田舎

田舎で出会った不思議なお姉さん

 

小学2年生の頃の話。

 

小さい時に母ちゃんが死に、俺は親父に育てられていた。

 

父子家庭が原因なのか内向的な性格で、小学校で壮絶ないじめに遭っていた。

 

1年生の頃からずっといじめ続けられ、とうとう2年生で登校拒否になった俺は、一時的に母方の実家の田舎に預けられた。

 

そこは物凄い田舎で、まだ日本にこんなところがあるんだな、と思った。

 

そこでのんびりと過ごすことになった。

 

過疎が進んでいて、地域にいる子供は高校生が3人いただけだった。

 

一人が気楽だったし、虫好きだった俺はよく虫捕りに出掛けていた。

 

そんなこんなで半年ぐらいが経った時。

 

8月だったと思うが、一人の女の人と知り合いになった。

 

20代後半から30代前半くらいの、黒髪の長い綺麗な人だった。

お前、誰と遊んどったんや?

きっかけは、向こうから俺に話しかけてきたこと。

 

「ボク、ここらへんの子じゃないよね?夏休みで来たの?」

 

しどろもどろになった俺を察してくれたのか、虫篭に目線を向けて、「あ!いっぱい捕まえてるね。見せてくれる?」と。

 

俺も虫の話なら大好きだったから、その人に色々と説明してあげたりした。

 

その人は相槌を打ちながら、「すごいね」、「へぇ」と言ってくれていた。

 

他人に褒められたことなんて無かったから、純粋に嬉しかった。

 

その日から、そのお姉さんと遊ぶようになった。

 

一緒に虫捕りに畑へ行ったり、川に行ったり。

 

待ち合わせは、いつも川の近くのお地蔵さんの前。

 

爺ちゃんと婆ちゃんにお姉さんの話をしたら、「あぁ、夏やから○○さん家の娘さんが帰ってきとるんやろ。迷惑かけちゃいかんよ」と言っていた。

 

超過疎状態でよそ者も来ない土地だったから、そんなに気にも留めてなかった。

 

お姉さんは不思議な人で、あまり自分の話はしなかった。

 

俺が家族の話とか訊いても、全部うまくはぐらかしていた。

 

でも俺の話は親身に聞いてくれて、学校でいじめられていたこと、母ちゃんがいないこと、爺ちゃんや婆ちゃんにも言わなかった弱音もよく吐いた。

 

俺の愚痴を聞き終えると、いつも優しく慰めてくれた。

 

俺は、「お姉さんが母さんだったら・・・」と、よく思った。

 

そうお姉さんに言うと、なんだか悲しそうな顔をしていた。

 

でも、お姉さんと出会って少し経った頃から、体調が悪くなり始めた。

 

最初は風邪かなと思ったけれど、熱は無いし大丈夫だろうと考えていた。

 

何より、お姉さんに会えないのが嫌だったし、気分が悪くてもお姉さんとのいつもの待ち合わせ場所に向かっていた。

 

体調はどんどん悪くなり続け、爺ちゃんや婆ちゃんも心配になったのか、俺を家で寝かしつけておくも一向に良くならない。

 

俺は俺で、お姉さんに会いたいとずっと文句を垂れているから、爺ちゃんがそのお姉さんの実家であろう家に電話をかけた。

 

電話をかけ終わると爺ちゃんは突然焦った様子で、「お前、誰と遊んどったんや?○○さん家の娘さん、今年は帰って来てないって言うぞ!?その人の名前は?どんな人や?」と訊いてきた。

 

俺は混乱しながらも、よく考えたら名前を知らなかったことに気づいた。

 

とりあえず特徴を告げると、急いでまた電話し始めた。

 

俺は何をそんなに焦っているんだろうと思ったけれど、よく考えたら知らない人間がいるなんてありえない地域だった。

 

周りは全員知り合い状態だし、よそ者が来たらすぐに分かる土地。

 

ましてや、知らない人が住んでいるなんて尚更ありえない。

 

でも小さい俺は、それがよく分からなかった。

 

結局、そんな女性はいないと分かり、爺ちゃんと婆ちゃんも不気味に思ったのか、その日から俺はお姉さんとの待ち合わせ場所へ遊びに行くのをやめさせられ、家の近くで遊ぶようになった。

 

それに、少しはマシになったものの、体調は相変わらず悪かった。

 

本当はお姉さんに会いたかったけれど、これ以上、爺ちゃんと婆ちゃんにも迷惑をかけられなかった。

 

その日も家の裏の畑で虫探しをしていると、昼頃に「●●君、こんにちわ」と、お姉さんが突然やって来た。

 

俺はもう嬉しくて、また一緒に虫捕りをして遊んだ。

 

でも、なぜか分からないけれど、俺はあんなことがあったにも関わらず、お姉さんの素性を一切訊かなかった。

 

それに、少し離れた所には爺ちゃんと婆ちゃんも居たのに、二人ともお姉さんに気づいていないようだった。

 

その夜、思い出したように訊いてみた。

 

「なんで昼間、お姉さんと虫捕りしてたのに何も言わなかったの?」

 

そう言うと、二人は突然青ざめ始め、「昼間って、お前一人で遊んでたろう?爺ちゃんも婆ちゃんもお前が遠くに行かんかずっと見とったぞ」と言った。

 

二人はどんどん顔が強張っていき、爺ちゃんは急いで親父に電話した。

 

電話が終わると爺ちゃんは、「悪いけど、●●、お前はもうお父さんの所へ帰れ。もうここにおっちゃいかん」と言った時は本気で絶望した。

 

ここからは、俺が大きくなってから聞いた話だが、この土地はずっと昔に『子供の神隠し』が多発していた場所なんだという。

 

どうやら、友達が少ない子ほど神隠しに遭いやすいという言い伝えがあったらしい。

 

そして、神隠しに遭う子は、居なくなるちょっと前から原因不明の体調不良に襲われるのだと。

 

でも爺ちゃんは、どうせ友達を多く作るための方便と思っていたらしい。

 

だけど、神隠し云々に関わらず、爺ちゃんは当時の俺をどうもおかしく感じたらしく、帰らせることにしたと。

 

駄々はこねたものの、結局は一週間後に帰ることになってしまった。

 

帰ることが決まってからの一週間、俺は家を一歩も出ることが出来ず、ずっと家の中に居させられた。

 

婆ちゃんは相変わらず不安そうだったが、俺はお姉さんに会えなくなることをずっと悲しんでいた。

 

そして帰る当日の朝、親父の迎えを待ちながら庭の縁側で泣きながらうずくまっていると、突然お姉さんがひょっこり現れた。

 

おかしいとは思いつつも、恐怖は微塵も感じなかった。

 

「●●君、どうしたの?」

 

いつものように優しく話しかけてきた。

 

俺はもう帰らなくちゃいけないことを伝えると、寂しそうに「そっか・・・でもそれがいいと思う。大丈夫、お姉さん遠くで応援してるから」と言った。

 

最後に俺が、「ここに来たらまた会える?」と訊くと、悲しそうに首を横に振り、歩いて庭から出ていった。

 

家に帰った俺は、それからは何故かいじめにも遭わなくなり、体調も良くなって普通に暮らすようになった。

 

でも、あれから一度もお姉さんとは会っていない。

 

結局、お姉さんは何者か分からなかった。

 

幽霊かも知れないし、神隠しの使者かも知れない。

 

神隠しから守ってくれたのかも知れないし、普通の人間だったのかも知れない。

 

本当に不思議な体験だった。

 

 

(終)

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3日間を祠の中で過ごすという祭り

 

俺の実家は東北の田舎にあり、数年に一度、村全体で『謝肉祭』が開かれる。

 

その祭りのしきたりが少し変わっていて、その年に7歳になる子供と16歳以上の未婚の女を別々の籠に入れて、普段は立ち入り禁止になっている山奥の祠に3日間閉じ込める。

 

しかも、選ばれる人間は必ず村の中で立場の弱い者が中心に選ばれている。

 

そして問題が起こったのは、3回前の祭りの時だった。

約束を守らなかったから・・・

その時は祠に入る人はもう決まっていたが、なぜか村長の親戚の娘が「自分が入る」と言い出した。

 

この女性は7歳の時に祠に入れられた経験のある人。

 

本人がやりたいならやればいい、ということで決まりかけた。

 

だけど、今度は村長がOKを出さなかった。

 

この時はまだ、村での立場の弱い者を選ぶというルールはなかったが、おそらく自分の一族から出すのは格好悪いとかそういうことが理由なんだろうと思う。

 

しかし、その娘は「絶対に自分が入る」と言って聞かなかった。

 

それでも結局、村長が絶対にダメだということで、その娘は選ばれなかった。

 

これは後から聞いた話だが、この時に娘は「自分が入らないと大変なことになる」とか、「約束が・・・」と言って凄くもめたらしい。

 

当然ながら、何を言っているのか意味が分からないし、村長の意向で別の人が2人選ばれた。

 

その2人が祠に入って3日後、籠が祠から運び出されて開けられた。

 

その時に問題が起こった。

 

籠を開けて7歳の方の子は出て来たが、もう一人の方が出て来ない。

 

村人も段々と異変に気づいて、「何だ?!何だ?!」という感じになってきた。

 

籠の中を何人かで確認するが、中は空っぽ。

 

本来なら籠から出てきた人は大体ぐったりしていたり、ボーっとして意識朦朧としていることが多いのだが、この時の7歳の子はブルブル震えて怯えているようで、明らかに何かおかしかった。

 

村人何人かで祠の中を探したりしたが、籠に入っているはずの女性は何処にも見当たらなかった。

 

駐在さんにも来てもらい、翌朝に町から警察官が沢山来て捜索したけれど、やはり女性は見つからなかった。

 

最終的には『行方不明』ということになった。

 

後から村の人たちの間で噂になったことなんだけれど、7歳の子が警察官に色々と聞かれた時、しきりに「守らんかったから来た」と変なことを言っていたらしい。

 

その子も相当なショックを受けたのか、それをただ繰り返すだけで、何が来たのかは「ウルグル・・・」と変なことを言うだけで分からずじまいだった。

 

こういうことがあったから、当然祭りをどうするか話し合いがあったそうだが、ご先祖様たちがここに落ち着くと同時に始まった祭りなので、祭りそのものは存続することになった。

 

但し安全のため、祠に入る人の選定は、審査して問題の無い者を選ぶということに。

 

・・・が、それはあくまで表向きで、実際は何が起こってもいいようにと、立場の弱い者が中心に選ばれるということになった。

 

あの時の7歳の子は今でも村で生活しているらしいが、あまり普通に会話できるような感じではないそうだ。

 

村長の親戚の娘はこの事件の後、何ヵ月かして余所に出て行ったということだった。

 

村長はそれからしばらくして亡くなった。

 

当時でも、この事件について話さないようにという雰囲気が村にあったようで、真相を知りたくても村人たちはそれ以上踏み込めなかった。

 

(終)

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私の田舎に伝わっている風習

 

つい先日、田舎へ帰った時に聞いた話が衝撃的でした。

 

うちの田舎ではお墓参りの後に『お墓から提灯に火を点けて本家に徒歩で帰る』という風習のようなものがあります。

 

それだけだったらありがちなのですが、それには色々と制約がありまして・・・。

 

① 提灯の火を消してはいけない。消えた場合はすぐにお墓へ戻って火を点け直す。

 

② 走ってはいけない。

 

③ 提灯を持つのはその場にいる最年少者。(但し、赤ん坊のように自分で持てない場合はその次の年齢の者)

 

④ 絶対にお社(やしろ)を見てはならない。

 

この4番目のお社というのは、本家からお墓までの間のほとんど田んぼしかない道の道中に不自然に小さい林のような場所がぽつんとありまして、その中に石造りの小さなお社があります。

 

そのお社の”方向”を見てはいけない、というものです。

お社にいる”アレ”を見てしまうと

子供の時は私も提灯を持つ役をしたことがありましたが、その時も祖父や祖母に約束を守るようにと厳命されました。

 

その時に聞かされたのが、「提灯の火に御先祖様が乗り移って家の仏壇に入るから途中で消してはいけないよ」という内容で、子供ながらに「なんか変なの」と思ってその役をやっていました。

 

そしてその提灯持ちの最中、お社の付近に差し掛かると、母親が私の目を隠してきたのを覚えています。

 

当時の私は母親のおふざけだと思い、無邪気にきゃっきゃっとはしゃいでいました。

 

そしてお社を通り過ぎるまではその状態が続き、母親が手を外すとそのまましばらく歩き、家に到着。

 

仏壇のロウソクに火を移して終了、という風習でした。

 

当時はなんとも思っていなかったこの風習なのですが、今年になり何年か振りに田舎に帰り、祖母にその風習について訊く機会がありました。

 

「そういやYちゃん(私)にはちゃんと話してなかったね」と、あの提灯持ちのルールの真意を聞いて正直驚きました。

 

① 提灯の火を消してはいけない。消えた場合はすぐにお墓へ戻って火を点け直す。

 

これは昔に聞いた通り、御先祖様を家に連れて帰るための依り代のようなもの。火が消えると連れていけない。

 

※依り代(よりしろ)

神霊が依り憑く(よりつく)対象物のこと。

 

② 走ってはいけない。

 

走ると”アレ”に見つかりやすくなるため。

 

③ 提灯を持つのはその場にいる最年少者。

 

“アレ”は弱い者を狙うので、御先祖様の守護が確実に届く位置、要は提灯の持ち手が一番近い。

 

④ 絶対にお社を見てはならない。

 

直接”アレ”を見てしまうと、御先祖様の守護も効かない。

 

祖母は説明している時に『アレ』という言葉を多様したが、私は意味が分からなかった。

 

私は「アレって何?」と訊くと、祖母は「アレはほら、お社の中にいるアレだよ」と。

 

話しを詳しく聞くと、アレというのは田んぼの真ん中にある林のお社の中にいるモノで、足の長い猿のような外見をしており、大昔からそこにいる存在で、普段は静かにしているらしいがお盆の季節になると害をなすモノになるらしい。

 

名前もあるらしいがそれを口にするのはタブーらしく、「知らない方がいい」と教えてくれませんでした。

 

この存在は子供には教えないらしい。

 

興味が出ると「見えてしまう」からだそうだ。

 

今思えばあの日、母親が私の目を隠したのもそういう都合があったからなんだなあと感謝したものです。

 

祖母は続けて、この風習というより儀式が失敗した場合の事を教えてくれました。

 

過去には途中で火が消えたまま本家に帰ったり、アレを見てしまったりと失敗があったらしいのですが、その時は次のお盆までに必ず一族の誰かが不可解な事故や事件で亡くなっているそうです。

 

私はそこで「急に話しが胡散臭くなったなあ・・・」と思っていると、「去年亡くなったFはアレにやられたんよ」と祖母は言いました。

 

そこで、私はものすごく鳥肌が立ちました。

 

去年の年末、私の従兄弟にあたるF君が車の事故で亡くなりました。

 

子供の頃よく遊んだので、とても悲しかった。

 

母親から聞いた話だと、直線の見晴らしのいい道路で急にハンドルをきり、横の川に転落し亡くなったそうです。

 

何故そんな場所でハンドルをきったのか、原因は未だ不明らしい。

 

私が何年か振りに田舎に帰ってきたのも、F君にお線香をあげなきゃと思ってのことでした。

 

「じゃあ、去年の夏に失敗したの?あの提灯のやつ」と訊くと、「去年はUちゃん(親戚の子供)が提灯持ちをやったんだけどねぇ、どうやらアレを見ちゃったみたいでな。ものすごく怯えておったんよ」と。

 

その後、大慌てで御祓いをしてもらったりしたらしいが、結局はダメだったらしい。

 

昔に何とも思わずに参加していたものに重大な意味があると知った時、私はとても恐怖を覚えました。

 

私が田舎へ帰った時にはその儀式はすでに終わっており、お墓参りだけしてきました。

 

今年のその儀式はきちんと成功したのか、一年間不安で仕方ありません。

 

来年は参加してきちんと見守りたいと思います。

 

(終)

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山のタブーを犯してしまったせいで

 

子供の頃、近所のお爺ちゃんに聞いた話です。

 

そのお爺ちゃんは若い頃に一度事業に失敗し、実家のある田舎へ帰ったそうです。

 

その家には持ち山があり、色々謂(いわ)れもあったらしいのですが、若い頃に学業のため上京した彼は、その謂れなるものを全く知らなかったそうです。

 

ある日、彼が山を歩いており、ふと茂みを覗くと“一羽の兎”がいたそうです。

もしあの時、捧げていれば・・・

しかし、「兎だ」と思ったのは単に耳が長かったからで、実のところ見慣れている兎とは大分違う生き物であったとの事。

 

毛も無く、目も開いておらず、簡単に言うと「生まれたての子兎」のようだったとか。

 

しかし、大きさは紛れもなく野兎のそれであったそうです。

 

しかもよく見ると、その兎は酷く怯えており、彼が近付いても動こうともしません。

 

どうやら後ろ脚が罠にかかっているようでした。

 

・・・が、罠と言っても細い草に引っかかっている様にしか見えません。

 

彼は何の気もなく罠を外してやったそうです。

 

そして、ふざけて「恩返しをしろよ」と兎を見ると、先に語った姿の醜悪さなものですから、突然腹の底からゾッとして逃げ帰ったそうです。

 

彼は帰宅後、これを家の人に話しました。

 

すると、家に来ていた分家筋の人達が一斉に厳しい顔になり、「すぐに出て行け!」と言い出し、彼は新妻諸共叩き出されたそうなのです。

 

彼は憤慨しましたが、それから年を経るにあたって、なんとなく理由を理解しました。

 

奥さんは三度流産し、結局子供が出来ませんでした。

 

「たぶん、あれは山の神様への生け贄で、自分が勝手に逃がしてしまったのだろう・・・」

 

お爺ちゃんは悲しそうに言いました。

 

重ねて、実は村から叩き出された直後、あんまり腹が立ったので、一度件の山に行ったのだと言いました。

 

兎のいた辺りで気配を感じ、ふと見上げると錆び付いた斧が自分めがけて落ちてくるところで、慌てて飛び退いたという。

 

「もしあの時、自分が腕なり脚なりを切って捧げていれば子供は助かったかも知れない」とも・・・。

 

(終)

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遊びの最中に消えてしまった従兄弟

 

子供の頃、毎年夏休みになると、お爺ちゃんの家へ泊まりに行っていた。

 

お爺ちゃんの家は島根県の山奥で、周りの集落はほとんど親戚みたいな感じだった。

 

そこには僕と同い年くらいの従兄弟が何人もいて、いつもみんなで一日中遊んでいた。

 

僕が小学6年の時、従兄弟たちと缶蹴りと鬼ごっこが混ざったようなルールの陣取り遊びをしていた。

 

お爺ちゃんの家の敷地は馬鹿みたいに広く、隠れるところも沢山あった。

 

僕は物陰で2つ年下の信二と隠れた。

 

僕が先に飛び出しておとりになり、その間に信二が相手の陣地を取る作戦を立てた。

 

そうして僕は大声を上げながら敵陣に向かって突進した。

信二は帰れずに彷徨っている

陣地を守っていた敵が僕を捕まえようと走り出したのを見てから信二が敵陣に突進したが、寸前のところで敵に気付かれ、信二はUターンして逃げ出した。

 

敵の従兄弟の方が逃げる信二より数段足が速く、信二がすぐ近くに建っていた蔵の裏に逃げ込もうとした時には捕まる寸前で、二人はほぼ同時に蔵の裏へ消えていった。

 

その隙に、僕は楽々と相手陣地を取ることが出来た。

 

僕が相手陣地に立って大声で歓声を上げると、隠れていた従兄弟たちがゾロゾロと出てきた。

 

蔵の後ろから信二を追いかけていた敵の従兄弟も出てきたが、信二は居なかった。

 

「信二は?」と僕が訊くと、その従兄弟はぽかんとした顔で「消えちゃった」と答えた。

 

その従兄弟が言うには、手を伸ばせば届くくらいの目の前を走っていた信二が、蔵の角を曲がった途端に居なくなってしまったという。

 

僕も二人が蔵の裏に走って行くのは見ていたので、僕達は蔵の裏まで行ってみたが信二はどこにも居なかった。

 

僕達が隠れるところは大体決まっていたので色々探してみたけれど、結局は信二を見つけられなかった。

 

日が暮れ始める頃になると大人達もだんだん騒ぎ出し、集落のみんなが懐中電灯を持って裏山や近所を捜索し始めた。

 

僕達はお爺ちゃんの家に集められ、留守番をさせられた。

 

重苦しい空気の中、従兄弟が「見つかるはずないよ。消えちゃったんだよ・・・」と、いつまでも泣きながら言っていた。

 

その後、警察がやってきて事情を訊かれ、僕達はあるがままに答えた。

 

警察は怪訝な顔をしていた。

 

その日の夜中、どうしても我慢出来ずに便所に起きた。

 

広間からは明かりがもれていて、大人たちの話し声が小さく聞こえていた。

 

ちょっと安心して便所で用を足していると、静けさの中に何だか信二の声が聞こえるような気がしてきた。

 

僕の心臓の鼓動は段々と大きくなってきて、用を足し終える頃には鼓膜の横にある血管がドクンドクンという音の合間に、はっきりと「助けて!」という信二の声が聞こえていた。

 

僕は絞り出すように信二の名前を呼んだ、ような気がする。

 

すると信二は、「誰?見えないよ。ここはどこなの?」と答えた。

 

声はまるで四方の壁から聞こえてくるようだった。

 

おそらく本当は、全て恐怖からくる僕の頭の中での想像の会話だったのかも知れない。

 

便所を出た僕は、その後は朝まで大人達と一緒に居てもらった。

 

翌日もみんなが総出で古い井戸や汲み取り便所の中まで探したが、信二は見つからなかった。

 

警察は不審者の目撃情報なんかを集めていて、誘拐と事故の両方で調べていた。

 

僕達の意見は当然ながら無視された。

 

そして、僕は予定より早く東京へ帰ることになった。

 

帰る日にお爺ちゃんの家の縁側から庭を見ていたら、お爺ちゃんが飼ってた犬が尻尾を丸めて怯えたように蔵の壁に向かって吼えていた。

 

さらに、犬は気が狂ったように蔵の下の土を掘っていた。

 

その後も犬の様子があまりにもおかしいので、その蔵は解体され、蔵のあった周りの土を1メートルほどの深さを掘って調べてみたが、何も出なかったらしい。

 

翌年、僕は中学生になり、夏休みにお爺ちゃんの家へ泊まりに行くのはやめた。

 

信二の消息は不明のままだ。

 

もう10年も前の話だけれど、未だに信二はどこか別の次元で生きていて、帰れずに彷徨っているような気がする。

 

(終)

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雨風の強い夜に川を登ってくるもの

 

先日、数年ぶりに母方の実家へ行ってきたので、そこら辺にまつわる与太話を。

 

母方の実家は本当にド田舎で、今でこそ山の上の方に高架道路なんぞが通っているが、昔は山間を縫うように走る狭い道に沿うようにして家が並んでいて、村と言うよりは集落と言ってもいいような、そんな場所だった。

 

そんな場所だからかは知らないが、昔話やら伝承やら、そういった類の胡散臭い与太話には事欠かず、かく言う俺も、子供の頃からここを訪れる度に少なからず胡乱な体験をしていたりした。

 

※胡乱(うろん)

確かでなく、怪しいこと。うさんくさいこと。

今年は来なすったのか・・・

あれは、小学生の高学年か、もしくは中学生の始めの頃だったかと思う。

 

その日は朝から随分と暑く、俺は婆ちゃんの家の敷地内を流れる川べりで、魚やら虫やらを採るなり、涼むなりをして悠々自適に過ごしていた。

 

川と言っても石壁で両脇を囲われた用水路のようなもので、水位は当時の俺の足のスネ中程まであるかないか。

 

だが、両脇の壁自体がえらい高く、川底に降りれば大人でもすっぽりと隠れてしまうくらいある。

 

もっとも、玄関から出てちょっと左に行った所にある石階段を降りると足場があり、自由に降りることも出来るから、そんなに危ないというわけでもない。

 

村に水道が来る前までは、ここで野菜やら何やらを冷やしたり、ちょっとした洗い物などをしていたらしい。

 

そんなこんなで時間はあっという間に過ぎ、夕方に差し掛かった頃だろうか、どこからか強い風が吹き始めた。

 

陽が沈む頃には、雨を交えたそれが轟々(ごうごう)と唸りをあげながら猛威を振るっている。

 

その日、俺は婆ちゃんの家に通い始めてから初めて、そこでの台風というものを経験することになった。

 

夕食を終え風呂に入ると、爺ちゃんと婆ちゃんに「今日は早めに寝てしまえ」と言われた。

 

いつもなら夏休みとお泊りの特権を活かして23時くらいまで爺ちゃんとテレビなんぞ見ながら過ごすが、今日は天気が天気だ。

 

アンテナの調子も随分と悪いらしく、そもそもテレビがまともに映らない。

 

21時を回る頃には夜更かし派の爺ちゃんも自室に引込み、俺も布団を敷いた座敷に押し込められる事となってしまった。

 

だが、台風の夜特有の変な興奮と、婆ちゃんの家での初めての台風という二つの要因が俺のテンションを変なところに押し上げてしまい、なかなか寝付けない。

 

座敷の電気を一応消して、代わりに爺ちゃんの部屋から借りてきた電気スタンドの灯りを頼りに、家から持ってきた漫画を読みふけりながら、雨の音、風の音、家鳴りの音に胸がドキドキする。

 

それでも2、3時間もすれば、やがて眠気が勝ってくる。

 

少しずつウトウトとし始め、しばらく意識がプッツリと途切れたかと思った頃、俺はその奇妙な音を確かに聞いた。

 

「カアン、カアン」

 

雨と風と時々の家鳴りに混じって、そんな音が聞こえる。

 

小さな鍋底を棒で叩くというか、それよりはやや響きがあるというか。

 

音としては仏壇でお経を上げる時に使う、小さな木槌みたいなので叩く平たい鐘に近い感じだった。

 

それが、風のうなりや雨音が鳴り響く中の遠くから、だけどはっきりと聞こえてくる。

 

始めは自警団が見回りでもやってるのかな?と思ったが、時計を見ると既に午前の2時。

 

上手く説明は出来ないが、とにかく「何かおかしいな・・・」と思って部屋を出る。

 

俺が泊まっていた座敷は婆ちゃんの家でも奥まった場所で、とりあえず道路に面している玄関の方へ行ってみようと思った。

 

思ったのだが・・・、「カアン、カアン」、その音は何故か後の方から聞こえる。

 

振り返ると、そこにはカーテンの引かれたガラス戸があり、ガラス戸の向こうには裏手に広がる庭と、そして昼間に遊んだ川が見えるはずだ。

 

「カアン、カアン、カアン」

 

少しずつ音が近づいてくる気がして、俺は恐る恐るカーテンの隙間から外を覗く。

 

雨風の吹き荒れる庭と、背の高い壁に囲まれた川。

 

そして、「カアン、カアン、カアン」と、妙に響く鐘の音。

 

そのままじっと眺めていると、段々と音が近づいてきて、視界の隅で何かが揺れた。

 

・・・灯(あか)り?

 

川の方で小さな灯りがゆらゆらと揺れているのが見てとれた。

 

懐中電灯のような指向性のあるものではなく、まるで提灯(ちょうちん)か何かを下げているような、そんなぼやっとしたものだ。

 

川の深さのせいで、光源とそれを持っている何者かの姿を確認することは出来ない。

 

でも確かにそこからは灯りが漏れていて、それは少しずつ少しずつ川の中を進んでいっているようだった。

 

ゾクリ・・・と、背筋に寒いものが走る。

 

だが、同時にそれの正体を確かめたくもなった。

 

もしかしたら、夜回りの人が水が漏れていたりして危ない場所はないか調べているかも知れない。

 

いやいや、きっとそうであれば良いのに、と自分を納得させたかっただけなのかも知れない。

 

と、その時・・・、「○○くん、何しとるんや?」。

 

不意に後ろから掛けられた声に、俺は「ギャア!」と叫び出しそうになった。

 

それでも声が出なかったのは、逆にそれだけ恐ろしかったからなのだろう。

 

心臓をバクバクさせながら振り返ると、そこには爺ちゃんの姿。

 

「じ、じいちゃ・・・。なんか、あの、その、あれ・・・音・・・灯り?」

 

しどろもどろになりながら何とか状況を説明しようとするも、爺ちゃんは「ほれ、こっちこい」と、俺の手を取る。

 

ほとんどパニックになりかけていた俺は、導かれるままに爺ちゃんと囲炉裏のある部屋へと向かった。

 

爺ちゃんは俺を囲炉裏の傍に座らせると、その向かいに腰を下ろす。

 

その頃になると囲炉裏は既に現役ではなくなっていて、火棚や何やらは取り払われ灰を溜めておくスペースだけが残されていた。

 

そしてそこは、爺ちゃんの家での唯一の煙草飲み場であり、いつものように囲炉裏端に置いておいた『わかば』を引っ掴むと、ライターで火を灯し、ぷかりと煙をくゆらせる。

 

無論、その間も「カアン、カアン」という音は、台風の音にかき消されることなく響き続けていた。

 

「爺ちゃんの子供の頃からなあ・・・」

 

少しの間を置いて爺ちゃんが言う。

 

「何年かに一度、こういう雨風の強い夜になると、ああやって川を登ってきたもんでなあ」

 

「登る?」

 

「そうや、聞こえとるやろ?」

 

事も無げに言う。

 

「え、と・・・爺ちゃん、アレ何なの?」

 

俺の問いかけに爺ちゃんは、はてと首を捻り、「さてなあ。ただあの川はこの辺りを抜けたらそのまま海に繋がっとるからなあ。海から来とるんと違うかなあ」。

 

「何が?」と訊くと、爺ちゃんはやっぱり「さてなあ」と繰り返す。

 

「こ、怖くないの?」

 

俺が訊くと、爺ちゃんは「まあ、他に何するわけでもないからなあ」と、のん気なもの。

 

「・・・正体とか、知らんの?」

 

思い切って問いかけると、爺ちゃんはイヤイヤと首を横に振る。

 

「ありゃ川を登っていくだけや。それ以外はなんもせん。ならそれで良いんと違うかなあ。ほれ、もうあんなに遠くなっとる」

 

言われてふと気付く。

 

あの「カアン、カアン」という音は、随分と遠くなっていた。

 

「ここ三十年くらいはめっきり来なくなっとったけど・・・そうかそうか、今年は来なすったのか」

 

そう言う爺ちゃんの顔は、何だか懐かしいような、そんな表情をしていた。

 

結局、俺は何がなんだか分からないまま、爺ちゃんと一緒に囲炉裏端で一晩を過ごした。

 

あの音はいつの間にか聞こえなくなっていた。

 

先日、婆ちゃんの田舎に行った時、7歳になる甥っ子が川べりで遊んでいる姿を眺めていたら、なんとなくこの話を思い出した。

 

その時、隣に居た爺ちゃんに、「そう言えばあれから、アレはまた川を登って来たりしたんか?」と訊いてみた。

 

すると爺ちゃんは、「いいや・・・もしかしたらもう登って来なさらんのかも知れんなあ」と、寂しそうに答えてくれたので、少なくとも夢では無かったんだなと思う。

 

(終)

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