お婆ちゃんから聞いた話。

 

お婆ちゃんの住んでいた地域は、何度も空襲にあったという。

 

ある夜に警報が鳴り、近所の皆で防空壕に避難する途中、防空壕の付近に爆撃を受け、皆は覚悟した。

 

すると、いつのまに混じっていたのか、見たことのない子供が先頭に立っており、空を見上げていた。

 

小さな町内だから知らない子供などいるはずがないのだが、見覚えのない男の子だったという。

 

すると、空を見上げていた男の子がそのままの姿勢でぬーっと体が伸び上がり、皆を包むような姿勢で空を塞いだ。

 

敵機の焼夷弾は男の子の背中に落ち、燃えていたような感じだったとか。

 

皆は唖然となったが、それよりも燃え盛る炎がいつ自分達に降りかかってくるかと恐れ、小さく固まって頭を抱えていた。

 

男の子はそのままお婆ちゃん達を包み込み、長く続いた空襲から守ってくれた。

 

爆撃が終わると元の身長に戻り、ペコッと頭を下げると走ってどこかへ行ってしまった。

 

幸いなことに、その時その場にいた皆に怪我人は出なかった。

 

終戦後、お婆ちゃんのお母さんや近所の人が、あの時の子供のお化けにお礼をと方々に聞いて回ったが、子供の情報は得られなかった。

 

お婆ちゃんは、「なんだったのかわかんないけど、お化けが守ってくれたんだねえ。日本のお化けはやっぱり日本人の味方なんだねえ」と言っていた。

 

他にも、地元に伝わる伝承に似たような話がある。

 

数百年前、この辺りは小さな農村だったらしいが、大飢饉の際に一人の童がぐっと背伸びをすると、その体は遠くの山を越えてしまい、大きく伸ばした腕いっぱいに魚や木の実や米俵を抱えて戻り、荒れ果てた田んぼにドサッと落としてくれた。

 

童は何度か食糧を運んでくれて、そのおかげで村人は生き延びることが出来たとか。

 

しかし一方で、帰宅中に後ろを付いてきた男の首と肩がどこまでも伸びて追いかけてきて、慌てて家まで逃げ帰ったが、数日もたずに狂死してしまった、なんていう話も伝わっている。

 

何か得体の知れないものが、この地域にずっと棲んでいるのかも知れない。

 

(終)

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