謎怖 24巻

はっきりとした夢を見ると

 

始めに、俺には霊感は無いし、もちろん霊体験の類も経験したことが無い。

 

それが初めて起こったのは高校生の時なんだけれど、その日は珍しくはっきりとした夢を見た。

 

朝礼は普通だった。

 

一限は数学だったけれど、前回の続きをやっていた。

 

普通に学校へ行って、普通に授業を受ける夢だったけれど、目が覚めたら授業開始の時間が過ぎていた。

 

つまり、実際は寝坊で遅刻だ。

 

とりあえず慌てて準備をし、学校には「今から行きます」と連絡を入れ、二限にはなんとか間に合った。

もし、『俺』に会っていたら・・・

学校に着いてからはまず職員室へ行き、担任に「すみません。寝坊で遅刻しました」と言った。

 

すると、担任は「はぁ?朝礼おったじゃろ?」と言う。

 

「いや、寝坊して今来たばかりです。一限も出てないです」と言って、とりあえずその場はそれで済んだ。

 

一限が終わってから教室に入り、友達に「俺、朝礼の時おった?」と訊くと、「はぁ?一限受けとったじゃん。その後なんか知らんけど、カバン持って出て行ったじゃん」と言われた。

 

そんな訳は無いので、「いやいや、俺寝坊して今来たばっかだし」と言って、その友達と一緒に何人かと話してみた。

 

すると、それは間違いなく『俺』だったし、確かに一限の授業には居たという事だった。

 

気味が悪いのでその話をやめて、一限の数学の授業内容を訊いてみた。

 

それが、一限の数学でやったところも、夢と全く同じだった。

 

もう考えたくなくて何も言わなかった。

 

俺が見た夢は一体?

 

この出来事が何なのか、まるで分からない。

 

夢で見たのは一限の授業を受けるまで。

 

でも、クラスメートが見た『俺』は、一限が終わって教室から出ていくところまで見ているらしい。

 

担任を始め、クラスの人間から遅刻した罰に担がれた、とその時は考えていた。

 

しかし、なぜかこのような現象が、それから一年に一度くらいある。

 

条件は、「はっきりとした夢を見る事」らしい。

 

一番最近では、今は一人暮らしをしているんだけれど、実家でテレビを見てる夢をみて、目が覚めたら妹から「今どこおるん?」と電話がかかってきた。

 

当然「こっちの家におるよ」と答えたら、「はぁ?ついさっきまでこっちにおったじゃん」と言われた瞬間、「あぁ、またか」と思った。

 

生霊なのか、ドッペルゲンガーなのか、未だにそれの正体は分からない。

 

ただ、一番最初にそれが起こった時、俺は一限終了少し前に学校に着いて、そのまま職員室へ行って、先生と話しをして、一限後の休憩に入ってから教室に向かった。

 

教室に居た『俺』が去ったのは、一限の終了後。

 

もしあの時、授業が終わる前に教室へ行ってたら、『俺』はまだ居たのだろうか。

 

もしも、その『俺』がまだ居て、会ってしまってたらどうなっていたのか。

 

そう思うと、心底ゾッとする。

 

(終)

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姉は何を望んでいるのだろうか

 

俺の今の親父は2人目だ。

 

親父は母と結婚する時、娘を一人連れて来た。

 

俺の姉になったその娘は、数年のうちに結婚し、子供が出来た。

 

しかし、しばらくしてから精神的におかしくなっていった。

 

当然、こんな母親の姿を息子に見せるわけにもいかず、婿は仕方なく離婚を提案した。

 

姉は「息子の面倒をみる」と引かなかったが、鬱病の姉の言うことを聞き入れられるはずもなく、息子は婿に引き取られた。

 

それからの姉は、ヘアピンで手首を切ろうとしたりと奇行をするようになった。

 

そして、それからしばらく経ったある日、姉は首を吊って自殺をした。

 

死ぬ間際、婿にメールで「呪われろ」的な内容のものを送っていたようだ。

 

そんな死に方だから、当然密葬になった。

 

葬儀も終わり、しばらくは平和な日常が続いた。

 

しかし、つい最近になって突然異変が起き始めた。

 

俺は都内の名門高校に通っているため、色々と課題があって徹夜をよくする。

 

ある日いつものように課題を仕上げていたら、隣の部屋から「バタンッ」という音がした。

 

行ってみると、姉の位牌が倒れていた。

 

俺は「風で倒れたのかな?」と思いつつ、位牌を元に戻して部屋に戻った。

 

それからしばらくして、今度は「ガサガサッ」という音がした。

 

この時点で気味が悪かったが、気になったので行ってみた。

 

すると、何故か線香が立ててあった。

 

俺はそろそろ危ないと思い、課題をやめて床に就いた。

 

ようやく寝れそうな状態になった時、隣から「チーン」という音がした。

 

情けない話だが、俺はそこで気絶してしまい、気が付いたら朝だった。

 

それからというもの、毎晩隣の部屋から壁を叩かれたり、チーンという音が聞こえてくる。

 

姉は何を望んでいるのだろうか・・・。

 

(終)

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蟹人間のような化け物

 

1年ほど前の話。

 

私が仕事している地域は、夜中に霧が出ることが多い。

 

田舎で道も暗いので、霧が出ている時は視界が悪くて車の運転が怖いくらい。

 

その日は、深夜2時頃に仕事が終わって、家に帰ろうと車に乗って会社を出た。

 

やっぱり霧が凄くて前が見えないのでゆっくり走っていたが、5分くらい走ったところで会社に忘れ物をした事に気付いて戻ることにした。

 

ちょうどUターン出来るスペースまで走ると、轢かれたタヌキの死体があった。

 

この辺りはタヌキや野良猫が多く、車に轢かれてしまうのも珍しくはないので、その時は気にも留めなかった。

 

会社に戻って忘れ物を取ると、さっきと同じ道を走った。

よく動物が轢かれているのは・・・

ついさっきUターンした辺りで携帯に着信があったので、車を寄せて止めて電話に出る。

 

大した用ではなかったのでまた車を出そうとしたら、ライトが照らすギリギリくらいの位置にさっきのタヌキの死体があった。

 

そして、その数メートル横の田んぼと道路の間で何か大きな物が動いている・・・。

 

霧でよく見えないが、それは大人2人がしゃがんだくらいの大きさで、ギクシャクと奇妙な動きで田んぼから道路に上がろうとしているように見えた。

 

ライトの明かりにそれが近づくにつれて、はっきり見え始めたそれを、私は「蟹」だと思った。

 

そんな大きい蟹が居るはず無いと分かってはいるが、横に広い胴体に上を向いた楕円形の突起が2つ、横に付いた脚を動かして動いてるのが分かったから。

 

怖いというより不思議な感じでじっと見ていると、急にそいつがザザザザザ・・・と素早く動いた。

 

そして、凄い速さでタヌキの死体を掴むと、車の前を横切って霧の中に消えてしまった。

 

それは蟹ではなかった。

 

坊主頭で異常に白い裸の人間。

 

人間2人の体の右半分と左半分がくっ付いた奇形人だった。

 

蟹の目玉のように見えた楕円形の突起は、2つの頭。

 

それが蟹のように四つん這いで横に動いていた。

 

それからは霧の出ている日はその道を避けるようにしている。

 

もしかすると、その道でよく動物が轢かれているのは「アイツのせい」なんじゃないか?と。

 

数年前に高校生が飛び出して車に轢かれた事故も、もしかしたらあの蟹人間に追いかけられて・・・と考えると怖い。

 

(終)

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ずっと母親だと思っていた人が実は・・・

 

俺は物心ついた時から片親で、父親の詳細は分からないままだった。

 

幼少期に母親から虐待を受けていて、夕方5時から夜9時までは、いつも家の前でしゃがんで母親が風呂に入って寝るのを待っていた。

 

ボロアパートの2階だったので、階段下でずっと待っていた。

 

暑くても寒くても、とにかく5時から9時頃までは待つのは辛かった。

 

でも、家に入ると母親に殴られるので外に居た。

 

9時になると母親は寝るので、こっそりと家に入り、朝まで押入れの中で眠った。

 

朝の3時頃に母親は家を出て行くので、それから起きて家にあるご飯を食べた。

 

母親は仕事をしていたのか不明だが、一応給食費だけは出してくれていたので、平日は給食が唯一のまともなご飯だった。

 

母親は夕方4時55分には必ず家に帰ってきた。

 

男を連れて来る時もあった。

 

その男も同じ様に、俺に躾(しつけ)と言いながら殴る蹴るの暴力を振るっていた。

 

そんな日々が俺の小学校生活における日常だった。

思いもよらない事実をつい最近知った

小学5年生になったある日、学校の友人数人が万引きをして捕まった。

 

俺は万引きをしなかったのだが、一緒に居た事で注意を受けるために学校に連れて行かれた。

 

親が迎えに来てぶん殴られる子もいれば、泣きながら謝る親もいた。

 

俺の親は何度電話をしても迎えに来なかった。

 

担任は俺と一緒に家に行くと言うが、俺は必死で断った。

 

母親からの暴力が怖かったから。

 

なんとか俺は無実だった旨と、親は忙しくて家に夜中にしか帰らないと嘘をついて、注意と担任から母親への文面での報告だけで済むことに。

 

とりあえず難を逃れたと思ったが、結局帰った瞬間に包丁で手を切られた。

 

初めて泣き叫びながら死を感じた。

 

異常だと思ったのか、アパートの住人の誰かが警察を呼んだらしく、数人の警官が駆けつけて母親を取り押さえ、俺はその後に養護施設へ入所することになった。

 

中学卒業と同時に俺は仕事を探して、今の鳶職という仕事に就いた。

 

施設の先生は良い人達だったので、今でも繋がりがある。

 

そして未だにゾッとするのは、俺が母親だと思っていた人が実は「赤の他人」だった事。

 

あれ以来会っていないが、戸籍上では母親は俺が2歳の時に死んでおり、俺には父親しかいない事が分かった。

 

父親との面識は一度も無い。

 

それらの事実をつい最近知った。

 

ただ、俺は暴力を振るわれようと、貶(けな)されようと、涙を流そうと、耐え続けた。

 

いつかは・・・いつかは・・・と普通の家族を夢見て信じていた。

 

母親と呼べる人が他人で、誰かも分からないという事実が正直怖かった。

 

あの人は誰で、どのような関係があって俺を育てたのだろうか。

 

極稀に、俺を撫でてくれた手の優しさはなんだったのだろうか。

 

先日、幼少期を過ごしたあの家に行ってみたが、今は誰も住んでいなかった。

 

だけど、階段下の壁に「まーくん」と削った文字を見つけて、不可思議な同居生活がなんだか虚しく思い出した。

 

(終)

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不可解な点が多い失踪事件

 

大学生の時、短期間ですが探偵事務所でアルバイトをしたことがあります。

 

まだパソコンが普及している時代ではなかったので、私の仕事は顧客データの書類整理と浮気調査などでラブホテルなどに潜入する際に付いていく程度の仕事しかありませんでした。

 

バイト期間終了日が迫っていたある日、私はある調査資料を手にし、あまりの異様さに私を雇ってくれている雇い主である探偵(元刑事)の社長に「なんなんですか?この事件」と訊くと、彼は不思議な話をしてくれました。

 

以下、探偵でもある社長がしてくれた不思議な話です。

結局は何も分からなかった

彼の元にある日、年の頃30歳前後の若い女性が現れました。

 

長距離トラックの運転手をしている夫が、東北へ向かう途中のドライブインで行方不明になったので捜して欲しい、と。

 

失踪事件の調査はよくあること。

 

社長は早速、彼女の夫がいなくなったというそのドライブインへ調査へ向かいました。

 

そのドライブインの経営者は、80以上になるおばあちゃんでした。

 

彼女の夫が元々そこを経営していたらしいのですが、夫が亡くなった後、そこを引き継いだのだとか。

 

長距離トラックの運転手御用達のようなドライブインで、デコトラが何台も入るような大きなトラック専用の駐車場がいくつもあります。

 

運転手は、そこの屋根付で扉付きの駐車場に車を止め、おばあちゃんのところに「○○番の駐車場に入った。○時になったら起こしてください」と言いに行くと、おばあちゃんがその時間にお茶のサービスと共に起こしてくれる仕組みになっています。

 

そこの駐車場の一つで、依頼者の夫は忽然と姿を消したのでした。

 

トラックは駐車場にあり、運転していた本人だけがいなくなっていたのです。

 

探偵である社長は、すぐ「おかしい」と思ったそうです。

 

場所は高速道路の真中。

 

トラック無しで、徒歩で一体どこへ行ったのか。

 

訝しむ彼に、おばあちゃんが「ああ・・・でもこれ関係あるのかしら?」と口を開きました。

 

「いやね、この件とはまるきり関係ないと思うんだけど、亡くなった主人から絶対に開けてはいけないって言われている駐車場があるのよ。だから普段は鍵を掛けて入れないようにしていたんだけど・・・」

 

別のトラックの運転手を起こしに行こうとしたドライブインのおばあちゃんは、その日、鍵を掛けて開かないようにしてある駐車場の扉が開いているのを不信に思ったそうです。

 

すると、そこには見慣れぬトラックが。

 

そのトラックは、自分の所に「○時に起こしてくれ」と何も言って来なかったトラックだったと言います。

 

それに、鍵が開くわけがない。

 

他の運転手にも訊いてみたところ、そのトラックが入る数時間前は確かに閉まっていたと証言がありました。

 

では、なぜ開いていたのか?

 

運転手はどこへ行ったのか?

 

探偵の社長は引き続き調査を行うことにしました。

 

元刑事という警察のコネクションも利用して。

 

数日後、失踪したトラックの運転手は見つかりました。

 

残念なことに亡くなっていました。

 

瀬戸内海の満潮になると沈没してしまう小さな隆起した岩の上で。

 

地元の漁師が見つけたそうです。

 

ターゲットが死体で見つかった以上、もう探偵のする仕事は終わりです。

 

しかし、亡くなった彼はたった数日で、しかも足も無いのに東北から瀬戸内海へどうやって移動したのか?

 

なぜ突然失踪したのか?

 

原因をどうしても追求したくなり、元刑事の肩書きを利用し、警察仲間に遺体の状況を問い合わせました。

 

すると、遺体は口から食道から胃から腸から、びっしりと貝類が未消化の状態で詰まっていたという情報を得ることが出来ました。

 

発見時、妊婦のように腹が膨らんでいたので、発見した漁師は水死体だと思ったそうです。

 

しかし、死因は溺死ではありません。

 

監察医の診断は「ショック死」でした。

 

亡くなった彼の体にびっしりと詰まっていた夥(おびただ)しい量の貝類はなんだったのでしょうか?

 

なぜ彼は、東北のドライブインから瀬戸内海の岩の上に、たった数日で移動が出来たのでしょうか?

 

さらにもうひとつ不可解な点がありました。

 

彼の体中には「無数の引っ掻き傷」が付いていたそうです。

 

それは、人間もしくは爪を持つ哺乳類に付けられたらしい傷。

 

結局は何も分からずじまいで、社長は消化不良の調査を終えて東京に帰って来たそうです。

 

(終)

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バス停で佇んでいる女の子

 

朝の出勤時に高校の横を通るのだが、校舎周りの塀側にある学校向けのバス停に、いつも一人の女の子が佇んでいる。

 

通りすがりに見かけるだけで特に気に留めては無かったが、ある日おかしな事に気付いた。

 

その女の子が一人きりでバス停にいる時はバスが止まらない。

 

気になって見るようにしたら、一度や二度じゃない。

 

そういう状況を何度も見かけた。

 

彼女は、いつも空を見上げてバス停で佇んでいる。

 

俺は通りすがりでしかないので、ただ見かけているだけだ。

 

人間不思議なもので、気になってくると興味が出てくる。

 

なるべくその女の子を見られるように、少し早めに出勤したりしてみた。

 

単なる好奇心であって、下心ではない・・・つもりだ。

 

数日間、数週間と見ているうち、さらに気付いた。

 

バス停にいる女の子は服装が変わらない。

 

いつも空を見上げている。

 

そしてバスが止まらない。

 

これらが全く変わらないのだ。

 

他の待ち合い人が居てバスが止まると、彼女もつられるようにバスに乗る。

 

乗ると言ったが、これは滅多に見れなかった。

 

そんな観察を何ヵ月か繰り返した。

 

そんなある日の事、いつも通りにバス停を通りかかると、女の子の後ろに変な爺さんがいた。

 

俺はいつもの待ち合いだなと思いながら通りすがった。

 

ふと爺さんが変な動きをしたなと思った次の瞬間、女の子が折り畳まれるように爺さんに吸い込まれてしまった。

 

あまりにも訳の分からない様子で、「えっ?!」と声を出してしまった。

 

すると爺さんは、さっと足早にその場を去って行ってしまった。

 

俺はぽかーんとしたまま立ち竦んでしまって、その日は遅刻した。

 

それ以降、バス停に女の子は現れなくなってしまった。

 

あれは一体何だったんだろう、と今も思う。

 

(終)

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田舎で出会った不思議なお姉さん

 

小学2年生の頃の話。

 

小さい時に母ちゃんが死に、俺は親父に育てられていた。

 

父子家庭が原因なのか内向的な性格で、小学校で壮絶ないじめに遭っていた。

 

1年生の頃からずっといじめ続けられ、とうとう2年生で登校拒否になった俺は、一時的に母方の実家の田舎に預けられた。

 

そこは物凄い田舎で、まだ日本にこんなところがあるんだな、と思った。

 

そこでのんびりと過ごすことになった。

 

過疎が進んでいて、地域にいる子供は高校生が3人いただけだった。

 

一人が気楽だったし、虫好きだった俺はよく虫捕りに出掛けていた。

 

そんなこんなで半年ぐらいが経った時。

 

8月だったと思うが、一人の女の人と知り合いになった。

 

20代後半から30代前半くらいの、黒髪の長い綺麗な人だった。

お前、誰と遊んどったんや?

きっかけは、向こうから俺に話しかけてきたこと。

 

「ボク、ここらへんの子じゃないよね?夏休みで来たの?」

 

しどろもどろになった俺を察してくれたのか、虫篭に目線を向けて、「あ!いっぱい捕まえてるね。見せてくれる?」と。

 

俺も虫の話なら大好きだったから、その人に色々と説明してあげたりした。

 

その人は相槌を打ちながら、「すごいね」、「へぇ」と言ってくれていた。

 

他人に褒められたことなんて無かったから、純粋に嬉しかった。

 

その日から、そのお姉さんと遊ぶようになった。

 

一緒に虫捕りに畑へ行ったり、川に行ったり。

 

待ち合わせは、いつも川の近くのお地蔵さんの前。

 

爺ちゃんと婆ちゃんにお姉さんの話をしたら、「あぁ、夏やから○○さん家の娘さんが帰ってきとるんやろ。迷惑かけちゃいかんよ」と言っていた。

 

超過疎状態でよそ者も来ない土地だったから、そんなに気にも留めてなかった。

 

お姉さんは不思議な人で、あまり自分の話はしなかった。

 

俺が家族の話とか訊いても、全部うまくはぐらかしていた。

 

でも俺の話は親身に聞いてくれて、学校でいじめられていたこと、母ちゃんがいないこと、爺ちゃんや婆ちゃんにも言わなかった弱音もよく吐いた。

 

俺の愚痴を聞き終えると、いつも優しく慰めてくれた。

 

俺は、「お姉さんが母さんだったら・・・」と、よく思った。

 

そうお姉さんに言うと、なんだか悲しそうな顔をしていた。

 

でも、お姉さんと出会って少し経った頃から、体調が悪くなり始めた。

 

最初は風邪かなと思ったけれど、熱は無いし大丈夫だろうと考えていた。

 

何より、お姉さんに会えないのが嫌だったし、気分が悪くてもお姉さんとのいつもの待ち合わせ場所に向かっていた。

 

体調はどんどん悪くなり続け、爺ちゃんや婆ちゃんも心配になったのか、俺を家で寝かしつけておくも一向に良くならない。

 

俺は俺で、お姉さんに会いたいとずっと文句を垂れているから、爺ちゃんがそのお姉さんの実家であろう家に電話をかけた。

 

電話をかけ終わると爺ちゃんは突然焦った様子で、「お前、誰と遊んどったんや?○○さん家の娘さん、今年は帰って来てないって言うぞ!?その人の名前は?どんな人や?」と訊いてきた。

 

俺は混乱しながらも、よく考えたら名前を知らなかったことに気づいた。

 

とりあえず特徴を告げると、急いでまた電話し始めた。

 

俺は何をそんなに焦っているんだろうと思ったけれど、よく考えたら知らない人間がいるなんてありえない地域だった。

 

周りは全員知り合い状態だし、よそ者が来たらすぐに分かる土地。

 

ましてや、知らない人が住んでいるなんて尚更ありえない。

 

でも小さい俺は、それがよく分からなかった。

 

結局、そんな女性はいないと分かり、爺ちゃんと婆ちゃんも不気味に思ったのか、その日から俺はお姉さんとの待ち合わせ場所へ遊びに行くのをやめさせられ、家の近くで遊ぶようになった。

 

それに、少しはマシになったものの、体調は相変わらず悪かった。

 

本当はお姉さんに会いたかったけれど、これ以上、爺ちゃんと婆ちゃんにも迷惑をかけられなかった。

 

その日も家の裏の畑で虫探しをしていると、昼頃に「●●君、こんにちわ」と、お姉さんが突然やって来た。

 

俺はもう嬉しくて、また一緒に虫捕りをして遊んだ。

 

でも、なぜか分からないけれど、俺はあんなことがあったにも関わらず、お姉さんの素性を一切訊かなかった。

 

それに、少し離れた所には爺ちゃんと婆ちゃんも居たのに、二人ともお姉さんに気づいていないようだった。

 

その夜、思い出したように訊いてみた。

 

「なんで昼間、お姉さんと虫捕りしてたのに何も言わなかったの?」

 

そう言うと、二人は突然青ざめ始め、「昼間って、お前一人で遊んでたろう?爺ちゃんも婆ちゃんもお前が遠くに行かんかずっと見とったぞ」と言った。

 

二人はどんどん顔が強張っていき、爺ちゃんは急いで親父に電話した。

 

電話が終わると爺ちゃんは、「悪いけど、●●、お前はもうお父さんの所へ帰れ。もうここにおっちゃいかん」と言った時は本気で絶望した。

 

ここからは、俺が大きくなってから聞いた話だが、この土地はずっと昔に『子供の神隠し』が多発していた場所なんだという。

 

どうやら、友達が少ない子ほど神隠しに遭いやすいという言い伝えがあったらしい。

 

そして、神隠しに遭う子は、居なくなるちょっと前から原因不明の体調不良に襲われるのだと。

 

でも爺ちゃんは、どうせ友達を多く作るための方便と思っていたらしい。

 

だけど、神隠し云々に関わらず、爺ちゃんは当時の俺をどうもおかしく感じたらしく、帰らせることにしたと。

 

駄々はこねたものの、結局は一週間後に帰ることになってしまった。

 

帰ることが決まってからの一週間、俺は家を一歩も出ることが出来ず、ずっと家の中に居させられた。

 

婆ちゃんは相変わらず不安そうだったが、俺はお姉さんに会えなくなることをずっと悲しんでいた。

 

そして帰る当日の朝、親父の迎えを待ちながら庭の縁側で泣きながらうずくまっていると、突然お姉さんがひょっこり現れた。

 

おかしいとは思いつつも、恐怖は微塵も感じなかった。

 

「●●君、どうしたの?」

 

いつものように優しく話しかけてきた。

 

俺はもう帰らなくちゃいけないことを伝えると、寂しそうに「そっか・・・でもそれがいいと思う。大丈夫、お姉さん遠くで応援してるから」と言った。

 

最後に俺が、「ここに来たらまた会える?」と訊くと、悲しそうに首を横に振り、歩いて庭から出ていった。

 

家に帰った俺は、それからは何故かいじめにも遭わなくなり、体調も良くなって普通に暮らすようになった。

 

でも、あれから一度もお姉さんとは会っていない。

 

結局、お姉さんは何者か分からなかった。

 

幽霊かも知れないし、神隠しの使者かも知れない。

 

神隠しから守ってくれたのかも知れないし、普通の人間だったのかも知れない。

 

本当に不思議な体験だった。

 

 

(終)

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北西の方角に太陽が昇っていた

 

8年前の夏の事。

 

珍しく朝5時頃に目が覚めて、なんとなく窓のカーテンを開けたら、ちょうど夜明けだった。

 

ベランダに出て白んでいる方を見やると、綺麗な日の出。

 

「このマンションに住み始めて初めて見る日の出だなあ」と、2秒ほど見とれていてようやく気付いた。

 

そっちは北西の方角・・・。

 

日が出るわけがない。

本当は何があったのか?

「え?!あれ?」とパニックになっていると、斜め向かいのマンションのベランダに人が居るのが視界に入った。

 

こちらに手を振っている。

 

というより、両手をこちらに突き出して、「待て待て」とやるように手首を横に振っている。

 

口も動いて何かを伝えようとしているようだが、何も聞こえない。

 

「あの太陽は何?アンタは誰?」と、さらに混乱しているうちに意識が無くなった。

 

次に目が覚めたのは病院のベッドの上。

 

実に6日が経っていた。

 

俺はというと、『頭蓋骨陥没骨折』。

 

後頭部の形が変わるほど滅茶苦茶に。

 

母に聞いたところによると、俺はその朝、ベランダで頭を鮮血に染めて倒れていたという。

 

血痕からすると、俺はベランダの壁に後頭部を激しく打ち付け、頭を割ってそのまま倒れたらしい。

 

いやいや、そんなわけないだろう、と。

 

後頭部を激しく壁に打ち付けって、どんな動きをしたら出来るのだ、と。

 

滑って転んだならまだ分からなくはない。

 

でも、壁の血痕は立った状態での頭の高さにあった。

 

結局は何が起こったのかは分からないまま、頭は致命傷にはならず、外傷も治ったものの、俺は酷い頭痛と不眠症、時々来る麻痺に悩まされる羽目になった。

 

そして最近になって、この時の記憶がおぼろげに湧き上がって来た。

 

あの手を振る人を見た直後、俺は何かに気付いて別の方向を向いた。

 

すると、何故かベランダに中学生ぐらいの女の子が立っていて、おもむろに俺の顔に手を伸ばすと、そのまま掴んで俺は凄い勢いで壁に叩きつけられた。

 

何度も激しく叩き付けては押さえ付けられ、しまいには頭蓋骨が割れて後頭部が叩き付けられる感触が生々しく柔らかくなった事まで思い出した。

 

でも、この記憶も当然おかしい。

 

少女がマンションのベランダに侵入?

 

女子中学生に頭を割られる?

 

有り得ないだろう。

 

そもそも、北西に太陽が昇るとか、早朝5時に手を振る人とか・・・。

 

この時点で何かがおかしい。

 

現実的に考えれば、寝ぼけて勝手に転んだのだろう。

 

そして、変な記憶は錯乱した脳が勝手に捏造したんだ。

 

でも、それにしては血痕の位置が納得いかない。

 

本当は何があったのか?

 

何かに遭った俺にも何も分からない。

 

(終)

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寝室の隅にカラスの羽根が・・・

 

初めて一人暮らしをした部屋で起きた怖い話。

 

私は、大学に入学と同時に一人暮らしを始めた。

 

帰っても誰も居ないのは想像していたよりも本当に寂しく、昼間は大学に入りびたり、夜は遅くまで出掛けていた。

 

そのため、その部屋にはほとんど寝に帰るだけだったのだが、入居して1ヵ月ぐらい経った頃だろうか、奇妙なことが起こった。

 

寝室の隅に『カラスの羽根』が落ちていたのである。

すぐにその部屋を出ることを決めた

たしかに、そのマンションの近くでカラスは多く見かけたが、寝室の窓は閉まっている上に、鍵も掛かっている。

 

少し疑問に思ったが、その時は大して気にもせずに羽根を捨てた。

 

しかし、それから私は何度も寝室でカラスの羽根を見つけることになる。

 

羽根は不定期に落ちていた。

 

それは小さな羽毛であることもあるし、大きくしっかりとした羽根であることもあった。

 

気味が悪いことに、血と肉のようなものが付いている時もあった。

 

しかも、徐々に落ちている頻度が増えているように思えた。

 

二度三度ならまだしも、週に1回のペースになってくると、夜に寝に帰っているだけとはいえ、さすがに不気味だった。

 

とはいえ、原因はさっぱり分からなかった。

 

そんな頃、大学が夏休みに入り、部屋で課題をすることが多くなった。

 

すると、カラスの羽根が落ちていることも不思議となくなった。

 

それで私は、やっぱり窓を閉め忘れていたのだろうと思うようになり、羽根のことを大して気にしなくなった。

 

夏休みも終わりに近づいたある日、無事に終わった課題を大学まで提出しに行こうと家を出た後、忘れ物に気付き、マンション前まで戻った。

 

「ギャア!!」というような高い声が空から聞こえ、上を見上げると、自分の寝室の窓が開いている。

 

出る前に間違いなく鍵を掛けた窓である。

 

そして、その窓に向かって、まさに今、カラスが飛び込もうとしていたのである。

 

いや、飛び込んで、という表現は正しくない。

 

カラスはむしろ、窓から逃げようとしている様だった。

 

しかし、何かの力により、無理やり連れ込まれようとしていたのである。

 

そして窓の中にカラスの身体が今にも入ろうかという瞬間に、人の手のようなものがカラスを掴み、すぐに部屋に引き込んだのだ。

 

そして静かに窓が閉まったのである。

 

頭が混乱した。

 

誰がどうやって入ったんだ?

 

どうやってカラスを捕まえているんだ?

 

私は急いで部屋に戻り、寝室の扉を開けると、いつも通りの部屋だった。

 

カラスの羽根は落ちていなかったが、微かに血のような匂いがした。

 

私はすぐにその部屋を出ることを決めた。

 

出てからすでに数年が経っている。

 

最近、そのマンションを見に行ったが、いつのまにか取り壊されてしまったようで、今は全く新しいビルに建て替わっていた。

 

(終)

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部屋で写した一枚の写真

 

私が小学5年の時に、一回り年の離れた姉が出産をした。

 

当時はデジカメなどなく、写真を写す時は決まってインスタントカメラ。

 

生まれたばかりの甥を抱っこして、何枚も何枚も写真を撮ってはカメラ屋へ現像に出し、撮った写真が出来上がるのを楽しみにしていたのを今でも覚えている。

 

その時も出来上がったばかりの写真を楽しく見ていたのだが、部屋で写した一枚の写真がなんだかおかしい事に気づいた。

口を大きく開け、目を見開き・・・

手前に私と甥、そして奥の暗い方にあと一人写っている。

 

目を凝らしてよく見てみると、髪の長い気味の悪い女性だった。

 

当時、我が家には髪の長い女性はいなかったし、来客としてもこんなに髪の長い人はいなかったはず。

 

当時からオカルト的な事に興味があった私は、心霊写真じゃないかと半ば心震わせていた。

 

だが、日に日に見る度に、その髪の長い女性の表情が変わっていく事に気づいた。

 

どう説明したらいいのかわからないが、明らかに違った。

 

悲しむ表情や怒りの表情、ちょっと笑っている表情・・・。

 

その時の自分の感情に伴っているのかも知れないが、昨日とはまったく違った。

 

さすがに気味が悪くなり、両親もこの写真はお祓いしようと決め、お寺に持って行った。

 

私が最後に見たその女性の表情は、口を大きく開け、目を見開き、何か驚いているような、苦しんでいるような、目を背けたくなるような本当に奇妙な表情だった。

 

あれから十数年が経ち、あの写真の事もすっかり忘れていたのだが、ついこの前、ふと思い出した。

 

夜中、飲み会から帰ってきた私は、歯を磨こうと洗面所へ向かい、歯ブラシを取ろうと手を伸ばした瞬間、小さな蜘蛛が私の手に乗ってきた。

 

虫が大嫌いな私は驚き、キャッ!と手を振り払った。

 

蜘蛛は逃げていったが、鏡に映った自分の固まった表情にまた驚いた。

 

口を大きく開け、目を見開き・・・、まるであの写真の女性のようだったから。

 

あの写真が私に何を伝えたかったのかは、今となってはもう分からない。

 

だけど、もし私が何か事故に遭うとすれば、もしかすると最後はあんな表情になるのかも知れない。

 

最近、事故には気をつけようと考えることが増えた。

 

ちなみに今の私の髪の長さは、あの写真に写っていた女性と同じくらいだと思う。

 

(終)

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