死神

もっさんに魅入られた患者と死の関係

 

私が働いている病院のカテーテル室には、『もっさん』と呼ばれるモノが出る。

 

※カテーテル室

重症の心臓病患者の処置をする場所。

 

もっさんは、「青い水玉模様のパジャマを着ていたり」、「ぼさぼさ頭の中年だったり」、「若い好青年だったり」、「痩せた女だったり」、と様々。

 

そんなもっさんの共通点は、「部屋の隅で俯いて立っている」、「同じパジャマを着ている」、「何も喋らないし動かない」、「気が付くと現れ、気が付くと居なくなっている」、「その場にいる全員に見える」等。

 

もっさんが出た時、その処置中の患者は後日に必ず亡くなる。

 

亡くなった患者の処置の全てに現れているわけではなく、もっさんが現れた時の処置の患者は必ず亡くなるということ。

 

処置が成功しても、なぜか予後が悪い方へと向かってしまう。

 

もう随分も前から、もっさんは目撃されているらしい。

 

御祓いの類は何度か試みたらしいが、まるで効果が無いという。

 

年に3~4回しか現れないが、うちの科の先生やスタッフはみんな知っている。

 

処置中にもっさんが出ても、誰も反応せずに黙っている。

 

怯えるのは新人の看護師くらい。

 

若い先生なんかは、もっさんを見ると酷く落ち込んでしまうが、部長先生だけは、もっさんが出ても諦めない。

 

誰よりも、もっさんの姿を見ているはずなのに、このジンクスを信じていない。

 

「もっさんに魅入られた患者をなんとか救えないか・・・」と、部長先生は今も戦い続けている。

 

(終)

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見えてしまった白衣の死神

 

私は高校生の頃にインフルエンザで高熱を出した。

 

意識が朦朧(もうろう)として、救急車で病院へ運ばれた。

 

結果、肺炎と分かり三日ほど寝込んだが、なかなか体力が回復せず、そのまま半月ほど入院していた。

 

定時に看護師が点滴を交換したり配膳したりで訪れたが、時々三十代半ばくらいの看護師が大した用事も無いのにふらりとやって来ては、こちらの顔を窺(うかが)うことがあった。

 

やっと食事がとれるまで回復し、看護師とも会話できるくらいになった。

 

そこで、時々見回りに来る『三十代半ばくらいの看護師』について訊いてみた。

彼女は一体何者なのか?

「あの人は何をしに来てるんですか?」そう訊くと、「そんな暇がある職員はいないよ。名前は?」と逆に訊かれた。

 

「白衣ではなく、薄緑色のナース服だった」と答えると、一瞬こわばった表情になってこちらを見た。

 

明らかに動揺しながら「最近も来たの?」と小声で話しかけられ、「この三日は来ていない」と答えた。

 

「何回来たか覚えている?」と訊かれ、「五~六回かな?」と返すと、「パートで頼んだ人だったかも・・・」と曖昧に口を濁し、それきり部屋を出て行った。

 

そして、その病院を退院した一年後の事だった。

 

足の指を骨折して再び訪れると、偶然にも『あの看護師の女性』と出くわした。

 

女性は急患受付の廊下に居て、担架で運ばれてきた老人の顔を無表情に覗き込んでいた。

 

私はその様子が変だと感じた瞬間、全身に鳥肌が立った。

 

視線を逸らすのが遅れた為に彼女はこちらに気付き、スゥ……と近付いてきた。

 

「あんた、私が見えるの?」

 

彼女は私に話しかけてきた。

 

思わず両手で顔を覆い、心の中で「消えろ!消えろ!」と何度も呟いた。

 

五分程そうして顔を上げると、もう彼女の姿は無かった。

 

幽霊と思しき者を見たのはそれっきりだが、もしかするとあの彼女は『死神』だったのかも知れない。

 

(終)

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