」を巧みに使います。たとえば名刺交換のとき。

営業マン「珍しいお名前ですね。何とお読みするんですか?」 お客さま「これはね、◯◯◯◯と読むんです」 営業マン「そうなんですか、珍しいですね~」 お客さま「はい、いつもまともに読まれたことがないんですよ(笑)」 (62ページ)

名前のほかにも、相手の服装や持ち物、部屋の中にあるものなどを観察すれば話題は無限に見つけられます。

雑談の際は、自分から無理に盛り上げようとせず、相手がしゃべりやすい話題、つまり相手側の話題に徹することが重要です。

「こちらの商品はとても人気が高いので、お客さまにもおススメです!」はNG!

「売る気満々」で説明するから売れない

「商品説明」を売り込みの場と考えている営業マンは多いですが、それは間違いです。商品説明とは「事前のヒアリングで得た情報をもとに、相手にフィットした提案をして、買うかどうかを判断してもらう」ことです。

売りたい気持ちはわかりますが、「売る気満々」の説明では売れないばかりか、お客さまのガードをかえって固くして、ついには説明を聞いてもらえなくなります。お客さまは、商品を買うかどうかを、営業マンの強引な勧めによってではなく、自分で判断して決めたいと思っています。その判断の材料を提供するのが、商品説明の役割です。

判断材料を上手に見せる

成果を出す営業マンは、お客様に判断材料を見せるのがとてもうまいのです。

「野菜をたくさん収納したいということでしたので、この冷蔵庫は特大サイズの野菜室があります」 「電気代が気になるとおっしゃっていましたので、40%までの節電モードをそなえた商品がこちらです」 (118ページ)

あらかじめヒアリングした相手の要望や優先順位を加味した説明をすると、お客さまは判断しやすくなります。説明するとき、「お勧めです」「ぜひ買ってください」といった言葉は避け、事実を淡々と並べるのがコツです。

商品説明は売り込みの場面ではありません。できる営業マンは、材料だけを示し、最後はお客様に決めてもらうのです。

「そこをなんとかなりませんか?」はNG!

粘れば粘るほどお客さまに嫌われる

営業は気合と根性で売るものだという風潮がいまだに残っています。「断られてからが勝負」という指導を、マネジャーから受けている営業マンもいるかもしれません。

「そこをなんとか」と粘って売れていた時代もたしかにありましたが、いまは、そのような押しの強い営業はもっとも嫌われる時代です。

お客さま「いらないよ」 営業マン「いや、そう言わずにお願いしますよ」 お客さま「いらないから」(イライラ) 営業マン「そこをなんとかなりませんか?」 お客さま「本当にいらないから、もう帰ってくれ!」(怒り) (143ページ)

これでは売れないうえに、嫌われて二度と訪ねられなくなるでしょう。顧客を失った埋め合わせのため、ゼロからの新規開拓に時間を割かなくてはならなくなり、「売れないスパイラル」に入ってしまいます。

買わない人もすべて大事な顧客である

渡瀬氏は、「絶対に買わない」というお客さまとも仲良くしていたそうです。そのうち相談に乗ってくれたり、いろんな人を紹介してくれたりしてとても助かったとか。

売れる営業マンはこのように、過去に買ってくれなかったお客さまともいい関係を築いています。いずれ買ってくれるタイミングがくるかもしれないことを知っているからです。また、トップセールスに紹介からの売上が多いのもこのためです。

目の前の売上ばかりに固執するあまり、無理に粘って、お客さまとの縁が切れてしまってはいつまでも売れる営業マンにはなれないでしょう。お客さまとの関係は長いスパンで見るのが、成果を出す秘訣です。

(提供:日本実業出版社)

【編集部のオススメ 日本実業出版社記事】 ・「面倒な客は掘り出し物と思え」トップアナリストに学ぶ一流の営業スキルコミュ力なしでも売れる!「質問型トーク術」が営業マンを救う上司に見放された問題児社員が、トップ営業に変わった理由売れるセールストークのキモは「○○」!? ─営業デビューでつまずく前に女性「だから」、売れる!あなたらしい営業の始め方

日本人には、あと一歩「自分で考える力」が足りない

「その他大勢」にならないための「考え方のツボ」とは?

「どうすればいいかは、自分で考えてよ」 「何をいいたいのかわからないよ。きちんと考えた?」 「いいたいことはわかるけど、今ひとつ説得力がないな……」

課題に自分なりの答えを出す。想定外の事態に対応すべく、新たな案を考え出す。自分の意見に説得力をもたせる。これらのように、社会に出ると様々な場面で「自分できちんと考える力」、つまり「考え抜く力」が求められます。

その一方で、日本ではいわゆる「正解主義」に重きを置いた学校教育が行なわれるため、正解のない問いに自分なりの答えを「考え」、意見することを苦手とする人が少なくないようです。

そこで、大学で20年以上に渡り、「考える力」について講義している狩野みきさんの著書『世界のエリートが学んできた「自分で考える力」の授業』から、「考える力」を身につけるためのプロセスを教えてもらいましょう。

ハーバード大学も提唱する「自分の意見の作り方」

(写真=PIXTA)

グローバルな舞台で活躍する人々は、一人ひとりが明確な意見を持ち、しっかりと「自らの頭で考える」スキルを身につけているようです。というのも欧米、とくにアメリカでは「考え抜く」ための教育が幼いころから取り入れられているからです。

たとえばハーバード大学の教育プロジェクトでは、次のような「自分の意見の作り方」が提唱されています。

Step1 〈あること〉について自分はどれだけ理解しているのか、確認する →「理解していること」を確認すれば、「理解できていないこと」が明らかになる

Step2 〈あること〉について理解できていないことは何か把握し、「理解できていないこと」を解決するために、調べる →理解が深まる

Step3 自分の意見を持つ (本書15ページより)

ただし、この3ステップのうち、「あること」に対する理解を深めること〈ステップ1と2〉なしに、いきなり「意見を持つ」という段階〈ステップ3〉へと飛ぶのはNGだと狩野さんはいいます。

たとえば、後輩が新たな商品企画を提案してきたとします。それに対してあなたが、「これってA社の人気商品の二番煎じだよね。それに、その分野に挑戦するのはリスクが高いよ」と意見するとしましょう。

これが後輩の企画についてしっかりと理解した上での発言ならば、立派な「意見」ですが、あまりよくわかっていないのに発言したのなら、ただの「印象」にすぎず、「考えた」ことにはなりません。

では、どうすればもっと物事の本質を理解し、きちんと考えた上で、説得力のある意見をもつことができるのでしょうか。

日本人は無意識に「理解しているフリ」をしてしまう

日本語でのコミュニケーションは、「互いに察し合う」ことに重きがおかれ、「あ・うん」の呼吸がよしとされる文化なので、自分や相手の発言について、質問や確認をすることを無意識に避けがちです。

そのため、自分は相手のいっていることをどれだけ理解しているのか、また相手は自分のいっていることを理解しているのかといった、互いの「理解を深める」作業が、日本人には「当たり前のこと」になっていないのです。

では、「理解を深める」ためには何をどうすればいいのか、6つの方法でチェックしてみましょう。

Tip1. 5歳児に説明するつもりで話してみる

「理解しているつもり」の状態から抜け出すためには、まずは情報を「5歳児にもわかるように説明できるか?」とシミュレーションしてみることが有効です。

なぜなら、子どもでも理解できる簡単な言葉で説明するには、他人の意見や情報だけでなく、自分自身の意見もきちんと整理していなければできないため、理解の度合いをチェックすることができるからだそうです。

Tip2. カタカナ語を掘り下げる

情報を「きちんと理解する」ためには、何気なくつかってしまうカタカナ語や業界用語にも注意が必要です。たとえば、会社でよくつかわれる「コンプライアンス」「コンセンサス」といった言葉の意味を、本質的に理解できている人はどれだけいるでしょうか。

言葉は、誰が、いつ、どのような場面で、誰に向かってどのように発するのかによって意味が決まります、だからこそ、自分の目の前にある「言葉」の意味について、日ごろからきちんと意識するクセをつけておく必要があるのです。

「ぼんやり」した理解のままでいると、誤解や失敗の原因となります。

Tip3. 英語に訳してみる

「理解しているつもり」のチェック方法として、英語(などの外国語)に訳してみることも有効です。たとえば、「顧客に寄り添うサービス」を文字通り英訳してみると「stay by our customers」、“物理的にそばにいる”、“付き添う”という意味となります。しかし、そのフレーズに込められた意味は、そういうことではないはずです。

では、「顧客に寄り添うサービス」とは具体的に何を想定しているのか? それを実現するにはどうするか? 英訳することによって、見えていなかった「穴」をチェックすることができます。

Tip4. 理解できていないことを知るための「理解度チェックシート」

自分の理解度をチェックする方法がわかったら、次は「理解していること」と「理解していないこと」をそれぞれ挙げ、リストを作ります。

具体的にいうと、左側に「検討対象となっている情報や意見について、すでに理解していること」を書き、右側には「検討対象となっている情報や意見について、まだ理解できていないこと、疑問に思うこと」をリストアップしていきます。ここで大事なこととして狩野さんが強調しているのが、“すべて書き出す”こと。ぼんやりした疑問だからと放置せず、どんどん書き出しましょう。

そのうえで、自分の「理解できていないことは何なのか」をきちんと把握し、解決策を考え抜く。さらに、「理解していることリスト」の内容に対し、「本当に正しいの?」と自分でツッコミを入れてみるのが効果的だそうです。

Tip5. 5W1Hでツッコミを入れる

手っ取り早くツッコミを入れる方法は、「Who(誰が)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どのように)」の、5W1Hにきちんと答えられるか自問すること。ビジネスの場合はこれに、「to Whom(誰に向けて)、How much(いくらで)」などを加えた問いに答えられるか確認してみるのです。

「なんのためにこの商品をだすのか?」「本当に必要なの?」と、「理解していること」「理解できていない」ことを疑ってみる。それが、意見を発展させ、その後のサービスや商品の差別化へとつながります。

Tip6. 「信号色のマーカー」で、吟味する

情報がある程度まとまった文書として与えられている場合、信号色のマーカーによる色分けが効果的だそうです。「100%理解できていること」は緑、「なんとなく理解できるけど、調べた方がよさそうなこと」は黄色、「理解できないから、再検討が必要なこと」はピンクというように、三色で色分けをして線を引いていきます。

このマーカー色分け法のいいところは、読みながらスルーしてしまいそうなところを、あらためて「本当にスルーしていいの?」と自分に問い直すことができることです。また、急いで結論に走ってしまいそうなときに、この方法で文章をもう一度じっくり読むことで、内容に対する理解を深めることができるので、たとえば軽率な意見をいうなど、自分の評価を下げてしまう行為の予防にもなります。

他にも、さらに理解を深めるための「よい質問」のしかたや、具体的な発想の広げ方など、狩野さんの著書は、様々な「自分で考える力」をつけるために役立つ“方法”を教えてくれます。

(提供:日本実業出版社)

【編集部のオススメ 日本実業出版社記事】 ・「で、結局何なの?」って言わせない、大人のコミュニケーション術「分かり合う」ための努力はムダ! 上司と部下がすれ違い続けるワケコミュ力なしでも売れる!「質問型トーク術」が営業マンを救う一流のオーラの正体は「気づかい」にあり京大卒芸人が噺家から学んだ「聞き手をつかむ話し方」

「で、結局何なの?」って言わせない、大人のコミュニケーション術

社会人に求められる「コミュニケーション能力」とは?

(写真=Thinkstock/GettyImages)

ある調査によると、企業が新卒の採用選考時に重要視する要素として「コミュニケーション能力」が10年連続で第一位にランクされています(参考)。その一方で、88%の社会人が「仕事で自分の考えがうまく伝わらないことがある」と感じ、悩んでいるそうです(「第2回ビジネスパーソンのコミュニケーション感覚調査」産業能率大学2011)。

もっとも、コミュニケーション能力が具体的にどういった力を指すのかは、必ずしも明確ではありません。

ある人は「空気が読める、誰とでもうまく関われる、感じがいい」といったような資質のことを思い浮かべるかもしれません。あるいは、「自分の思い通りに相手を動かすスキル」と考える人もいるでしょう。

しかし、それらは、仕事をはじめとした社会のさまざまな場面で必要な「成果が問われるコミュニケーション」においては最優先の事項ではありません。(前書きより)

こう著書の中で記しているのが、大企業でコンサルタント・マネージャーやアナリストを勤め、現在は武蔵野大学で人気のビジネス・コミュニケーション講座で教鞭をとる、金子敦子さん。

金子さんによると、社会人に求められるコミュニケーションは、目的に照らし合わせて、相手に「誤解なく情報を共有し、対話し、成果へとつなげる」ことだそうです。

今回は著書、『「で、結局何が言いたいの?」と言われない話し方』の中から、相手に誤解なく確実に伝える話し方のポイントを教えてもらいます。

成果を出すコミュニケーションの3原則は……

まず、仕事をはじめ、成果が問われる場面でのコミュニケーションには、次の3つの原則があります。

1、 コミュニケーションには目的がある

何のための話なのか、という「目的」を見失わないようにします。目的がはっきりしていれば、何を話し、聞くべきかがつかめます。仕事におけるコミュニケーションのゴールは「相手の話を理解し、自分の話を理解してもらい、成果につなげること」です。

2、 コミュニケーションは受け手が出発点である

「受け手」の頭の中を想像し、ひとりよがりのまとまりのない報告にならないようにします。いくら話し手が言葉を発しても、受け手が知覚しなくては、コミュニケーションは成り立ちません。

3、 コミュニケ―ションにはコストがかかる

コミュニケーションを取ろうとすれば、自分の時間と同時に、相手の貴重な時間も消費してしまいます。「忙しいのに」と、いらだちを感じさせないためにも、「コスト」を考えて、話がだらだらと長くならないようにしましょう。

これらは、金子さんがコンサルタントとして働く中で「なんで?」「で、どうしたらいいの?」とつっこまれ続ける中で、またアナリストとしては、自分が発したメッセージで、数千万円単位の金額が動き成果がシビアに評価される中で、「コミュニケーション」について試行錯誤をしながら気づいた原則です。

以上の3原則を踏まえて、相手に誤解なく、確実に伝えるための話し方のポイントを紹介します。

「で、何が言いたいの?」といわれる、伝え方をしない

相手になにか物事を伝えるとき、まず自分自身が話す目的を理解している必要があります。たとえば会社で、部下から「困りました」や「どうしましょう」とあいまいに相談されても、上司は困ってしまいます。

相談や報告をするときは、「○○の企画についてですが、少し問題が起こりました。対応についてご相談する時間はありますか」というように、「何についての話」で「現在どうなっていて」「どうしてほしいのか」がわかると相手も話の内容を理解しやすくなります。

お客様との商談でも、「○○をご提案したいと思います。理由は○○です。いかがでしょうか」というように、あなたが伝えたいのはどんな話で、相手にどう関わる話なのかをきちんと示すことが大切です。

コミュニケーションには、何かしらの目的があります。「状況を知らせたい」「助言がほしい」「調整したい」といった、自分が求めている目的を明確にしないと、相手もうまく答えることができません。

主語と動詞をはっきりさせる

上司に報告する際、こんな言い方をしてしまうことはありませんか?

「『ぜひ、この企画で進めたい』と言っています」 これでは、誰が進めたいと言っているのかがわかりません。他の部署の人なのか、あなたなのか、取引先なのか……、誰が企画を進めたいのでしょう。

他には、上司に慌てた様子で、こんな報告をする人もいます。

「急がないとまずいので、了解をいただきたいです」 これも、誰にとってまずいことが起こるのかわかりませんし、何に対してゴーサインをだしていいものか、上司には判断がつきません。

このように不鮮明で、混乱を引き起こす伝え方は、主語と動詞がはっきりとしていないことが原因です。大事なのは、「主語と動詞をはっきりさせる」ことで聞き手が余計な疑問を抱かないように配慮することです。「誰が」「何をしたのか・するのか」をはっきりと伝えれば、相手が誤解する余地がなくなります。

また「それ」や「あれ」といった代名詞は、できるだけ使わないようにしましょう。上司への報告で、「あの件に関しては、進めておきますね」などと、会話をしてしまうと、「あの」が何を指しているか上司と部下で認識が違ったということが起きかねません。

重要な話ほど、短く伝える

重要な話ほど、誤解のないように詳しく話さなければと、長くなってしまうものです。しかし「確実に伝えたい話ほど、簡潔にしましょう」と、金子さんはいいます。

話し手は、一生懸命に話していると時間が経つのを忘れてしまいますが、聞き手の集中できる時間は限られています。相手にきちんと伝えたいことがあるときには、自分の持ち時間を意識して、話す必要があります。

そのために意識するポイントは以下の3つです。

・関連の低い話は削る

「関係しそうな情報は全部伝えたい」あまり、関連する情報を話にすべて盛り込んでしまう人がいます。しかし、関連性の弱い情報や、テーマからそれた情報まで話すと、聞き手に混乱を生じさせるばかりか、聞く気をなくさせてしまいます。

相手がどのくらい詳細な話を求めているか、そのレベルを意識しすることが大切です。

・欲張らない

話し手はできるだけたくさんのことを伝えたいと思っていても、聞き手はそれほど覚えられないものです。聞き手に「この話から、何を持ち帰ってもらいたいか」を意識しましょう。

・短く伝える練習をする

そうはいっても、伝えたいことを端的に話すのは意識してもなかなか難しいものです。そこで、金子さんは1分で話す練習をすることを勧めています。1分で話せる量は文章にすると、250字くらい。一般的に1分あれば、メインメッセージと主な根拠を話すことができるそうです。

時計の秒針が1周する間に、どれだけのことが言えるか。日頃から練習をしておくと、とっさのときにも簡潔に伝えられるようになります。

大事な話は事前にレビューする

話したあとで「で、何が言いたいの?」と言われてしまわないために、周囲の人に事前にレビューしてもらうことで、内容の質をあげておくことができます。周りの人も忙しくてそんなことを頼めない、という時は1人でもレビューができる便利な3つの質問があります。

1、「本当?(True?)」 2、「どうして?(Why?)」 3、「で、どうしたい?(So what?)」 (本書75ページより)

「本当?」と「どうして?」は確認をしたり、詳細や根拠を求める質問で、知らないことや予想外のことを聞いた時に自然に出てくるセリフです。これを自分自身に問いかけることで、自分の話のどこがわかりにくいのかに気づくことができます。

さらに、言いたいことを言葉にしてみたけれど、なんだかわかりづらいと思ったら、3の「で、どうしたい?」という問いを自問してみましょう。相手に何か伝えるべきことがあるとき、「自分はどうしたいのか?」「相手にどうしてほしいのか?」を確認すると、本来の話の目的が明確化されていきます。

伝えるべきことはきちんと話しているはずなのに、「自分の考えがうまく伝わらない」と悩んでいる方は、仕事に求められる「成果を出すコミュニケーション」を意識してみてはどうでしょう。

(提供:日本実業出版社)

【編集部のオススメ 日本実業出版社記事】 ・できる上司は、部下の「わかったつもり」を放置しない「そんなつもりじゃないのに……」誤解を招く原因は言葉づかいにあった!これさえ身に付ければ引く手あまた! 超実践的スキル「プロジェクトマネジメント」とはあなたが負けていたのは、企画ではなく「声」だった!「コミュニケーション力」は口のうまさじゃない。無理なく自然に人と接する方法

「読みやすい」「共感できる」と言われる文章を書くコツ

「文章を書くのが苦手」の原因は?

(写真=Thinkstock/GettyImages)

「言いたいことがよくわからない」 「もっとわかりやすい文章を書いて欲しい」

企画書などのビジネス文書や就活における自己PR文など、自分が書いた文章を読んだ人から、こんな風に言われたことはありませんか?

あるいは、手紙などプライベートなものも含めて、文章を書くときになかなか思い通りにいかずに、「自分には文才がない」「語彙が足りない」とあきらめていませんか?

自分の考えを上手く表現できずに、結果として「わかりにくい」「伝わらない」文章を書いてしまう原因はどこにあるのでしょうか。

ロングセラー『文章力の基本』の著書もあり、長年に渡って数多くの社会人や学生に文章指導をしてきた阿部紘久さんによると、文章を書くのが苦手な人は文才や語彙が足りないのではなく、

「誰でも知っているやさしい言葉を適切に組み合わせることができない」

のだそうです。加えて次のようにも指摘しています。

無駄なことをたくさん書いてしまったり、考えていることと違うことを書いてしまったり、頭の中にあった大事なことをうっかり書き忘れてしまうことも珍しくありません。 (『文章力を伸ばす』「はじめに」より)

阿部さんの新著、『文章力を伸ばす』には、

「読み手の側にまわってみる」 「文の基本形を確かめる」 「言葉を削れば、より多く伝わる」 「難しい言葉で飾らない」 「基本的な言葉を正しく使う」

など、明快で伝わりやすい文章を書くための81のポイントが、文例とともに提示されています。ここではその第4章「読むそばからスラスラ分かるように書く」と、第9章「共感が得られるように書く」の中から、一部を紹介しましょう。

読み手の頭に入りやすい文章とは

読み手にとって、頭に入りやすい文章とそうでない文章の違いはどこにあるのでしょうか。

読み手は、基本的に何の知識もないまま文章を読み始めます。一方で書き手は、自分が分かっていることをつい自明のこととして書いてしまうことが多く、読み手はここにストレスを感じます。

次のようなポイントに気をつけて読み手の立場に立って書くと、読みやすく負担をかけない文章になります。

1.主役を早く登場させる

【文例1】 次々と新しい事象が発生し、同時並行で複数業務を行わなければならない点に、本社業務の難しさがあります。

文例1は、製造現場の仕事に比べ、本社業務の何が難しいのかを書いた文章です。「本社業務の難しさ」というこの文章の主役が最後に出てくるので、読み手はしばらく「何の話かな?」と落ち着きません。もっと長い文章なら、読むのを止めてしまいかねません。

次の改善案のように主役を早く登場させれば、読み手は安心して読み進むことができます。

【改善案】 本社業務の難しさは、次々と新しい事象が発生し、同時並行で複数業務を行わなければならない点にあります。

2.基本は時系列

【文例2】 今はもう辞めてしまったが、ボストンへ短期留学する前、私はこの英会話教室に小学生の頃から通っていた。高校生の時、引越しをしたのでこの教室が遠くなってしまったが、それでも電車で往復一時間かけて通い続けた。

時系列を無視して思いついた順番に書いてしまうと、読み手が混乱します。基本は時間を追って順に書きます。

【改善案】 私はこの英会話教室に小学生の頃から通っていた。高校生の時、引越しをしたのでこの教室が遠くなってしまったが、それでも電車で往復一時間かけて通い続けた。大学入学後も、ボストンへ短期留学する前までずっと通っていた。

(62ページ)

3.曖昧接続を避ける

【文例3】 サンゴの天敵であるオニヒトデのトゲには毒があり、慎重に駆除作業を進めます。

因果関係がはっきりしている文章は読みやすいですが、それを曖昧に書いてしまう人がいます。文例3は読点の前後の内容が因果関係ではなく単なる併記のように感じられるため、明快さを欠いています。

原因と結果の関係はストレートに書いたほうが、言いたいことがはっきり伝わります。

(74ページ)

【改善案】 サンゴの天敵であるオニヒトデのトゲには毒があるので、慎重に駆除作業を進めます。

共感が得られるように書く

自分の感情をわかってほしい、と思うあまりに、強調表現や凝った表現を使い過ぎると、読み手は押し付けがましさを感じて共感してくれません。事実に淡々と語らせた方がかえって読み手の心を動かします。

3つの文例を見ていきましょう。

1.強調語を使い過ぎない

【文例4】 この経験から、自分に目標と強い意志があれば、どんな難しいことでも必ず達成できるということを学びました。

就活生の自己PR文でしょうか。自分を売り込みたい気持ちはわかりますが、「どんな難しいことでも必ず達成できる」は誇張でしょう。

阿部さんが見たある学生の「志望動機」には、「極める」「猛勉強」「心から」「涙が出そうに」「必ずと言っていいほど」「感激」などの強調語が詰め込まれていたそうです。逆効果ですね。

【改善案】 この経験から、自分に目標と強い意志があれば、難しいことでも達成できるということを学びました。

(156ページ)

2.凝った表現は避ける

【文例5】 高校野球を小さい頃からテレビで見ていた。そして、そのプレーにいつも感動している自分がいた。

「自分がいた」「自分の中で」といった表現を使う人が増えていますが、ちょっと思わせぶりで格好つけているな、と感じる読み手も多いので気をつけましょう。

【改善案】 高校野球を小さい頃からテレビで見ていた。そして、そのプレーにいつも感動していた。

(157ページ)

3.自分のことも、事実に淡々と語らせる

【文例6】 私は高い想像力を持っています。自分が経験したことのないことでも自分に置き換えて想像をすることができるので、人の気持ちになって考え、その気持ちを理解することができます。

これもある人が書いた自己PR文ですが、このような、手放しで自分を礼賛する文章は共感されません。普段の人間関係と同じで、やや控えめで謙虚さが見える文章の方が好感を持たれるでしょう。

【改善案】 私は相手の身になって感じたり考えたりする想像力を磨こうと、いつも心がけています。

(161ページ)

阿部さんは『文章力を伸ばす』の序章において、「書く力は、考える力そのものです」と指摘しています。自分の考えを文章で相手に伝えるためには、考えていることを誰にでもわかるように組み立てて、共感が得られるように表現することが求められます。したがって、文章力を磨くことは思考力を磨くことに他ならないわけです。

文章力は、社会人として、学生として、あるいは1 人の人間として、さまざまな可能性を広げてくれる能力なのです。 (序章より)

文章を書くことが好きな人も嫌いな人も、「書くこと」にもっとチャレンジして、文章力を磨いてみませんか?

(提供:日本実業出版社)

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