行方不明

行方不明になった幼なじみに起きた事 2/2

前回までの話はこちら

俺の母が受話器を取り、「とりあえずウチの人(俺の父)に電話してみる」と言い出した。

 

すると、ノリオの母が「先に警察に電話して!」と泣きながら叫んだ。

 

躊躇する母から電話の子機を奪い、俺に「今の話しホントやね?」と念を押し、俺が頷くのを見て110番通報した。

 

ただ興奮状態だった為、ノリオの母は俺の家じゃなく自分の家の住所を告げてしまい、取りあえず3人でノリオの家に移動することになった。

 

母は、「やっぱりお父さんに連絡する」と言って先に行くよう言い、家に戻った。

 

途中、ノリオの母はチッと舌打ちし、「○○さんにも電話しなきゃ」と一人呟いていた。

 

パトカーがやって来て、パトカーの中で話を訊かれたが、結局は俺とノリオの母、遅れてきた母と3人が警察署に連れて行かれ、繰り返し話をすることになった。

 

その日に警察署から解放され、家に帰って今日あったことを父に説明した。

 

すると父曰く、あそこは部落だという。

 

他の部落と違って、ある意味保守的で独自の組合(互助会)を作っている。

 

昔はよく近隣の集落と揉め事を起こしていたという。

 

また、あのおっさんのことも知っていて、名前をSといい、ウチの家系も古いが、Sの家も古くからあるはず、と言っていた。

 

そんな話を聞いていると、家の電話が鳴った。

 

ノリオの母だった。

 

なんと失踪2日目にして、ノリオがあの池の近くにいるところを警察に保護されたというのだ。

 

もう夜も遅いということで、俺は家に残され、父と母がノリオの家に向かった。

 

次の日に両親から聞かされた話だと、ノリオはだいぶ疲れた様子だったらしく、事実1ヶ月間学校を休んだ。

 

その間、俺はノリオと面会させてもらえなかった。

 

その後も俺と母は3回ほど警察署に呼ばれたが、当然新しい証言などなく、繰り返し説明するだけだった。

 

その都度、何か分かったことはないかと訊いてみたが、子供に詳しい話をしてくれるはずはなかった。

 

ただ、母は少し教えてもらったらしく、警察が言うには、男の家からノリオの滞在した痕跡も、件のビデオテープも見つからなかったという。

 

1ヶ月後学校に復帰したノリオは、外見上は特に変わった様子もなかった。

 

ただ、クラスが違うから実際に目にしてはいないけれど、保健の授業で急に号泣し、教室を飛び出したことがあったらしい。

 

それが原因ではないだろうけれど、あの失踪事件以後、ノリオに対して心無い憶測や中傷があった。

 

結局、ノリオは6年に上がる前に転校することになった。

 

登校再開後すぐに、ノリオに直接あのビデオのナレーションについて訊いてみた。

 

あのおっさんは本当に無関係なのか、と。

 

するとノリオは猛烈に激高し、聞き取れないほどの罵声を浴びせられた。

 

そういうことがあり、今は時期が悪いと距離を置いていると、その後ほどなくしてノリオの母は離婚し、ノリオとタカシを連れて地区から出て行った。

 

結局、ノリオとはそれっきりになってしまった。

 

大学生になった俺は、部落の組合に話を聞きに行った。

 

「郷土史の中の部落差別を調べているのでその話を聞かせて欲しい」と電話すると、快く承諾してくれた。

 

電話で聞いた住所に行くと初老の男性の自宅で、その人が話をしてくれるという。

 

親切な応対に少し気が引けたが、ノリオの失踪にSという男は関わっていないのか、そもそもSとは何者で、今どこにいるのか、単刀直入に訊いてみた。

 

応対してくれた初老の組合員は困惑していたが、話してくれた。

 

ノリオくんの失踪とSさんは関係ない。

 

Sさんの転居と、Sさんに対する警察の不当な家宅捜査が同時期だったのは偶然。

 

Sさんは行政保護を受けていないため、組合が生活の手助けをしていた。

 

Sさんは高齢知的障害者。

 

転居先は遠くの施設だが、場所は教えられない。

 

Sさんはすでに亡くなっている。

 

・・・というもので、期待したものは何も得られなかった。

 

しかし、無礼を詫びた後の帰り際のことだった。

 

5年ほど前、組合事務所にノリオの母が怒鳴り込みに来たことがあり、宥めるのに大変だった、という話を聞かされた。

 

俺は今でも、ノリオの失踪にSという男が関わっていると思っている。

 

今、ノリオがどこにいるか分からない。

 

でも、俺の幼なじみのノリオは、あの東京五輪のドキュメンタリービデオのナレーションとして未だ捕らえられたままでいる、なんて事を最近よく考えてしまう。

 

(終)

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行方不明になった幼なじみに起きた事 1/2

 

小学5年生の頃、アメリカでワールドカップが開催された。

 

だからというわけじゃないけれど、幼なじみのノリオ(仮名)とよく近所の公園でサッカーをしていた。

 

ある日、「たまには別の公園でやろう」ということになり、自分たちの行動範囲外のまだ行ったことのない公園に行ってみることになった。

 

その公園は昼間でも薄暗くジメジメしていて、何となく神社の敷地を思い起こさせた。

 

俺もノリオも、その薄気味悪い雰囲気がたいそう気に入り、かなり遠いにもかかわらず自転車で度々遊びに行くようになった。

数日後に事件は起きる

何度目かのある日、ノリオとその2歳下の弟のタカシ(仮名)とその公園で遊んでいると、50歳くらいのおっさんが近寄ってきた。

 

髪は長く黒々としていたけれど、シワが深くて歯がボロボロで、よだれの臭いをさせていたのを覚えている。

 

そのおっさんと何を話したのかは忘れてしまったけれど、その日は3人でおっさんの家に行くことになった。

 

おっさんの家は公園のすぐ側で、通された部屋の窓からは、さっきまでいた公園が見えた。

 

部屋にはテレビがあり、ノリオが勝手にスイッチを入れてチャンネルを変えたりしていた。

 

俺はおっさんのことを、その雰囲気から知的障害者だと思っていた。

 

それはノリオも同じだった。

 

おっさんは、「ビデオがあるから見よう」と言い出した。

 

ノリオからリモコンを受け取ると、画面を切り替えた。

 

テープは予めセットしていたらしく、すぐに再生された。

 

それはかなり古いビデオで、内容は東京オリンピックにまつわるドキュメンタリーだった。

 

会場の建設風景や土地の区画整理、交通網の見直し作業などの様子をナレーションが説明していた。

 

なにぶん昔の事だから、そのビデオの断片しか覚えていないところが多い。

 

ただ競技やその結果も盛り込んだ内容のため、オリンピック終了後数年してから当時を振り返る形のドキュメンタリーだったのではないかと思う。

 

しかしそれであっても、古いビデオであるのは間違いないと思う。

 

最初、そのナレーションは普通の男性の声だったけれど、20分くらい経った頃に音が飛んで画面が暗転し、しばらくして画面は正常に戻るが、ナレーションが子供の声になっていた。

 

後から無理矢理に加工したものだとすぐに分かった。

 

子供の声も素人らしかった。

 

「これ、おっちゃんの子の声」

 

そうおっさんが嬉しそうに、俺やノリオを見て言う。

 

へ~とか、そうなんだとか、当たり障りのない返事をしたが、この古いドキュメンタリーを編集して自分の息子の声に変えるという無意味さと、その気色の悪さに鳥肌が立った。

 

ノリオもタカシもそう思ったのか、おっさんに話しかけられた顔が引きつっていた。

 

なおもビデオは続き、結局1時間半くらい見ていたと思う。

 

おっさんは、ビデオを熱心に見ているフリをしている俺たちの顔を、終始満足気に眺めていた。

 

もう辺りも暗くなったという事で、「親が心配している」などと言って、半ば逃げるように帰った。

 

帰り道、もうあの公園には行けないかもなぁ、と話した。

 

そして数日後、事件が起きた。

 

ノリオが夜の8時を過ぎても帰って来ないというのだ。

 

ノリオの母から心当たりはないかと訊かれ、真っ先にあの公園とおっさんが浮かんだが、あれ以来俺もノリオも公園には近づいていない。

 

その証拠に、失踪当日ノリオは、弟のタカシと近くの池にザリガニ釣りに行き、タカシに先に帰るように言ったきり行方不明になったらしい。

 

普通に考えれば水難事故だが、その池は天気次第ですぐに干上がるような水溜り程度の池で、当日もやはり膝下以下の水位しかなかったという。

 

即日、池さらいが行われたが、やはり何も見つからなかった。

 

俺は、“絶対にあのおっさんが関係している”と思ったが、大人たちには言い出せなかった。

 

もし関係が無かったら、あのおっさんは知的障害者だから差別だと大問題になる・・・なんてことを考えたからだ。

 

ノリオ失踪の次の日、意を決しておっさんの家に向かった。

 

あまりの緊張のため、どういう経緯でおっさんの家に上がれたか、実のところよく覚えていない。

 

しかし、とにかくおっさんの家に着いた俺は、目論んだ通り家に入ることに成功した。

 

そして予想はしていたが、やはり「ビデオを見よう」と言う。

 

満面の笑みでリモコンをいじっているおっさんに、「ノリオは来てない?」とさり気なさを装って訊いた。

 

「前に一緒に来てたヤツなんだけど・・・」

 

おっさんは心底無関心な顔で「知らない、来てない」と答え、テレビの画面が切り替わると、パッと笑顔になった。

 

そして、お待ちかねのものが始まったぞとばかりに画面を指差す。

 

やはり、前回と同じ薄気味悪いドキュメンタリーが始まり、またあの子供のナレーションを聞くのは憂鬱だなぁと思いながらビデオを見ていた。

 

そして、前回と同じ所で音が飛んだ。

 

画面が潰れ、暗転。

 

そろそろナレーションが切り替わると身構えていたにも関わらず、心臓が飛び出るかと思った。

 

この前に見た時の子供のナレーションが”ノリオの声”に変わっていたのだ。

 

意味不明の出来事にパニックになったが、ノリオの声が少し震えているようだったのが忘れられない。

 

とにかく早く逃げようと、震える腰を浮かした俺に、おっさんが嬉しそうな顔で「これおっちゃんの子」と言うのだ。

 

もう俺は限界を超え、小便を垂れ流しながら玄関まで走った。

 

走って自転車に飛び乗って、立ち漕ぎで逃げた。

 

最短距離で家に向かわず迂回して家を目指したのは、恐怖で混乱しつつも、あの男に家がバレるのはマズイと思ったからだ。

 

家に着くとすぐ母に事の顛末を話し、イマイチ懐疑的な顔をするのでノリオの家に電話したところ、ノリオの母がウチに飛んできた。

 

公園でおっさんに話しかけられ家に行ったこと、家でビデオを見せられたこと、そのビデオのナレーションがおっさんの子供であるらしいこと・・・

 

そして、今日見せられたビデオのナレーションがノリオの声に上書きされていたこと、ノリオの声を自分の息子と言ったこと、全てを説明し、ノリオはあの家にいるかも知れないと涙ながらに訴えた。

 

ノリオの母も興奮状態で泣きながら聞いてくれた。

 

(続く)行方不明になった幼なじみに起きた事 2/2

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先輩がいつも練習している部屋で

 

大学で実際にあった洒落にならない話。

 

俺の通っている大学は、山のてっぺんにある。

 

町から相当隔離された場所にあり、最寄のコンビニですらジグザグの山道を通って車で片道10分はかかってしまう。

 

そんな環境であるため、サークル活動や研究室などの特殊な用事でもない限り、遅くまで大学に居残る学生はほとんどいない。

 

しかし、10棟程度に分かれている大学校舎の中の一つに『音楽棟』という建物があり、そこでは夜遅くまで学生がヴァイオリンやピアノ等の楽器を練習している。

 

音楽棟には50以上の個室の全てにピアノが一台ずつ入っているのだが、学生はそれぞれ自分なりにお気に入りの個室があるようで・・・。

あの女はどこの誰なのか

その日の夜、俺は音楽棟で楽器の練習をしていた。

 

時刻は21時半頃だった。

 

終バスが22時なので、そのくらいの時間になると学生の数はかなり減っている。

 

山中であるため、終バスに乗り遅れると下山は困難を極めるのだ。

 

俺もそろそろ帰るかと思ったその時、やや離れた場所から「ドカッ!」と何かがぶつかるような音がした。

 

誰かが楽器でも落としたのだろうかと思ったが、あまり気にせず個室を出ようとすると、またもや「ドカンッ!」という音がした。

 

さてはアレだなと思った。

 

音楽棟はだいぶ老朽化しているため、壊れているドアがいくつかある。

 

ある程度ちゃんとした校舎を持つ学校に通う学生には信じ難いかもしれないが、この大学では運が悪いと自力で個室の中から出られなくなることもしばしば起こるのだ。

 

部屋の中からドアを開けようとしている音に違いない。

 

前にも閉じ込められた友人を救出した経験があったからこそ確信があった。

 

すぐさま音のした個室の方へ行って、個室にある窓から中を覗いてみる。

 

案の定、ドアを何とか開けようとしている学生らしき姿があった。

 

「今開けますよ~」と一声かけてから、ドアノブをやや強引に捻って開けた。

 

「ありがとうございます。出ようとしたらドアが開かなくなっちゃって・・・」

 

初めて見る顔だった。

 

音楽棟に夜遅くまで残って練習している人間は大体把握できているつもりだったが、目の前にいるのは全く知らない女の子だった。

 

他大生だろうか・・・?

 

原則として学外の人間は個室を使っていけない事になっているが、まぁいいかと思い、「練習お疲れ様です」と言った。

 

その時、本当に一瞬の事だった。

 

その女の子の表情が歪み、恐ろしい顔つきになったのだ。

 

そして、さっきの顔が嘘だったように一瞬で元の表情に戻った。

 

「ここ、私のお気に入りの部屋なんです」

 

「え?そうなんですか?」

 

俺は喋りながら変な違和感と緊張を感じていた。

 

何かこの女、おかしい・・・。

 

今の顔は何だったんだ?

 

いや、それ以前にもっとおかしな事がある。

 

「ずっと使っていたんですけど、いきなり開かなくなったからびっくりして・・・」

 

そんな事は聞いていない。

 

お気に入り?

 

誰の・・・?

 

「本当にありがとうございました」

 

そう言ってその女はスタスタと歩いて行ってしまった。

 

俺は結局、何も聞けなかった。

 

この個室の番号は『31』。

 

俺のよく知る先輩がいつも練習している部屋だった。

 

いつも夜遅くまで練習している努力家で熱心な先輩。

 

その先輩が居なくて、知らない女がいた。

 

俺はどうしても気になって、すぐに携帯電話で先輩に聞いてみることにした。

 

意外にもすぐに繋がった。

 

どうやら今までずっと学外で過ごしていたとの事だった。

 

授業は1コマから入っていたそうだが、どうも気が進まなくて・・・と曖昧な返事だった。

 

そこで練習室の女の事を言ってみた。

 

先輩はしばらく絶句していたが、重い口調で話してくれた。

 

「誰にも言うなよ・・・。昨日、脅迫を受けたんだ」

 

話によると、昨日の夜、アパートで一人暮らしの先輩が家に帰宅すると、郵便受けに大量の紙が詰まっていた。

 

何十枚もの紙の全てに、『学校に来るな』と一言、印刷されていた。

 

気味が悪くなって学校には行かず、一日中、町に下りて過ごしていたそうだ。

 

警察に届けようと思ったが、思いとどまっていたらしい。

 

「あの女って誰なんですか?心当たりなどは?」

 

「いや、あるわけない。ないけど、お前の話を聞いて余計に怖くなった。とりあえず何とかしようと思う」

 

その会話を最後に、俺は今に至るまで先輩に会っていない。

 

アパートは空っぽ、実家への連絡すら1年以上もない状態らしい。

 

完全に失踪してしまった。

 

もちろん、あの女ともあれ以来、会っていない。

 

先輩の友達が親御さんに何度か尋ねてみたらしいが、「まだ帰って来てない」との事。

 

アパートは家賃が無駄だからと既に手放していて、当てにしていないが捜索願いも提出済みらしい。

 

先輩は音楽系の2つのサークルを掛け持ちでやっていて、学外での人間関係の幅が広かったから、周囲の人達も不審に思っていた。

 

あの時の女がどこの誰で、個室で一体何をしていたのか、今でも分からない。

 

(終)

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遊びの最中に消えてしまった従兄弟

 

子供の頃、毎年夏休みになると、お爺ちゃんの家へ泊まりに行っていた。

 

お爺ちゃんの家は島根県の山奥で、周りの集落はほとんど親戚みたいな感じだった。

 

そこには僕と同い年くらいの従兄弟が何人もいて、いつもみんなで一日中遊んでいた。

 

僕が小学6年の時、従兄弟たちと缶蹴りと鬼ごっこが混ざったようなルールの陣取り遊びをしていた。

 

お爺ちゃんの家の敷地は馬鹿みたいに広く、隠れるところも沢山あった。

 

僕は物陰で2つ年下の信二と隠れた。

 

僕が先に飛び出しておとりになり、その間に信二が相手の陣地を取る作戦を立てた。

 

そうして僕は大声を上げながら敵陣に向かって突進した。

信二は帰れずに彷徨っている

陣地を守っていた敵が僕を捕まえようと走り出したのを見てから信二が敵陣に突進したが、寸前のところで敵に気付かれ、信二はUターンして逃げ出した。

 

敵の従兄弟の方が逃げる信二より数段足が速く、信二がすぐ近くに建っていた蔵の裏に逃げ込もうとした時には捕まる寸前で、二人はほぼ同時に蔵の裏へ消えていった。

 

その隙に、僕は楽々と相手陣地を取ることが出来た。

 

僕が相手陣地に立って大声で歓声を上げると、隠れていた従兄弟たちがゾロゾロと出てきた。

 

蔵の後ろから信二を追いかけていた敵の従兄弟も出てきたが、信二は居なかった。

 

「信二は?」と僕が訊くと、その従兄弟はぽかんとした顔で「消えちゃった」と答えた。

 

その従兄弟が言うには、手を伸ばせば届くくらいの目の前を走っていた信二が、蔵の角を曲がった途端に居なくなってしまったという。

 

僕も二人が蔵の裏に走って行くのは見ていたので、僕達は蔵の裏まで行ってみたが信二はどこにも居なかった。

 

僕達が隠れるところは大体決まっていたので色々探してみたけれど、結局は信二を見つけられなかった。

 

日が暮れ始める頃になると大人達もだんだん騒ぎ出し、集落のみんなが懐中電灯を持って裏山や近所を捜索し始めた。

 

僕達はお爺ちゃんの家に集められ、留守番をさせられた。

 

重苦しい空気の中、従兄弟が「見つかるはずないよ。消えちゃったんだよ・・・」と、いつまでも泣きながら言っていた。

 

その後、警察がやってきて事情を訊かれ、僕達はあるがままに答えた。

 

警察は怪訝な顔をしていた。

 

その日の夜中、どうしても我慢出来ずに便所に起きた。

 

広間からは明かりがもれていて、大人たちの話し声が小さく聞こえていた。

 

ちょっと安心して便所で用を足していると、静けさの中に何だか信二の声が聞こえるような気がしてきた。

 

僕の心臓の鼓動は段々と大きくなってきて、用を足し終える頃には鼓膜の横にある血管がドクンドクンという音の合間に、はっきりと「助けて!」という信二の声が聞こえていた。

 

僕は絞り出すように信二の名前を呼んだ、ような気がする。

 

すると信二は、「誰?見えないよ。ここはどこなの?」と答えた。

 

声はまるで四方の壁から聞こえてくるようだった。

 

おそらく本当は、全て恐怖からくる僕の頭の中での想像の会話だったのかも知れない。

 

便所を出た僕は、その後は朝まで大人達と一緒に居てもらった。

 

翌日もみんなが総出で古い井戸や汲み取り便所の中まで探したが、信二は見つからなかった。

 

警察は不審者の目撃情報なんかを集めていて、誘拐と事故の両方で調べていた。

 

僕達の意見は当然ながら無視された。

 

そして、僕は予定より早く東京へ帰ることになった。

 

帰る日にお爺ちゃんの家の縁側から庭を見ていたら、お爺ちゃんが飼ってた犬が尻尾を丸めて怯えたように蔵の壁に向かって吼えていた。

 

さらに、犬は気が狂ったように蔵の下の土を掘っていた。

 

その後も犬の様子があまりにもおかしいので、その蔵は解体され、蔵のあった周りの土を1メートルほどの深さを掘って調べてみたが、何も出なかったらしい。

 

翌年、僕は中学生になり、夏休みにお爺ちゃんの家へ泊まりに行くのはやめた。

 

信二の消息は不明のままだ。

 

もう10年も前の話だけれど、未だに信二はどこか別の次元で生きていて、帰れずに彷徨っているような気がする。

 

(終)

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行方不明になったお婆ちゃんの捜索

 

大学を卒業して地元に帰ったら、消防団に入れられた。

 

俺は妙なところで引きが強いようで、行方不明者の捜索に出ると、死体の第一発見者になった事が既に二度もある。(一人は水死体、一人は首吊り)

 

火災現場でも、煙に巻かれて亡くなった子供とお婆ちゃんを発見したり。

 

学生時代にも、後輩がアパートのベランダで首を吊っているのを第一発見した。

 

首吊りの遺体を人生で二度も見る事なんてあるだろうか。

 

そんな俺が消防団で体験した、少し謎めいた話。

おばあちゃんを捜しています

その日は朝早くから、行方不明となっていたお婆さん(70歳くらい)の捜索が行われた。

 

居なくなったのは、前日の早朝。

 

同じ敷地内に住む長男家族がお婆さん宅を訪れた時、朝食のご飯が炊かれた状態で炊飯器の中にあり、味噌汁もまだ温かいままだった。

 

「近所の商店まで買い物に行ったのだろう」

 

そう考え、その時は特に気に留めなかった。

 

しかし、午後になっても家に帰って来る様子はなく、お婆さんの家の朝食も食べられずにそのままだった。

 

夜になっても帰って来ないので、慌てて警察に連絡したそうだ。

 

その日の夜は消防と警察で夜間捜索が行われたが、お婆さんを発見出来ず、翌朝になって俺達地元の消防団、総勢120名を動員しての一斉捜索が行われる事になった。

 

家族の談では、お婆さんは足が弱く病院に通っていた。

 

いつも押し車のような歩行器を使って歩いている。

 

だからそれほど遠くまで歩いて行けない。

 

日頃はせいぜい近所の小店に行く程度。

 

家には歩行器は無く、外出用の靴が一足無くなっていた。

 

着ていた服は、普段よく着ているシャツにズボンだろう、という。

 

それほど遠くに行けないはずなので、事故にせよ、自殺にせよ、すぐ見つかるだろうと思っていた。

 

が、4時間捜しても手掛かり無し。

 

地元は結構な田舎で、山の中とか海辺とか、お婆さん宅の周辺を道無き道まで捜索した。

 

徒歩で出掛けていない可能性も考え、地元のタクシー会社や交通機関の全てに連絡したが、それらしい情報は無かった。

 

交通事故に遭い、加害者が死体を隠したのか?

 

そういった可能性も高くなったが、警察が何処を捜しても事故の痕跡は無い様だった。

 

結局、2日間に渡って行われた捜索で、お婆さんを発見する事は出来なかった。

 

それから1年と少し経ち、その件も忘れかけた頃だった。

 

警察が作った顔写真入りの捜索願の張り紙も随分と色あせ、お婆さんのお孫さんが手書きしたものをコピーしたと思われる『おばあちゃんを捜しています』の張り紙も、文字が読めないほどになっていた。

 

そんな頃、警察にお婆さんの目撃情報が大量に寄せられた。

 

「背格好も顔も服装も、歩行器を押して歩いている姿も、行方不明になっているお婆さんに違いない」という電話が。

 

ところが、目撃情報が寄せられる場所がバラバラで、お婆さん宅の周辺から十数キロ離れた場所まで広がっていた。

 

警察も情報に基づいて捜索を再開したが、発見に至らなかった。

 

ただ一つ共通していたのは、その目撃現場の近くには、必ずお孫さんが書いた張り紙が掲示してあったという事。

 

そして、その手書きの張り紙全ての一番下、空白の箇所に鉛筆で一言『おります』と書き足してあったという事。

 

未だにお婆さんは見つかっていないが、家族も警察も既に諦めている様子。

 

ちなみに、その『おります』という書き足しは、鍵の掛かるガラスタイプの掲示板に張られた紙にも書き込まれていた。

 

『おります』の意味は、きっとお婆さんがお孫さんに対して「いつも傍に居て見守ってるよ」と言っているんだと勝手に解釈しています。

 

(終)

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悪ガキ仲間たちの「探検ごっこ」にて

 

30年以上も昔の話です。

 

場所は東京都の近郊。

 

とても怖くて悲しい思い出です。

 

僕は小学校低学年の頃、近所の悪ガキ仲間たちと『探検ごっこ』をしていました。

 

僕と従弟、それに隣の悪ガキと近所の悪ガキの4人であちこち行きました。

 

まだ埋められていない防空壕の跡や川原の茂み、大きな公園の奥の森の中。

 

子供の僕たちには広大な未知の空間でした。

 

お約束のエロ本なども落ちていて、まさに冒険でした。

 

公園のそばに古い民家(廃屋)があり、わりと大きな屋敷でした。

 

「夏休みにソコを探検しよう!」ということになりましたが、その時に隣の悪ガキが家族旅行で不在だったので3人で探検することに。

3人のうち1人が帰らぬ人に・・・

屋敷の門は鎖で閉じられ“立ち入り禁止”と書かれていたので、生垣の隙間から潜り込みました。

 

生垣で囲われた庭は背丈を超える雑草で覆われ、鬱蒼(うっそう)とした感じ。

 

建物は一部が崩壊していて、今にも朽ち果てる寸前でした。

 

家の周囲をひと回りすると雨戸が外れている場所があり、そこから屋敷の中へ入りました。

 

カビ臭い室内。

 

腐った畳は底が抜けそうな程で、ゴミも散乱していました。

 

タンスがあったので何気なく開けて見たりしていると、奥の部屋からなにやら物音が・・・。

 

襖(ふすま)を開けると、中年の女性が座っていました。

 

その女性は汚れきったグレーの浴衣姿で、恐ろしい顔をしてこちらを睨んでいました。

 

敷かれた布団の上に座り、青白い顔で僕たちを睨み続けています。

 

僕は何故か、“殺される・・・”と思いました。

 

僕たちは「スイマセン!」と叫び、慌てて逃げ出しました。

 

表へ出ると、いつの間にか外は真っ暗に。

 

僕たちは各々一目散に家へ帰りました。

 

そして不思議な事に、探検に出発したのは昼飯を食べたすぐ後で、探検していたのはせいぜい十分くらい。

 

ところが、家に帰ると夜の八時を回っていました。

 

僕はたっぷり叱られました。

 

しばらくすると近所の悪ガキのお母さんが来て、「うちの子供が行方不明なのよ。知らないかしら?」と話しているのが聞こえました。

 

僕と従弟が事情を話すと、親たちは廃墟の屋敷へ捜しに行きました。

 

しかし、その屋敷には誰もおらず、その子も見つからないまま翌日になりました。

 

朝になってから警官がうちへ来て、色々と事情を訊かれたりしました。

 

そしてその日の午後、公園の池に沈んでいるのが発見されました。

 

夏休みが終わる頃、廃墟の屋敷は取り壊されました。

 

僕たちがあの時に見た中年の女性は一体何者で、そもそも時間が急激に進んだ事も理解出来ていません。

 

(終)

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会社に届いた俺への名指しの手紙 2/2

前回までの話はこちら

応接室に通され、そこで手紙を見せる。

 

女「○○○の文字です・・・。でも返信用封筒が刑務所の住所だなんて・・・私にも分かりません・・・。でもあの子は大人しい子ですからその人とは違うんです・・・」

 

その後に続いた会話での彼女の弁を信じるのなら、○○○とは、高校卒業後に引き篭もるようになり、大人しく優しく、でも人を怖がって彼女ですら部屋には入れたがらなかった、という人らしかった。

 

二十後半の年齢はネットで調べた受刑者のものと一致していたが、それには触れられなかった。

 

女「マスコミの方なら○○○の居場所を調べられるんじゃないんですか?お願いします。もう一度会わせて謝らせて下さい。お願いします」

 

急に目をむいてそう言い始めた彼女に、自分には一般人が出来る事しか出来ない事を前置きした上で、分かった事があったら連絡致しますと伝えた。

 

俺「○○○さんの部屋、もし宜しければ見せて頂けませんでしょうか?」

 

恐る恐る訊いてみた。

 

彼の記した別の文章があれば、自分で筆跡を照らし合わせる事も出来るし、何かしらのヒントがあるかも知れないと思ったからだ。

 

一瞬躊躇いの表情を浮かべはしたが、「はい・・・そうですね・・・でも○○○には内密にお願いします」。そう言って彼女は二階へと俺を促した。

その”部屋”に居ることに限界を感じた

確か三部屋あった二階は、どの部屋もドアが閉められていて廊下は薄暗かった。

 

一番奥の部屋へと通された。

 

古いタンスと押入れがあるだけの部屋だった。

 

何も無いじゃないか。

 

引き篭もりと聞いて、想像していたPCや本で埋もれた部屋とはあまりに違い、思わず尋ねた。

 

俺「ここが○○○さんのお部屋なんですか?」

 

女「いえ・・・・・・あの・・・こちらが・・・」

 

彼女が指差したのは押入れ。

 

その時点で体が震え出したが、その後に襖(ふすま)を開け、声が出そうになった。

 

彼の部屋は押入れでもなかった。

 

押入れの中には、宗派は分からないが恐らく仏教系の御札があちこちに貼ってあった。

 

血の気が引く思いで彼女の一歩後ろからそれを眺めていると、彼女が言った。

 

女「この・・・天井裏が・・・○○○が好きだった部屋なんです」

 

彼女は懐中電灯で押入れの天井を照らすと、天板の一枚を押し上げた。

 

その板だけが、貼り付いた御札が切れていた。

 

女「どうぞ・・・」

 

覗く様に促される。

 

俺は逃げ出したかった。

 

でも、既に理解不能な状態と展開に頭が付いていけてなく、今思うと朦朧(もうろう)としたような形で押入れに入り、その天井の穴に顔を入れた。

 

人が住んでいたのだから当然なのだろうが、天井裏のスペースにも小窓が付いていることに驚いた。

 

薄暗い。

 

だけど見える。

 

後ろで何かが動いた気配がした。

 

慌てて振り返ったが何もおらず、彼女は押入れの外にいる。

 

霊感などは全く無い自分だから、恐怖から来る幻覚だったのだと思ったが、それでも震えは強くなった。

 

何かに押されるようにして完全に“部屋”に上がり、見渡してみた。

 

小学校の教科書、テディベア、外国製らしい女の子の人形、漫画が何シリーズか、その辺りが置かれていたのは覚えている。

 

机や椅子の類は無く、収納家具も無く、ただ床に物が置かれているだけ。

 

求めていた彼の直筆の物は無いようだった。

 

急な頭痛と吐き気があった。

 

とにかくここは何かおかしい。

 

彼女も普通ではない。

 

正直、後ろから彼女が奇声をあげて襲って来るのではないかと言う”妄想”すら頭を過(よ)ぎったし、”部屋”にいることに限界を感じた。

 

お礼を言って、天板を戻す時に手が滑り、板が斜めにはまった。

 

それまで気付かなかった板の上側が目に入った。

 

木目ではなかったと思う。

 

爪?

 

彫刻刀にしては浅く、線も歪んだ彫り・・・。

 

引っ掻き傷のようなものが見えた。

 

少量の嘔吐物が口まで上ってきて、それを無理矢理に飲み込んだ。

 

俺「今日はありがとうございました」

 

本来なら「何か分かりましたらお伝えします」と繋げるべき挨拶も、繋げる気がしなくなっていた。

 

一階も、今思えば応接間以外のドアは閉ざされていたし、その応接間も恐らく元々二部屋だったのものをリフォームで一部屋にしたような広さだったが、中央にアコーディオンカーテンが引かれていて半分は見えなかった。

 

その日はそのまま帰り、酒を煽って寝た。

 

何一つ解決していないし、気になる事もあの家にまだあるけれど、もう行く気がしない。

 

去年の十二月にあったこの事が今でも怖い。

 

彼女からは一月に一通だけ手紙が届いた。

 

年始の挨拶ではなく、「もう一度来て今後のお話をしませんか?」と言う内容と、「○○○が中三の頃にイジメに遭い、それでも元旦に親戚で集まった時に皆と話して元気になって卒業と進学が出来た事から一月は好きな月なのです」というエピソードが添えられていた。

 

嘘ではあるが、転勤の可能性をほのめかして今後は余り力になれない事をお詫びする文面で返事を出し、それ以来は何も無い。

 

訪問した際に渡した“名刺”が非常に悔やまれるし、その辺で歩く時も必要以上に周囲を気にしてしまう。

 

名前を出す仕事をしている人は本当に気を付けて下さい。

 

真相がはっきりしないままの長文にお付き合い頂き本当にありがとう。

 

(終)

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会社に届いた俺への名指しの手紙 1/2

 

去年の暮れ、会社に一通の手紙が届いた。

 

編集プロダクションに勤めている俺への“名指し”の手紙だった。

 

手紙を読むと、自分のエッセイを読んで添削して欲しい事と、執筆指導をして欲しい事の二点が主な内容だった。

 

奥付(本の最後の出版社や発行者、編集者などの名前が載っている部分)で名前でも見たんだろうかと思いながらも、初めての事態に少々不信感を抱きながら返信した。

 

持ち込んでくれれば読むが、その後も個別に指導を続けるのは無理である旨を伝えた。

 

その翌日、宅配便の担当者から「宛先に該当する人がいない」との電話を受けた。

 

その言い回しに若干の違和感を覚え、詳しく訊いてみると、その宛先は北関東にある刑務所だった。

奇妙な話になっていった挙句に

同封されていた返信用封筒に記されていた住所をそのまま書いたのだが、意外な展開に戸惑い、差出人の名前で検索すると傷害事件で逮捕された男の名前だった。

 

収容された場所がそこである事はネットで調べた限り確かな様だったが、既に出所している人物だった為、誰かの嫌がらせの線をまず疑った。

 

あらためて封筒を見てみると、二つの事に気が付いた。

 

①、封筒に書かれていた差出人の住所と、返信用封筒に書かれていたそれが違う場所である事。

 

②、封筒と便箋に使われていたペンが別物である事。(筆跡は見た限りでは同一の様)

 

二つ目の意図と意味は上手く推測出来ず、とりあえず誰かにからかわれたような気になり、よせばいいのに封筒の方の住所へ改めて返信をする事にした。

 

正直、怒りの気持ちもあったが、恐怖もあった為、そういう気持ちは表さずに形式通りのビジネスレター的な書き方にした。

 

その四~五日後に返信が届いた。

 

封筒の裏を見ると、前回と同じ住所。

 

あの受刑者と同じ名前で届いた事に少々怯えつつ封を開き、次の文を見て血の気が引いた。

 

『○○○は、もう三年も家に戻っておらず捜索願を出しているのです。もし居場所をご存知なら、お願いですから教えて頂けませんでしょうか』

 

ネットで見た限りでは、言い渡された刑期と確定判決の出た時期から考えて、出所は去年の夏辺りのはずだった。

 

特赦や恩赦や仮釈があったにしても三年前は早すぎる。

 

※特赦(とくしゃ)

恩赦の一種。特定の者に対して行われる刑の免除。

 

※恩赦(おんしゃ)

裁判できまった刑罰を、特別な恩典によって許し、または軽くすること。

 

三年間服役していて家に居ないのであれば、それを捜索願出す訳も無いし、もし仮に親が知らないうちに息子が服役してたにしても、その捜索願を受けた警察側で彼の現状は分かるはずだと思った。

 

同姓同名の別人なのか?

 

それとも他の理由があるのか?

 

ここで終わらせたい気持ちと真相を知りたい気持ちに揺れて、俺は手紙に書かれていた電話番号に電話を掛けてみる事にした。

 

固定電話で市外局番を見る限り、送り元の住所と一致していたし、恐らく母親だと思われる書き手の文は嘘には思えなかった。

 

聞きたい事は主に三つ。

 

①、息子さんは過去に傷害事件(実際は併合罪であったが詳細は省く)で服役していたのか?

 

②、もしそうなら出所はいつだったか?また三年より前の足跡は把握しているのか?

 

③、彼は文筆活動を志している人間だったのか?

 

いきなり不躾(ぶしつけ)な質問揃いだったが、こっちも片足を突っ込んでいるので知りたい気持ちが強かった。

 

予想通り年配の女性の声が聞こえ、そして質問をぶつけてみたが・・・。

 

女「○○○は大人しい子で、そんな暴力沙汰なんて考えられません・・・。三年前と言いましたが、居なくなったのに気づいたのが三年前なんです」

 

女「ずっと家に篭りっきりの○○○が、部屋の前に運んだ食事に手を付けなくなり、そういうことは・・・時々はあったのですが・・・それが続いて思い切って部屋を覗いてみたら居なくなっていて・・・」

 

女「学生時代の連絡網、全員に電話してみたんですけど、誰も知らないって・・・。頭の良い子ですから作文は好きでしたし成績も良かったので小説は・・・部屋の中を見なかったので分かりませんが・・・」

 

女「居なくなって・・・やっと○○○のお友達から手紙が着たと思ってお返事しましたのに、暴力事件だなんて酷すぎます!」

 

もちろん、こちらの経緯と「お聞きし難い事ですが止むを得ず」と言う旨は伝えたのだが、徐々に声が上ずってきていた。

 

非礼を詫び、「私も真相が知りたいのです」と食い下がり、手紙が本人の物であるかどうか見てもらう話を取り付けた。

 

その住所は都内だった為、その週の土曜日に俺はすぐにそこを訪れた。

 

声のヒステリックさとはイメージの違う、意外と普通の四十後半ぐらいの女性がドアを開けてくれた。

 

(続く)会社に届いた俺への名指しの手紙 2/2

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