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なぜ、不動産投資は「サラリーマン向けの投資」なのか? 稲垣浩之(税理士)

不動産投資は、ビジネススキルが活かせる投資法

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株式や投資信託などに比べ、金額が大きく、長期的計画が必要な不動産投資。これまであまり投資をやってこなかった人が始めるにはハードルが高いと感じるかもしれない。しかし、実はとても堅実な稼ぎ方で、サラリーマンにこそお勧めできるという。不動産投資のコンサルティングを行なっている税理士の稲垣浩之氏に詳しくうかがった。《取材・構成=塚田有香、写真撮影=まるやゆういち》

「投資」と言いながら実は「事業」に近い

不動産投資とは、簡単に言えば「物件の表面利回り」と「金融機関からの借入利率」との差額で稼ぐ投資法です。お金の流れで説明すると、次のようになります。

(1) 金融機関でローンを組み、物件を購入する。 (2) 購入した投資物件から、月々の家賃が入る。 (3) 家賃収入から、借入金利と元本額を毎月金融機関に返済をする。 (4) そこから固定資産税や管理費などの経費を支払う。 (5) 手元に残った現金が、その月の収入となる。

(2)以降を毎月繰り返していくことで、継続的に収入が得られるのが不動産投資です。

「投資」という名前がついていますが、株やFXのように「一攫千金を狙う」というものではなく、たとえるなら百円玉をコツコツ貯金していくのに近い、堅実な稼ぎ方です。「売上から経費を差し引き、残った利益を管理する」という意味では、実際は投資というより「事業」と言ったほうが正しいでしょう。

日本では、ここ10年ほどで、不動産投資を始める人が急増しています。大きな理由は、金利の低下です。

先ほど説明した通り、不動産投資は表面利回りと借入金利の差額で稼ぐ仕組みですから、「できるだけ高い利回りの物件を買い、できるだけ低い金利でお金を借りる」というのが、利益を最大化するポイントです。

たとえば、価格が1億円、表面利回りが年8%の物件を、金利1.5%のローンを組んで購入するとします。すると年間の家賃収入は「1億円×8%=800万円」、金融機関に支払う利息は「1億円×1.5%=150万円」です。よって差額は650万円となります。

ところが、同じ物件を金利4.5%で借りると、支払う利息は450万円となり、差額は350万円にしかなりません。金利が低い今は、不動産投資で得られる利益をより大きくできるチャンスと言えます。

良い業者を見つければ大家は何もしなくていい

とはいえ、いくら金利が低くても、物件の利回りが低ければ、やはり手元に残るお金は少なくなります。では、どうすれば条件の良い物件に出会えるかと言えば、良い不動産業者を見つけることに尽きます。

不動産市場は、実は非常に「不平等」です。株式市場なら、すべての銘柄に関する情報が開示されているので、誰でも平等にチャンスがあります。しかし不動産の場合、大半の物件情報は表に出ず、不動産業者が持っています。よって、できるだけ多くの業者を回り、情報収集して優良物件を探すことが、不動産投資で成功する秘訣です。

そう聞くと面倒に思うかもしれませんが、不動産投資で手間がかかるのは、物件を購入するまでです。信頼できる業者にさえ出会えれば、金融機関も紹介してくれるし、物件購入後も入居者の募集や施設のメンテナンスなどはすべて管理会社がやってくれるので、オーナーがやることはほとんどありません。いったん仕組みを作ってしまえば時間を拘束されないので、本業が忙しいサラリーマンでも続けやすいのがメリットです。

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モチベーションを自在に引き出す20の方法とは?

自分の「やる気」は自分で管理する時代に

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本日発売の「THE21」2017年11月号は「モチベーション」特集。どうしてもやる気が出ないときに即!効果が出るさまざまな方法を紹介しています。 以下、本特集の「はじめに」を掲載します。

40代で迎えるモチベーション危機

「どうしてもやる気が出ない」……誰しも、そんな日はあることだろう。それが、たまになら仕方がないが、ほぼ毎日のようにそう感じているとしたら問題だ。

しかし最近、ほぼ毎日「やる気が出ない」と感じている人が増えているように思えてならない。とくに40代前後の中間層に、そういう人が多くなっているようだ。若い頃のようなパワーが出なくなる一方で、仕事もマンネリ化してくる。自分のビジネス人生の先が見えてくることもあり、何を目標にしていいのかわからない……。そうしたことが要因だと言えるだろう。

ただ、より根深い問題もある。それは「会社や上司の問題」。目先の数字にしか興味のない社長、自分たちの保身だけを考える役員、そしてそれを黙認する上司たち……そんな状況下においては、自分が頑張れば頑張るほど、彼らを助けることになってしまう。「頑張りたいのに頑張れない」という思いを抱いている人も少なくないようだ。

それでも、右肩上がりの高度成長時代なら、我慢していれば給料や地位が上がっていくことで、モチベーションを保つこともできただろう。だが、それはもはや期待することはできない。結局、自分のモチベーションは自分で管理するしかないのだ。

逆に言えば、その方法さえ会得してしまえば、どんな状況になったとしても安定したパフォーマンスを上げることができる。モチベーションのコントロール法は、これからのビジネスマンにとっての必須スキルと言えるのだ。

やる気と「身体」は密接に関係している!

本特集では20人以上の識者の方々に、「やる気」「モチベーション」を高めるための方法についてうかがっている。さまざまな方法を紹介しているが、大きく分ければ「物事の捉え方を変える」アプローチと、「物理的、身体的な側面からやる気を高める」アプローチに分けられるだろう。

前者については、経営者、スポーツ選手、脳科学者などさまざまな分野の識者たちに、自身の経験を踏まえつつ、なるべく論理的かつ科学的見地に基づいた方法を伝授してもらっている。単なる「精神論」ではない、科学的なモチベーションアップ方法になっているはずだ。

そして見逃されがちなのが後者の「物理的、身体的なアプローチからやる気を高める」方法だ。心と身体の状況は密接に絡み合っている。だからこそ、身体を整えることで心も整い、やる気を高めることも可能になるのだ。このテーマについては主に第3部にて「マインドフルネス」や「フィットネス」などの形で取り上げている。

意外なところでは、「男性の更年期」の問題がある。ひょっとしたら自分の身体機能の低下がやる気の低下につながっている可能性もある。

さらに、中間管理職世代にとっては、部下や後輩のやる気をどう高めるかも重要な課題だ。これについては第2部にて、その方法について取り上げている。

最近「仕事のやりがいが見つからない」という人が増えている。仕事にやりがいが持てないのは会社の責任でもあるが、それを嘆いていても始まらない。自分の意識と身体を切り替えることで、仕事をやりがいのあるものに変え、ぜひ、モチベーション高く仕事をして成果を上げてもらいたい。

やる気を自在に引き出す20のコツとは?

1 まずは「着手」する

脳科学者の池谷裕二氏によれば、人は「最初の第一歩」を踏み出せば、自然とやる気が高まるという。気が乗らない仕事でも「ファイルを開いてみよう」「企画書のタイトルだけ書こう」など、まず「着手」することで、芋づる式にやる気が高まる。

2 自分なりのスイッチを持つ

「地球儀を眺める」「お城に上る」……本特集にご登場いただいた方々の「モチベーションのスイッチ」はさまざまだった。方法はなんでもいいが、「これをすればやる気が出る」と、自覚的にそのスイッチを活用することが大事。

3 仕事のアクション数を減らす

「机からボックスを出し」「ボックスから資料を取り出し」… … といった「アクション数」が多いと、つい面倒に。「よく使う資料はすぐ取り出せるように」「出張道具はつねにカバンに入れておく」などアクション数を減らす工夫を。

4 姿勢を整える

人の身体の状態と心の状態は密接に関係する。とくに気を付けたいのが「姿勢」。姿勢が悪いと、それだけで精神状態が悪化し、やる気も上がってこないのだ。「やる気が下がっているな」というときほど、正しい姿勢を意識してみよう。

5「時間軸」を切り替える

かつてあんなにつらかったのに、今思えば「大したことはなかった」ことは多いもの。同様に「時間軸」をずらし、今という時点を未来から眺めてみると、困難な仕事も将来の成長につながると捉えられる。

……6以降は全国書店・ネット書店で発売中の「THE21」2017年11月号「やる気(モチベーション)を自在に引き出す20のコツ」を!(『The 21 online』2017年09月08日公開)

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「元気のない40代」と言われないための3つの対策 加島禎二(セルム代表取締役社長)

40代が輝きを取り戻すために

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本来、仕事においても家庭においても一番脂の乗った時期と言えるはずの40代。だが実際には、仕事にもプライベートにも疲れ果てた、どうも元気のない人が目立つというのが現実ではないだろうか。

だが、この時期に何をするかで、定年後も含めた今後の人生の充実度は大きく変わってくる。

40代を無駄にせず、輝きを失わないためにはどうすべきなのだろうか。組織・人材開発のプロフェッショナルである(株)セルムの加島禎二社長に「元気のない40代から脱却する方法」を教わった。

「元気のない40代」4つの特徴とは?

40代といえば、組織の屋台骨を支える世代だ。仕事に熟達し、体力もまだ充分にあり、人間的にも成長して責任ある仕事をこなすことを期待される世代である。

私は、企業の成長戦略を人材の側面から支援するコンサルタントとして、「若手の早期登用が必要だ」と唱えてきた。上の世代がいつまでも意思決定権を握っていては、今、企業が切実に欲している、事業の転換点を乗り越えるイノベーションを起こせない可能性が高いからだ。

実際、多くの企業で若手への権限移譲は進んだと思う。40代の部門長や執行役員クラスも増えている。しかし今、経営者や人事役員の方とお話しすると、40代社員が自身の40代の頃と比べてエネルギーが低い、輝いていない、という悩みをよく相談されるようになった。

具体的な事象をあげよう。

<新しい動きに興味が薄い>

ビジネスの新しい動き(例えば、新しい技術の利用可能性やベンチャーが発表する新しいサービス)に興味が薄い。一般のニュースになっていることであっても知らないこともあるし、話を振ってみても「そうですか」「へえ」……といった感じで、反応が鈍い。ビジネスに対する感度が下がっているのではないか。

<いつまでもリサーチをしている>

他社事例や一般解をリサーチすることは重要だが、いつまでもリサーチに時間を費やしていて、なかなか意思決定をしない傾向がある。多少わからないことがあっても、思い切って意思決定をしないと仕事も人も動かない。責任をとることを心配しているのだろうが、これでは彼ら世代が反面教師にしてきたはずのシニア社員と同じではないか。

<若手の新しいアイディアに冷淡>

若手が新しいアイディアを出したり、提案をしても、それに対して「お手並み拝見」とばかりに手を貸そうとしないケースも少なくない。妨害はしないが、経験不足の若手だけが担当するには荷が重いだろう仕事であっても、積極的に手を貸さない。若手が活躍するより、まだまだ自分が評価されたいという気持ちが勝ってしまっているのだろうか。

<上からの評価を必要以上に気にする>

上司の目につく場面には必ず出席したり、報告書に書くべき項目を揃えたり、ということに関しては非常に熱心にやっているが、地道な問題解決や自分のチームのPDCAでは手を抜いているように感じる。自分の評価が下がることを恐れているのではないか。

いかがだろうか。ここではぜひ怒らないで考えてほしい。もし経営者にこのように見えるであろう行動が自分に当てはまるとしたら、要注意だ。特にこの先、経営幹部職を目指したいと思っている人にとっては、これがボトルネックになってしまう。

もちろん、日々とても忙しい。経験したことのない仕事も増えた。職場にも新しいことを面倒臭がる嫌う空気が漂っている。

しかし、だからといって周りに流されてしまうのはまだ早い。今日から、それも自分の意思でできる対策もあるからだ。

対策1 変化を肌身で感じる機会を意識的に作る

某刑事ドラマのセリフではないが、変化(事件)は現場で起きている。もちろん多くの人が現場で仕事をしているのであるが、これまでの仕事のやり方が通用しない、トライ&エラーをしなければならないような業務を、常に一定数担当するなどして、ビジネスの変化を体感する環境に身を置く工夫をしてはどうだろう。

また、直接仕事と関係のないサードパーティーのコミュニティを持つことも、ぜひ推奨したい。自分とは異なる価値観や物の見方に触れたり、これまで関心がなかった分野の人たちとの交流に目を開かれることもある。それが思ってもみないかたちで仕事に活きることも実は少なくない。ビジネスの感度を上げることにもつながるはずだ。

対策2 外部のリソースを活用する

仕事は、自分や自社のリソースだけで何とかしなければならないものだ、と思い込んでいないだろうか。その前提条件を捨てない限り、「次の一手」が生まれないことも多い。変化が常態化した中で最も危険なのは、「自前主義」に他ならない。

そこで、日頃から必要なアイディアを外部からできるだけたくさん入手できるような動き方・働き方をするべきだ。外部に良いパートナーを持てたら、自分のパフォーマンスは格段に良くなる。

そのためには予算が必要、あるいは上司の許可がないとできないと言うかもしれないが、必要なことであると思うなら、ぜひ自分から会社に働きかけてみるべきではないだろうか。すぐに結果にはつながらなくても、その動きは自分にとっても会社にとっても決して無駄にはならないはずだ。

対策3 若手を前面に押し出す

「若手を前面に押し出す」ような動き方をしてみることも有効だろう。若手を立てることで、新しい価値観や考え方、仲間を得ることも多いはずだ。

社内に広くネットワークを持っている40代社員こそ、社内の根回しや既存事業との整合性をとったりして若手のアイディアを成果に変えることができる存在だ。経営者が頼りにするのもそんな行動をしてくれる社員だ。

多くの企業では、既に評価項目の中に「周囲への貢献・サポート」、あるいは「若手の育成」という項目が入っているはずだ。そして、これが経営者を本当に喜ばせる行動の1つでもある。

“人生100年時代”のキャリア形成を

かつては「50年」だった人生は、80年になり、近い将来100年まで延びようとしている。会社生活を「大過なく」勤めあげれば、あとは豊かな老後生活が待っていたのは過去の話だ。これからは人生を二毛作、三毛作することが当たり前の時代になる。

ビジネスパーソンとして経験を積み、スキルが身につき、体力もある40代は、まだまだ成長できる時期だ。自分の実力や能力、専門性をどう活かし、どう伸ばしていくかを再考するのに最適な時期と言える。固い言葉で説明すれば、自分のキャリアを自分で切り開くべき時期といってもいい。

もしも今の会社では全く自分を活かせないと判断するなら、転職を視野に入れてもいいのだ。

現にミドル世代の転職は活発になってきている。外で通用するだけのスキルを磨き、人脈も作っておきたい。

その結果として、40代がエネルギーを取り戻したら、会社も日本の社会も、もっともっと元気になるはずだ。

加島禎二(かしま・ていじ)株式会社セルム代表取締役社長 1967年生まれ。上智大学卒業。リクルートを経て、1998年、創業3年目の株式会社セルムに参加し、2002年 取締役企画本部長に就任。今日では1000名を超えるコンサルタントネットワークの礎を築く。同社の常務取締役関西支社長を経て、2010年に代表取締役社長に就任。一貫して「理念と戦略に同期した人材開発」を提唱し、次期経営人材の開発や人材開発体系の構築、リーダーシップ開発、組織開発などに携わる。現在も顧客のプロジェクトの最前線に立ちつつ、優れた経営と強い事業に貢献する人材開発のあり方について、積極的に発信を続けている。(『The 21 online』2017年09月07日公開)

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つらい仕事も楽しみに変わる5つの方法 泉谷直木(アサヒグループホールディングス会長)

経営トップが実践するモチベーションUPの方法とは?

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激戦のビール系飲料でシェアナンバーワンを維持し、積極的なM&Aで事業規模を拡大し続けるアサヒグループホールディングスで、社長時代にはグローバル展開を進めるなど攻めの経営に成功してきた会長兼CEOの泉谷直木氏。自身と組織のモチベーション管理術についてうかがった。《取材・構成=塚田有香、写真撮影=まるやゆういち》

モチベーション管理の「五つの秘策」とは

2016年に過去最大規模のM&Aとなる欧州ビール事業の買収を発表するなど、積極的な攻めの経営を続けるアサヒグループホールディングス。このチャレンジ精神あふれる組織を率いるのが、代表取締役会長の泉谷直木氏だ。常に前向きで意欲的なビジネスを展開するために、経営トップとして、そして一人のビジネスマンとして、どのようにモチベーションを管理してきたのだろうか。

「実を言うと、私はモチベーションについてそれほど悩んだことはありません。なぜなら長年仕事をする中で、私なりにいくつかのセルフコントロール術を身につけてきたからです。

その一つ目は、仕事も人生も楽しむ姿勢を持つことです。

私にとって仕事の何が楽しいかと言えば、知らないことが増えること。どこへ行っても、誰と会っても、『世の中にはそんなことがあるのか』『こんなに素晴らしい人がいるのか』という発見や気づきがある。これほど楽しいことはありません。

管理職世代になると『知らないことは恥ずかしい』と考える人が増えますが、私はそうは思わない。いくつになっても、『知らないことを知る』という体験は自分を成長させてくれます。

二つ目は、『自分はできる』と信じることです。40代くらいになると、『自分の力はこんなものだろう』と決めつけがちです。しかし40代は、長い人生から見ればまだまだ成長の途中。『自分はできる』と信じてチャレンジすれば、できることは確実に増えるし、より大きな目標に挑もうとするモチベーションも生まれます」

常にポジティブな「もう一人の自分」と対話

続いて挙げたのが、モチベーションが上がらないときに気持ちをうまく切り替えるコツだ。

「モチベーション管理術の三つ目は、常に複数の課題を抱えること。そう言うと、『ただでさえ忙しいのに、やるべき課題をいくつも抱えたらもっと大変になる』と思うかもしれません。

しかし複数の課題があれば、どこかの時点で別の課題に乗り換えられます。たとえ一つの課題がうまくいかなくても、もう一つの課題に手を着けてみれば、そちらはうまくいくかもしれない。すると元の課題に戻った時も、前向きに取り組めます。

四つ目は「常に積極的なもう一人の自分」が隣にいると思うこと。悩んだときも、自分の横にものすごく元気なもう一人の泉谷直木がいて、『何を悩んでんねん!』と言ってくれる。そういう存在と対話すれば、こちらの自分が落ち込んでいても、もう一人の自分がモチベーションを引き上げてくれるわけです」

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「モグラ叩き」がモチベーションを下げる!?

そして五つめに挙げたのが、「うまくいかないときこそ、ロジカルに普遍解を求めること」。一見すると思考術の話に思えるが、実はモチベーションと深く関連している。

「目の前の問題を一つずつ叩いて対処する『モグラ叩き』は、その場限りの解でしかない。根本的な解決にはならないので、どんなに頑張って叩いても会社や個人の業績は上がらず、モチベーションも向上しません。

そもそも、なぜ人間が悩むかと言えば、『わからない』から。目の前の問題が起こっている原因がわからないから、悩むわけです。だったら、悩みを解消するには『わかる』ようにするしかない。つまり、今起こっている現象を分析し、原因と結果の因果関係を突き止め、普遍解を見つけることが重要なのです。

物事がうまくいかないとき、原因はたいてい三つに絞られます。一つは、計画そのものが間違っている。二つ目は、計画は正しいが、やり方が間違っている。三つ目は、計画を開始した後で状況が変わったのに、ずっと同じやり方を続けている。ほとんどの問題は、この三つのいずれかが原因です。

原因さえわかれば、自分の上司にそれを説明し、計画ややり方を変えてもらうことも可能です。やり続けてもうまくいかないなら、どこかで潔く方針を切り替えなければ、悩み続けるだけでモチベーションをさらに下げることになります」

トイレ修繕やどぶ掃除も真剣にやった新人時代

泉谷氏は会長になった現在も、五つのモチベーション管理術を続けていると話す。とはいえ、「仕事を楽しもう」と考えていても、意に沿わない仕事を与えられると、なかなかやる気が出ないという人は多いだろう。だが泉谷氏は「人から言われたことを真剣にやるからこそ、自分のやりたい仕事や面白い仕事が与えられる」と話す。

「私が新人時代に配属されたのは、工場の倉庫課でした。新入りですから、言われたことは何でもやりましたよ。トイレの修繕もしたし、大雨が降って倉庫に水が流れ込みそうになったときは、下着一枚になってどぶ掃除をしたこともあります。

『言われたことをただやるだけなんて、バカみたいだ』と思う人もいるかもしれません。でも私は、『入社して最初の十年は修行の時期だから、言われたことは全部やる』と決めていました。すると面白いことに、一つの仕事をやり遂げるたびに周囲から認められ、人から言われることのレベルがどんどん上がっていったのです。そして工場にいるあいだに、人事や財務、庶務や調達まで、ひと通りの仕事を経験させてもらいました。

もし私が『なんでどぶ掃除なんか』とやる気を失い、適当にこなしていたら、周囲も私に与える仕事のレベルを上げようとは思わなかったでしょう」

頭一つ抜け出すことでやりがいはグッと高まる

会社員になって最初の10年を「修行」と捉えることで、目の前の仕事へのモチベーションにつなげることができる。では、その次の30代から40代は、どうやって仕事への意欲を高めればよいのだろうか。

「30代から40代は、自分の強みを確立する時期。余人を持って代え難い何かを持つことが、仕事を面白くしてくれます。

私は30代半ばで広報部に配属され、コーポレートアイデンティティ(CI)活動の担当を任されました。当時は弊社の業績が低迷しており、企業のイメージやカルチャーを変えることでお客様との関係性を改善していこうという全社的な改革運動が始まっていて、その専従担当になれと言われたわけです。

ところが私は、しばらく労働組合の役員を務めていて、会社に戻ったばかり。それがいきなり、何のことやらよくわからないCIというものを任されてしまった。人によっては、不安や自信のなさからモチベーションが下がる場面かもしれません。

でも、私はこう考えました。『CIに詳しい人はまだ社内にいないから、自分が少し勉強すれば、頭一つ抜け出せるぞ』と。

そして実際に、自分で勉強を始めてみたところ『CIなら泉谷が社内で一番詳しい』と周囲から評価されるようになり、役員からも質問を受けるようになりました。すると、聞かれたことに答えるために、また必死に勉強する。こうして、CIが私の強みとなっていきました。

CIの仕事をしたことでコーポレートコミュニケーション戦略に関心を持ち、会社に掛け合って新しい課を立ち上げたこともあります。こうしてやりたいことができたのも、自分の強みを確立したからです」

「運」ではなく「機会」という言葉を使おう

泉谷氏の考えに一貫しているのは、「モチベーションは誰かが与えてくれるのではなく、自ら主体的に生み出していくものだ」ということだ。

「自分のやる気に火をつけられるのは、自分しかいない。他人にいくら頼んでも、自分の気持ちを変えることはできません。

私がCIに携わっていた時期、仕事は非常にハードでした。実は最初の頃はCIの専従スタッフは私一人。しかも1986年1月に新しいコーポレートマークを世間にお披露目すると決まっていたので、時間も限られている。結局それまでの約半年間は、ほぼ休みなしで仕事をこなしました。

『こんなに忙しいのに、部下もつけてくれないなんて』と不満を言ったり、腹を立てたりすることもできたでしょう。でも私は、先ほどのモチベーション管理術を実践していたので、『このプロジェクトが成功したら、アサヒビールは一気に変わるんだ』と、ワクワクしながら仕事を楽しむことができました。

日本人はよく『運が悪くて、なかなかチャンスが来ない』という言い方をしますが、外国の人は 運やチャンスという前に『opportunity』という言葉を使います。運が悪いように思える場面でも、実は『機会』はいくらでもあり、それをチャンスに変えられるかは自分次第。そう考えれば、大変なときもモチベーションを失わず、チャレンジを続けられるのではないでしょうか」

泉谷直木(いずみや・なおき)アサヒグループホールディングス〔株〕代表取締役会長兼CEO 1948年、京都府生まれ。京都産業大学法学部卒業後、朝日麦酒㈱[89年にアサヒビール㈱に社名変更、2011年に純粋持株会社アサヒグループホールディングス㈱]に入社。1986年、広報企画課長。95年、広報部長。98年、経営戦略部長。2003年、取締役。06年、常務兼酒類本部長。09年、専務。10年、アサヒビール㈱社長。11年、持株会社制への移行により、アサヒグループホールディングス㈱社長に就任。16年3月より現職。(『The 21 online』2017年10月号より)

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「忙しい」と嘆く40代こそ、仕事の見直しを!酒巻 久(キヤノン電子[株]代表取締役社長)

「職場のムダ」を排除し、成長のための時間を確保しよう

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ドキュメントスキャナーや携帯端末の開発・生産に始まり、IT事業、そして宇宙事業と、世界をマーケットに〝攻める経営〟で突き進むキヤノン電子。1999年の社長就任以降、世に先駆けて働き方改革を実行し、生産性アップと新規事業開発を進めてきた酒巻久社長に、企業を前進させる仕事のムダとり、時短の実現についてうかがった。(取材・構成=麻生泰子、写真撮影=長谷川博一)

「時短」を成長戦略の一環と位置づけよ

政府が「働き方改革」を提唱するずっと以前から、社員の生産性を上げるさまざまな改革に取り組んできたことで知られるキヤノン電子。社長の酒巻氏は働き方改革の必要性を、日本が経済大国としてナンバーワンに君臨した1980年代後半から痛感していたという。

「キヤノン本社にいた1989年から、時短戦略の重要性を訴え続けてきました。当時、製造業を中心とする二次産業で日本はアメリカに勝ちましたが、アメリカはそれを機に二次産業を主とする産業構造から脱却、三次産業に移行すべく大転換をしました。〝強いアメリカ〟の復活を目指し、人材の意識改革、個の尊重、将来のための投資など抜本的な改革を行ない、それが現在のアメリカ経済の好調につながっています。

日本でも、長期的な視野に立ち、技術至上主義から第三次産業への移行を進める必要がある。そのためには『人』を中心とした構造改革を進めるべきだと考え、そのための提案書も作ったのです。まぁ、当時の上層部からは一蹴されましたけどね」

その意味で、やっと時代が追いついてきたとも言えるが、酒巻氏が注意を促すのは「なんのための時短か」という「目的」だ。

「政府と経済界が主導する『プレミアムフライデー』では、時短はあたかも仕事を早く終えて飲みに行くためにあるように思えますが、それは大きな間違いです。

仕事の効率化によりできた時間で講演会に行ったり本を読んだりして新たな知識を得たり、自分の将来を考えたりという『成長戦略』にこそ使うべきなのです。ただ飲んで憂さ晴らしをするだけならなんの発展性もありませんし、第一健康にも悪いでしょう」

一方で企業側も、時短は会社を強くするためのものだと認識する必要があるという。

「会社が戦略としての時短を打ち出すことで、社員の意識改革が進み、新たな業務効率化の知恵が生まれてくる。その結果として効率化が進み、社員が各自スキルアップする時間が生まれることで、事業の質が高まっていく。そして、会社がさらに進化していくのです。

時短戦略は社員のみならず、会社を質的に向上させ、強くする最善の方法なのです」

職場は「明らかなムダ」で溢れている!

時短を実現するために酒巻氏が実践した手法は極めてユニークだ。たとえば「会議は立って行なう」「朝イチでメールは見ない」など。その意図はどこにあるのだろうか。

「社員が働きやすく、物事がスピーディに進む職場環境を目指した結果、自然と出てきた施策です。たとえば会議は会議室で座って進めるものだという意識では、会議の進行は遅くなり、そもそも会議室を用意する手間もかかります。そこで、『立ち会議』を提唱し、オフィスの一角に高い机を用意し、立って会議するスタイルを採用したところ、意思決定のスピードが格段に上がりました。

また、『朝イチでのメールの禁止』は、朝の最も頭が冴えている時間にメール処理に時間を取られるのは明らかに無駄だから。そもそもメールはムダの多いコミュニケーション手法であり、キヤノン電子では原則、同じ部署内でのメールは禁止にしています。

ちなみに工場では、通路に5メートルを3.6秒で歩かないとアラームが鳴るシステムを導入しました。これは、データに基づき導き出された最も効率的かつ疲れにくいペースで、これを身体になじませるために採用しました」

酒巻氏の持論は「人間は持てる能力のせいぜい80%しか使っていない」ということだ。

「だから工夫によってはいくらでも効率化の余地はあるはずですが、いきなり『効率を20%上げろ』というのは無理があります。私はそんなとき『労働時間を従来の3%減らす代わりに、5%だけ効率を上げろ』と言います。これなら努力次第でなんとかなりそうですよね」

40代で「忙しい」人は仕事にムダが多い

酒巻氏は、40代で仕事が忙しいと嘆く人は「仕事の仕方がわかっていない」と指摘する。

「実際には『忙しい、忙しい』といって何も手を動かしていない人も多いものです。時間に追われている人は、実は仕事の整理がついていないケースが多いのです。

中でも最大のムダは、同じ失敗を繰り返すこと。何が失敗要因で何が成功要因だったかを検証しないから、同じ間違いを繰り返す。経験を次に生かす視点を持たないと、コンスタントに成果が生まれることはありません。こうした仕事の仕方が身につかないまま40代になると、いつまで経っても同じところをグルグル回るだけで、忙しさに追われて何もできない、ということになりがちです」

40代は自身の業務に加え、中間管理職として部下を管理する仕事もあり、それが忙しさを倍加させている節もある。

「部下指導に追われて首が回らないという人は、部下を管理しようとするから疲弊するし、時間を奪われるのです。そもそも、『仕事を手取り足取り教えてやろう』という考えが間違い。上司は方向性だけ示して、部下に自分で考えるクセをつけさせるべきです。

いつまでも上司が助けないと何もできないチームより、各自が主体的に動くチームのほうがムダなく速やかに成果が出るのは当然です。仕事が速い人は例外なく、人をうまく動かす人ですよ」

最速で合意を勝ち取る酒巻流交渉術とは?

もう一つ、酒巻氏がムダだと考えることがある。それが「交渉後の持ち帰り」だ。

「せっかく交渉に行ったのにその場で結論が出せず、『社に持ち帰って検討します』というケースが、とくに日本企業にはあまりに多い。海外の企業から見ると『何しに来たのだ』という話です。権限を持たない部下を派遣することは、まったくの時間のムダです」

ちなみに、酒巻氏は数多くの商談や交渉を経て「負けなし」を公言している。その強さにも、時間の使い方が関係していた。

「会議、商談、視察などの社外交渉では、『相手の出方をうかがおう』という姿勢では、勝ちは取れません。探り合いや情報共有、社に持ち帰るといったプロセスは一切ムダ。勝負は、事前に相手の情報を調べ、複数の交渉手段を考えておく準備力で決まります」

時間をかけるべきは、話し合いそのものの時間ではなく、準備の時間だということだ。

「交渉では先に提案したほうが優位に立てる。私は交渉相手の家族構成までリサーチします。

アメリカのある企業との交渉のときのエピソードがあります。そのとき私はスティーブ・ジョブズと組んで仕事をしていたのですが、ジョブズが交渉に行ってもどうしてもOKをくれない企業がありました。そこで私はいろいろと調査した結果、決定権を持つ人の奥さんが大の人形好きで、私との交渉日がちょうど二人の結婚記念日だということがわかったのです。

そこで私は交渉当日、あえて時間を長引かせました。というのも、アメリカ人は結婚記念日を大事にするので、相手は早く帰らなくてはならないはず。すると案の定、相手は時間を気にしてイライラし始めました。そこでさらに話を引き延ばし、ついにOKを引き出したのです。

この話はそれだけで終わりません。私は日本から奥さんへのお土産として日本人形を持参していました。それを彼に渡すと、大喜び。おかげでその後の交渉もスムーズに進みました。あとでジョブズも『どうやったんだ』と驚いていましたね。 リサーチの手間はかかっても、結果的に取れない合意を取れるのなら、調査時間はムダどころか、スピーディに合意を得るために“かけるべき時間”ということになります」

“今”の時短は10年後に活きる!

変化のスピードが30年単位だったアナログ時代と異なり、デジタル時代の今は最短1カ月でビジネスや技術の様相が一変する。だからこそ時短が必要だと、酒巻氏は指摘する。

「会社と自宅の往復だけでは、世の中の変化を敏感に感じ取れません。ここ数年を見ても、世の中の変化は驚くほど早かったでしょう。今は短期間のうちに新しい技術が生まれ、短期間で模倣されて、短期間で淘汰されていく時代です。

技術や販売網の構築に時間と手間がかかったアナログ時代は、ヒト・カネ・モノを握る大企業が勝ってきましたが、これからは意思決定が早く、小回りの効くベンチャーが勝つ時代です。

ところが、一部の大企業の経営陣や政府は、発想が二次産業時代で止まってしまっており、意思決定の迅速化ができていない。彼らの『ちょっと待て』という判断が、命取りになる時代なのです」

キヤノン電子の開発部門では、70歳を超えてもなお、現役で開発の中心的役割を担う社員が在籍しているという。

「彼らは例外なく、退勤後の自分の時間を生かし、たゆまぬ自己研鑽を重ねてきた人たちです。私はよく、30~40代になったら、20代の2倍は勉強するべき、50代は3倍勉強するべきと言っています。

勉強の半分はPCなり、ITなり、時代にキャッチアップするための内容。そして残りの半分は、将来を見据えた次のステップのための勉強です。専門分野を掘り下げつつ、周辺分野も広げていく。

たとえば、経理なら会計の勉強だけでなく、経営や人材マネジメントなどにも目を向けて守備範囲を拡張する。それが次のキャリアにつながっていきます。

とくに30代から50代のビジネスマンの方々は、時短を実現して自分の強みとなる付加価値をつけてほしいと思います。それにより、60代以降に自分の得意分野で、これまで以上に力を発揮できるはずです」

酒巻氏が実践するユニーク時短・ムダとり施策

・朝イチのメール禁止

朝一番の冴えた時間にメール処理をするのはもったいない! ということで始められたルール。朝以外もついつい見てしまいがちなので、キヤノン電子では原則、同じ部署内でのメールも禁止。

・会議への資料持ち込み禁止

会議の資料は「あとで見よう」と思いがち。実際には見返すことも稀なため、確認作業やミスなどのムダが生じる。資料は事前配布し会議には持ち込み禁止、読んでから参加とすることで、迅速・確実な情報共有を実現。

・「~だと思います」発言の禁止

憶測に基づいた曖昧な発言は「きっとそうなのだろう」という周囲の誤解を招き、のちに重大なミスを起こしうる。断言できること以外は発言禁止とすることで、誤情報によるミスという大きなムダを撲滅できる。

・立ち会議

オフィスの片隅に高い机を用意し、立って会議をした結果、会議時間をなんと75%も削減できたという。立っていると疲れるのであまり長く話していられず、スピーディに結論が出るのだ。

酒巻 久(さかまき・ひさし)キヤノン電子〔株〕代表取締役社長 1940 年、栃木県生まれ。芝浦工業大学工学部卒業後、67 年にキヤノン㈱に入社、複写機、ワープロ等の開発や総合企画等を経て、96 年に上部取締役生産本部長となる。99 年、キヤノン電子社長に就任。環境経営の徹底により、6年間で同社を売上高経常利益率10%超の高収益企業に成長させる。『見抜く力』(朝日新聞出版)など著書多数。(『The 21 online』2017年8月号より)

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最速最短で試験に 合格する「ずるい暗記術」 佐藤大和(レイ法律事務所代表弁護士)

「インプット」と「アウトプット」を同時に行なう

(写真=The 21 online)

思い立って資格試験勉強にチャレンジしてみたものの、忙しくて挫折するビジネスマンは多い。だからこそ、効率的な暗記術を身につければ周囲に圧倒的な差をつけることができる。司法試験に上位で一発合格した勉強法のエキスパート・佐藤大和氏から、忙しい社会人だからこそ実践すべき「ずるい暗記術」を学んでみよう。

最短で結果を出すには「一夜漬け」を応用

上司からも部下からも頼られる状況の中、とにかく忙しい30代、40代の中間管理職世代。そんな状態で資格取得を目指すなら、効率的な「ずるい」勉強法を実践する必要があります。

ヒントになるのは「一夜漬け」の際の勉強法。時間がない中、明日の試験に向けて一つでも多くのことを頭に詰め込もうとする。その勉強法は自然と効率の良いものになっているのです。

たとえば、一夜漬けの勉強では教科書を頭から読もうとはせず、まず「答え」を覚え込もうとする人が多かったはず。実はこの方法、大人の勉強においても正解。教科書や参考書を頭から読んでいくより、問題集の解答を読んでいくことで、新しい知識に脳を慣らすことができ、記憶のスピードが高まるのです。

あるいは、学生時代のようにきれいなノートを取ることに固執する人もいますが、これも、一夜漬けの際にそんな悠長なことをする人はいません。

それよりも、問題集を読みながらそこにメモを書き込むほうがよほど有効です。それも「なるほど」とか「?」「!」といった簡単なもので十分。すると、後でもう一度読み返したときに、メモしたときの感情とともに思い出すことができ、記憶の定着に役立つのです。

さらに、一夜漬けのように「時間を限定してしまう」のもお勧めです。勉強する時間をあえて

「朝の1時間だけ」「通勤の往復2時間だけ」などと限定してしまう。人間は締め切りがあると集中力が高まります。自分を追い込むことで高い集中力が発揮できるのです。

復習は「寝る前」と「起床後」の5分でいい

とはいえ、いくら一生懸命に集中して勉強しても、それが一度きりでは効果は出ません。ここは一夜漬けとは違い、繰り返すことが重要です。忙しい人にありがちなのは、勉強した次の日は接待、次の日は残業……などと、勉強の間隔が空いてしまうこと。これではせっかく覚えたことが消えてしまい、1週間前に勉強したことをまた一から学ぶのと変わらなくなってしまうのです。

ただし、復習・反復も「ずるく」行なうことが可能です。たとえば、遅く帰宅した日でも、寝る直前に問題集を五分間だけパラパラめくり、翌朝起きてすぐにまた5分間パラパラとめくる。これだけでも記憶の定着度がまったく違ってきます。

パラパラ「めくる」のは、「読む」のとは違います。「昨日は何を勉強したっけ」「そうだ、こんな問題だった」「ここで引っかかった」と思い出すだけで十分。思い出すことはアウトプットの訓練にもつながり、結果的に短時間で成果を出すことができるのです。

机に向かわない時間こそ暗記のゴールデンタイム

では、実際にどうやって、試験に必要な知識を最速で暗記していくかをご説明しましょう。

1.まず、問題集の答えにざっと目を通します。ポイントは、短時間で「浅く」見ていくこと。これだけで、「こういう知識が出題されやすい」という傾向をなんとなく把握できます。

2.次に、問題と答えを何回も見ていきます。すると、回数を重ねるうちに、内容が少しずつ頭の中に残っていきます。また、数多くの過去問をこなしていくうちに、同じ問題でもいろいろなパターンで出題されていることもわかってきます。一見違う問題に見えるものも、視点や言い回しを変えただけにすぎないことがわかってくるのです。

司法試験であっても、実は、昔から同じような論点が問われており、基本は出題の形を変えているにすぎません。

しかし、問題の傾向がわからなければ、解答に時間がかかったり、見当違いな解答をしてしまいます。問題を見た瞬間に出題の傾向を理解し、解答を思いつくことを目指しましょう。

3.理解できないところがあれば、教科書・参考書を読みます。ここで初めて参考書を開きます。何がわからないのかを知ったうえで読むからこそ、知識を効率的に吸収できるのです。

4.あとは、問題・解答を繰り返し見て、記憶していきます。何度も見ていれば出題頻度の高い問題とそうでない問題がわかってきます。出題頻度の高い問題を優先して復習するというランク分けもしていきましょう。

5.試験が近づいたら、「問題を見た瞬間に答えを導き出すための練習」に移ります。すなわちアウトプットの練習です。といっても、机に向かって問題を解かなくてOK。問題を見て、「あ、これはこうだな」と解答への道筋を思いつけるレベルになれば十分です。

アウトプットというのは、試験本番で必要な知識を思い出すということ。すなわち、アウトプット力とは「思い出し力」にほかなりません。これを鍛えるために、私が司法試験受験生時代に重視していたのが、「机に向かわない」勉強法でした。散歩をしながら、テレビを観ながら、音楽を聴きながら、問題集や参考書を見ることなく「今日勉強したこと」「昨日見た問題と解答」を思い出すのです。これを繰り返すことで、思い出す力=アウトプット力が鍛えられ、しかも思い出すことによって記憶も強化されます。

また、夜と朝の5分間を活用した記憶出し入れ術も、思い出し力強化と記憶の定着に有効です。

勉強というと机に向かって本を開くもの、というイメージがありますが、思い出す訓練を実践するには、机に向かわず、問題集も参考書も見ない時間を確保することこそが必要です。忙しいビジネスマンが通勤時間や移動時間を活用するのに最適な方法と言えるでしょう。

とはいえ、私のご紹介した勉強法はあくまで一案です。勉強法とはミニ四駆のようなもので、モーターを変えたり、タイヤを変えたり、さまざまなパーツを取り入れることで「最速」を目指すもの。

この特集だけでも、多くのエキスパートの方がさまざまな勉強法や暗記法を紹介していらっしゃると思います。その中から、自分にとって使いやすい「パーツ」をどんどん組み込んでいきましょう。その1つとして、私の勉強法も役立てていただければ幸いです。

佐藤大和(さとう・やまと)レイ法律事務所代表弁護士 偏差値30台の落ちこぼれだったが、勉強に目覚めて立命館大学法科大学院に数ヶ月の勉強で合格し、司法試験には1回で合格。その方法論をまとめた『ずるい暗記術』(ダイヤモンド社)がベストセラーになったほか、テレビのコメンテーターなどでも幅広く活躍。近著『超楽仕事術』(水王舎)も好評を博している。(取材構成:川端隆人)(『The 21 online』2017年7月号より)

【関連記事 The 21 onlineより】 ・40代からでも取っておきたい「資格」社会人の勉強は、「暗記」しても身につかない!大人は「丸暗記」より「経験の記憶」が重要現場のリアリティが伝わる「暗記メモ」の秘密情報を刻み込む! 「記憶ノート」の作り方

最速最短で試験に 合格する「ずるい暗記術」 佐藤大和(レイ法律事務所代表弁護士)

「インプット」と「アウトプット」を同時に行なう

(写真=The 21 online)

思い立って資格試験勉強にチャレンジしてみたものの、忙しくて挫折するビジネスマンは多い。だからこそ、効率的な暗記術を身につければ周囲に圧倒的な差をつけることができる。司法試験に上位で一発合格した勉強法のエキスパート・佐藤大和氏から、忙しい社会人だからこそ実践すべき「ずるい暗記術」を学んでみよう。

最短で結果を出すには「一夜漬け」を応用

上司からも部下からも頼られる状況の中、とにかく忙しい30代、40代の中間管理職世代。そんな状態で資格取得を目指すなら、効率的な「ずるい」勉強法を実践する必要があります。

ヒントになるのは「一夜漬け」の際の勉強法。時間がない中、明日の試験に向けて一つでも多くのことを頭に詰め込もうとする。その勉強法は自然と効率の良いものになっているのです。

たとえば、一夜漬けの勉強では教科書を頭から読もうとはせず、まず「答え」を覚え込もうとする人が多かったはず。実はこの方法、大人の勉強においても正解。教科書や参考書を頭から読んでいくより、問題集の解答を読んでいくことで、新しい知識に脳を慣らすことができ、記憶のスピードが高まるのです。

あるいは、学生時代のようにきれいなノートを取ることに固執する人もいますが、これも、一夜漬けの際にそんな悠長なことをする人はいません。

それよりも、問題集を読みながらそこにメモを書き込むほうがよほど有効です。それも「なるほど」とか「?」「!」といった簡単なもので十分。すると、後でもう一度読み返したときに、メモしたときの感情とともに思い出すことができ、記憶の定着に役立つのです。

さらに、一夜漬けのように「時間を限定してしまう」のもお勧めです。勉強する時間をあえて

「朝の1時間だけ」「通勤の往復2時間だけ」などと限定してしまう。人間は締め切りがあると集中力が高まります。自分を追い込むことで高い集中力が発揮できるのです。

復習は「寝る前」と「起床後」の5分でいい

とはいえ、いくら一生懸命に集中して勉強しても、それが一度きりでは効果は出ません。ここは一夜漬けとは違い、繰り返すことが重要です。忙しい人にありがちなのは、勉強した次の日は接待、次の日は残業……などと、勉強の間隔が空いてしまうこと。これではせっかく覚えたことが消えてしまい、1週間前に勉強したことをまた一から学ぶのと変わらなくなってしまうのです。

ただし、復習・反復も「ずるく」行なうことが可能です。たとえば、遅く帰宅した日でも、寝る直前に問題集を五分間だけパラパラめくり、翌朝起きてすぐにまた5分間パラパラとめくる。これだけでも記憶の定着度がまったく違ってきます。

パラパラ「めくる」のは、「読む」のとは違います。「昨日は何を勉強したっけ」「そうだ、こんな問題だった」「ここで引っかかった」と思い出すだけで十分。思い出すことはアウトプットの訓練にもつながり、結果的に短時間で成果を出すことができるのです。

机に向かわない時間こそ暗記のゴールデンタイム

では、実際にどうやって、試験に必要な知識を最速で暗記していくかをご説明しましょう。

1.まず、問題集の答えにざっと目を通します。ポイントは、短時間で「浅く」見ていくこと。これだけで、「こういう知識が出題されやすい」という傾向をなんとなく把握できます。

2.次に、問題と答えを何回も見ていきます。すると、回数を重ねるうちに、内容が少しずつ頭の中に残っていきます。また、数多くの過去問をこなしていくうちに、同じ問題でもいろいろなパターンで出題されていることもわかってきます。一見違う問題に見えるものも、視点や言い回しを変えただけにすぎないことがわかってくるのです。

司法試験であっても、実は、昔から同じような論点が問われており、基本は出題の形を変えているにすぎません。

しかし、問題の傾向がわからなければ、解答に時間がかかったり、見当違いな解答をしてしまいます。問題を見た瞬間に出題の傾向を理解し、解答を思いつくことを目指しましょう。

3.理解できないところがあれば、教科書・参考書を読みます。ここで初めて参考書を開きます。何がわからないのかを知ったうえで読むからこそ、知識を効率的に吸収できるのです。

4.あとは、問題・解答を繰り返し見て、記憶していきます。何度も見ていれば出題頻度の高い問題とそうでない問題がわかってきます。出題頻度の高い問題を優先して復習するというランク分けもしていきましょう。

5.試験が近づいたら、「問題を見た瞬間に答えを導き出すための練習」に移ります。すなわちアウトプットの練習です。といっても、机に向かって問題を解かなくてOK。問題を見て、「あ、これはこうだな」と解答への道筋を思いつけるレベルになれば十分です。

アウトプットというのは、試験本番で必要な知識を思い出すということ。すなわち、アウトプット力とは「思い出し力」にほかなりません。これを鍛えるために、私が司法試験受験生時代に重視していたのが、「机に向かわない」勉強法でした。散歩をしながら、テレビを観ながら、音楽を聴きながら、問題集や参考書を見ることなく「今日勉強したこと」「昨日見た問題と解答」を思い出すのです。これを繰り返すことで、思い出す力=アウトプット力が鍛えられ、しかも思い出すことによって記憶も強化されます。

また、夜と朝の5分間を活用した記憶出し入れ術も、思い出し力強化と記憶の定着に有効です。

勉強というと机に向かって本を開くもの、というイメージがありますが、思い出す訓練を実践するには、机に向かわず、問題集も参考書も見ない時間を確保することこそが必要です。忙しいビジネスマンが通勤時間や移動時間を活用するのに最適な方法と言えるでしょう。

とはいえ、私のご紹介した勉強法はあくまで一案です。勉強法とはミニ四駆のようなもので、モーターを変えたり、タイヤを変えたり、さまざまなパーツを取り入れることで「最速」を目指すもの。

この特集だけでも、多くのエキスパートの方がさまざまな勉強法や暗記法を紹介していらっしゃると思います。その中から、自分にとって使いやすい「パーツ」をどんどん組み込んでいきましょう。その1つとして、私の勉強法も役立てていただければ幸いです。

佐藤大和(さとう・やまと)レイ法律事務所代表弁護士 偏差値30台の落ちこぼれだったが、勉強に目覚めて立命館大学法科大学院に数ヶ月の勉強で合格し、司法試験には1回で合格。その方法論をまとめた『ずるい暗記術』(ダイヤモンド社)がベストセラーになったほか、テレビのコメンテーターなどでも幅広く活躍。近著『超楽仕事術』(水王舎)も好評を博している。(取材構成:川端隆人)(『The 21 online』2017年7月号より)

【関連記事 The 21 onlineより】 ・40代からでも取っておきたい「資格」社会人の勉強は、「暗記」しても身につかない!大人は「丸暗記」より「経験の記憶」が重要現場のリアリティが伝わる「暗記メモ」の秘密情報を刻み込む! 「記憶ノート」の作り方

指示をするとき「あとで」「ちょっと」と言ってはならない!

一見ムダな雑談時間も、本当は重要

(写真=photolibrary)

部下への指示がきちんと理解されずにやり直しになったり、報告や連絡が行き違いになって誤解が生じたり……、コミュニケーションのミスは、仕事を滞らせる原因となる。職場改革のプロであり、ダイバーシティにも詳しい前川孝雄氏に、仕事のムダをなくすコミュニケーションについてアドバイスをいただいた。《取材・構成=前田はるみ》

「普通はこう」という意識を捨てよう!

近年はダイバーシティの潮流を背景に、職場でのコミュニケーションがより難しくなっているのを感じます。年代や性別、国籍を超えて、価値観や働き方の異なる人たちが一つの組織に集うようになり、日本企業でこれまでなんとなく不文律として浸透してきたことが、通じなくなってきているのです。

そのため、上司は伝えたつもりでも、部下にすれば「それ、聞きましたっけ?」といったコミュニケーションのズレが至る所で起きています。その結果、互いの理解不足や誤解から、仕事のやり直しにつながるなどのムダが生じているのです。

こうしたコミュニケーションのズレを引き起こす要因の一つに、言葉の定義が人によって違うことが挙げられます。

たとえば、部下から声をかけられたものの、手が離せなくてすぐに応じられない場合、あなたならどう答えますか。「ちょっと待って。後で声をかけるから」と答えるか、あるいは「一時間後に手が空くから、もう一度声をかけてくれる?」と答えるか。これを管理職研修で問いかけると、参加者の多くは、上司から声をかけるべきだとして前者を選びます。

しかし、「ちょっと待って」の「ちょっと」とは、何分のことでしょうか。上司は1時間のつもりでも、部下は10分程度と解釈するかもしれません。部下にすれば、いつまで経っても上司から声がかからず、仕事の手を止めたまま1時間も待つというムダが生じます。部下への指示では、定義の曖昧な言葉は避けるべきで、先ほどの例では、「1時間後にもう一度声をかけてくれる?」が正しい選択です。

同じように、「普通はこうするよね」という言葉もよく聞かれますが、この「普通」も人によって違います。たとえば、「部下に仕事の計画を立てさせても、報告に来てくれない。普通は自分から報告するよね」という上司がいるとします。 これは、「普通」なのでしょうか。部下が報告をしないのは、その段階で報告する必要がないと思っているせいかもしれませんし、単にそのように教育されていないだけなのかもしれません。こういう場合は、上司から声をかければすむことでもあります。「普通はこうだ」と決めつけないことは、ムダな誤解や理解不足を防ぐためには重要です。

あえて「雑談の時間」を作る意味とは?

そもそも、一度伝えただけで、相手が百パーセント正しく理解することは難しいと思います。

昔は、組織に人的・時間的な余裕があったため、雑談や飲み会の場で「ああでもない、こうでもない」と議論しながら、コミュニケーションのズレや不足を埋めることができました。しかし、今は効率や生産性を追求するあまり、雑談などの機会が削ぎ落とされてしまっています。このことが、先ほど述べたダイバーシティの進展に加えて、職場でのコミュニケーションをより一層難しくしているのです。

とはいえ、今は子育てや介護などで働き方に制約や制限のある人が増えており、就業時間外の飲み会が最善の方法とは言えません。であれば、飲みニケーションに代わる今の時代に即したコミュニケーションの機会を、時間内で工夫するしかないと思います。

たとえば、私が経営する会社では、長期休暇後の最初のミーティングでは、休暇中の出来事について皆で一時間ほど話します。また週に一度、その週に読んだ本を互いに紹介し合う時間を設けています。仕事に直結するわけではありませんが、相互理解に大変役立っています。

一見するとムダに思える雑談も、コミュニケーションのズレや不足を補うためにはあえて必要ではないでしょうか。

定例の情報共有タイムで報連相のムダを排除!

最近は、プレイングマネジャーとして多忙な上司が増えています。そのため部下が報連相するタイミングをつかめず、仕事の進め方を誤った結果、取り返しのつかない事態を招くこともあります。そうならないよう、必要なときにコミュニケーションを取れるようにするには、次の二つの方法があります。

一つは、報連相の時間をあらかじめ設けておくことです。たとえば、毎週月曜日の朝九時から十時までを定例の情報共有タイムと決めておき、急ぎではない報連相はこの時間を利用するようにします。

もう一つ、緊急を要する報連相については、全員のスケジュールをオープンにしておくことで、部下は上司の空き時間を確認して報連相を行なうことができます。私の会社ではグーグルカレンダーやドライブを活用していますが、こうしたITツールを使えば、互いのスケジュールや進捗を把握でき、報連相のために声をかけやすいはずです。

さらに言えば、上司からの声かけがあれば、なお良いでしょう。「今週は水曜の午前中に比較的余裕があるから、何かあれば相談して」と声をかけておきます。このように、定例での時間の確保や、スケジュールの見える化と上司からの声かけを習慣化することで、報連相をスムーズに行うことができます。

「すべて監視する」姿勢は生産性を低下させる

こうした環境作りに加えて、本人の役割設定や目標設定を明確にしておくことが、実は仕事の効率を高めるために最も大事なことだと思います。

たとえば、プロジェクトの立ち上げのタイミングで、上司は部下に対して、部下に求める役割と目標を示し納得させます。そのうえで、目標達成のためのプロセスは、部下本人に設計させます。部下の行動をすべて管理しようとする上司がいますが、これでは部下のやる気を削いでしまいます。ゴールは上司が決め、プロセスは本人に任せる。これがメンバーの自律的な動きを促すうえで非常に重要です。

プロジェクトがスタートしたら、定期的に面談を行ない、本人が設定したプロセスどおりに進んでいるか確認します。基本的にはメンバーの自律的な動きに任せながらも、軌道修正や問題解決をサポートする時間を定期的に設けておくことで、結果的に仕事の生産性や効率アップにつなげることができるのです。

前川孝雄(まえかわ・たかお)〔株〕FeelWorks 代表取締役/青山学院大学兼任講師 1966年、兵庫県生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒業。㈱リクルートを経て、2008年に起業。「上司力研修」「働きがいサーベイ」「人を活かす経営者ゼミ」「育成風土を創る社内報」などを通じて、300社超で人が育つ現場作りを支援。〔株〕働きがい創造研究所会長。青山学院大学兼任講師。著書に、『「働きがいあふれる」チームの作り方』(ベスト新書)、『上司の9割は部下の成長に無関心』(PHPビジネス新書)など。(『The 21 online』2017年8月号より)

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「しなやかな地方移住」で選択肢は広がる

「東京一極集中」は幻想に過ぎない!

(写真=The 21 online/藻谷浩介(日本総合研究所主席研究員))

「大都市には仕事があるが、地方は仕事がなく暮らしていけない」「大都市=繁栄、地方=衰退」……。いまだに多くの人がそう思い込んでいる。だがそれは大きな誤解であり、むしろ大都市に住み続けることのほうがリスクになるかもしれないと指摘するのは、人気エコノミストの藻谷浩介氏だ。都市と地方の現状と、地方移住の可能性についてうかがった。

「首都圏=若者」「地方=高齢者」のウソ

「たくさんの若者が流入し繁栄する首都圏と、高齢者ばかりが残り衰退する地方」──日本の現状をそうした図式で捉えているならば、今すぐ認識を改めるべきだろう。高齢化の問題が深刻なのは、むしろ首都圏のほうだからだ。

15歳以上65歳未満の人口のことを「生産年齢人口」という。いわば「現役世代」である。2010年から15年の間に、日本全体では100万人近く人口が減ったにもかかわらず、首都圏一都三県だけは人口が51万人も増えた。増えたうちの42万人は、地方から新たに首都圏に流れ込んだ現役世代だ。これだけみれば、首都圏の一人勝ちと思うのも無理はない。

しかしこの間、首都圏の生産年齢人口は75万人も減少していたのである。14歳以下の子供の数も7万人減り、65歳以上の高齢者だけが134万人も増えていた。首都圏で年々空き家や空き室が増加しているのも、首都圏本拠の大手スーパーや飲食チェーンの中にも経営不振に陥る例が後を絶たないのも、これが理由だ。

このようなことが起きた理由は、いわゆる「団塊の世代」がいっせいに65歳以上になったからだ。首都圏在住者だけでもその数実に269万人。高度成長時代に地方から大量に流入してきた方々である。これに対し新たに15歳を超えた首都圏の若者は152万人と、団塊世代の半分少々しかおらず、地方から流入した現役世代を加えても、75万人の減少となってしまったわけだ。

そもそも首都圏の出生率は、全国でも最低レベル。いくら他地域から現役世代が流入しても、彼らの次世代が育たないので、生産年齢人口は減っていく。他方で流れ込んだ層は、ほとんどが首都圏に残って続々高齢者となっていく。

高齢者の増加は、医療分野や福祉分野の支出の増大を招き、自治体の財政を逼迫させる。子育て支援に予算を振り向ける余裕がなくなり、出生率は回復しない。これが首都圏の現状である。

小さな島で実現している「持続可能な社会」

これに対して地方では、高齢者がほとんど増えていない自治体や、減り始めた自治体が続々登場している。高度成長期に当時の若者、つまり団塊の世代を大量に都市部に流出させてしまったぶん、新たに高齢者になる人数が少ないからだ。多くの過疎自治体では、医療費や福祉費が予算を下回り始め、そのぶんを子育て支援などに回すことが可能になり始めている。子育て環境をアピールして、若い世代の流入を増やしている自治体も増えてきた。

その代表例が島根県の隠岐島にある海士町。この町では地域活性のためのさまざまな取り組みが行なわれており、たとえば子育て支援では、出産準備金出産祝い金の支給、子供の医療費助成などが実施され、成果を上げている。

海士町では、最近5年間に、どの世代の人口も横ばいという状況が実現した。過疎の離島なのでそもそも高齢者が圧倒的に多いのだが、出生率は2を大きく上回っており、子どもが減らなくなったので、これ以上の学校統廃合は必要ない。高齢者も増減していないので、医療福祉負担は増えないし、かといって既存施設もつぶれない。生産年齢人口が横ばいなので、数少ない商店や居酒屋も潰れない。まさに「持続可能な社会」を実現しているのだ。

もちろん地方のほとんどの市町村は、まだ海士町のように成功しているわけではない。貴重な予算を子育て支援に回さず、道路の整備にばかり充てているような自治体は、早晩衰退の一途を辿っていくだろう。ただし、海士町に続く自治体がいくつも出てきているのも事実。少なくとも「高齢化で衰退する地方」という視点がいかに一面的か、おわかりいただけただろう。

「地方には仕事がない」というのは明らかな誤解

みなさんが大企業のトップに上り詰めようとでも思っていない限り、高齢者の増え続ける大都市に住み続けるよりも、海士町のような持続可能性の高い地方を見つけて移住することを私はお勧めする。ただ、こう言うと必ず「地方には仕事がない」と反論する人がいるが、これも事実に反している。

都道府県別の失業率を見てみれば一目瞭然で、東京都や大阪府、福岡県といった大都市圏のほうが高い傾向にある。地方でも高止まりが続いている県もあるが、福井県や和歌山県、島根県など低失業率を維持している県も多い。つまり、「地方=仕事はない」というのは、完全な先入観なのだ。たとえば福井県はハイテク産業の集積地であり、福井大学工学部の卒業生は、地元では引く手あまたである。また共働き率が高いこともあり、勤労者世帯あたりの現金収入は全国1位。ところが、福井に住んでいる人でさえ「地元には仕事がない」と思い込んでいるため、人口流出が止まらない。だから常に人手が足りず、失業率も低いのだ。

実は、福井のように地元民が地域の魅力を理解していないケースは少なくない。ここに、都市圏から地方に移住する意味がある。外から来た人材だからこそ、地元の魅力を客観的に理解できる。あとは地元の人とうまくコミュニケーションを取ることで、大都市圏や世界を相手にその魅力を発信することも可能になるだろう。複数の仕事で食べていくという発想も

とはいえ、めぼしい産業が存在しない地域も確かに存在する。「そんなところで本当に食っていけるのか」と不安に感じる人がいるのも無理はない。

そこで、先日講演に行った長崎県平戸市で出会った、ある若者を紹介したい。平戸市は人口約3万人で人口減も激しい。そんな中、この地に移住をしてきた彼はネット通販の古書店を運営しながら、近隣の人から大工仕事などさまざまな頼まれごとを、少額の手間賃、あるいは取れた野菜をもらうことなどで請け負っているのである。つまり、1つの職業だけで稼ぐのではなく、自分の持てる技術を総動員し、工夫して生計を立てるという発想なのだ。

元々、家賃は低い。余るほどの作物を栽培している農家も多く、こうした人たちときちんと関係を作れば、頻繁に野菜やお米を分けてもらえる。年収200~300万円程度の収入があれば十分食べていけるだろう。老後も国民年金だけで十分生活できる。

ただし、そのためには平戸の若者のように、積極的に地元民に関わっていくコミュニケーションスキルと、自分の持つスキルをフルに活用し、受けた恩恵を別の形で返していくという姿勢が欠かせない。与えられた仕事を黙々とこなすのが得意なタイプにとっては、少々難しいかもしれない。

ただ、うまくいかなかったら引っ越せばいい。地方といっても千差万別であり、人によって向き・不向きがあるのは当然だ。子供が小さいときだけ、子育てがしやすい地方に移住するという発想もあるだろう。そんな「しなやかな」考え方で、地方移住をぜひ人生の選択肢の一つに加えていただきたい。(取材・構成:長谷川敦)

藻谷浩介(日本総合研究所主席研究員) (『The 21 online』2017年8月号より)

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「ストーリー式記憶術」で無理せず楽しく覚える

もう「丸暗記」はしなくていい!

(写真=The 21 online)

年齢を重ねるにつれ記憶力が鈍って、新しい知識を覚えられない──と悩むことの多い40代。その苦労は「楽しく、合理的な覚え方によって解消できる」と語るのは、32歳で米ハーバード大学法科大学院に入学した山口真由氏。司法試験をはじめ多くの難関を突破してきた山口氏が勧める「ストーリー式記憶法」の極意とは?

40代のインプットは「合理的に楽しく」

学生時代や新入社員時代にひたすら知識を吸収してきた方々も、30代、40代に入るとかつて学んだ知識を使って要領よく仕事をこなし、「もう新しい分野へのチャレンジはおしまい」という気持ちが芽生えがちです。

「今さら勉強なんて……」としり込みする人も少なくありません。

しかし、私はこの年代こそ新たなインプットが必要だと思います。今はこれまでの蓄積が開花する「充実期」を過ごせているかもしれませんが、50代を超える頃にはそのストックも尽き、昔の焼き直しのような仕事しかできなくなる危険も。それでは、技術が日進月歩で進化する現代のビジネスシーンについていけなくなります。新しい知識を学び続けなければ、市場では生き残れないのです。

とはいえ、体力が衰えてくると「覚える力」に変化が訪れるのもまた事実。私自身、32歳でハーバード大学に入学したときには、昔のように徹夜で知識を詰め込むような勉強法はもう不可能だと気づかされました。

そこで考えたのが、より合理的な記憶法──すべての知識をストーリーに見立てて覚える「ストーリー式記憶法」です。

これは私が幼少期より無意識に行なってきた手法なのですが、30代に入ってからはより意識的に活用するようになりました。では、なぜストーリー化することが有効なのか。そのメカニズムを説明しましょう。

記憶には、いわゆる知識を覚える「意味記憶」と、自らの体験を記憶する「エピソード記憶」があります。「いつどこで、何を経験したか」というエピソード記憶は、自分自身の感情と直結するため知識記憶より鮮やかに残り、思い出しやすいのが特徴。ストーリー式記憶法はその特徴を利用して、知識=意味記憶を、エピソード記憶に近い形にして楽しく覚えるという方法です。

法律ですら、心に響く「ストーリー」になる!

「そんなことが可能なのか?」と思われるかもしれませんが、実際にはどんな分野でもストーリーにアレンジできるものです。

たとえば、私の専門分野である法律の世界。一見、無味乾燥な条文の丸暗記ばかりが必要と思われがちですが、それは誤解です。さまざまな「判例」は、まさにひとつの物語です。とくに私が留学時代に熱心に学んだ「家族法」(夫婦や親子など家族に関連する法律)は、当事者の行動に共感したり憤慨したりの連続でした。 1つひとつの判例もドラマチックですが、複数の判例を時系列で追うと、そこにもストーリーがあります。

たとえば、1920年代には却下されていた「不貞をした側による離婚の申し立て」が、70年代には緩和され、80年代になると「別居期間が長く、結婚が破綻していれば許される」と変わっていくのは、日本における家族観の変化が垣間見えて面白いものです。1つの判例、判例から判例への推移、さらにそれらが家族をめぐる全体の歴史を作っていく。このように、重層的にストーリーが楽しめるのです。

経営や会計といった、数字に関わる分野の暗記も同様です。利益目標を立て、それに向かって何をすればどういう結果が得られるか、というストーリーを組み立てることが可能です。ストーリー化とは、因果関係を整理することで記憶に残りやすくする作業とも言えるでしょう。

ストーリー化が難しそうな経済学の公式にも、物語性を見出すことは可能です。「人がこう行動すればこんな現象が起こる」といった分析や推論はまさにストーリー。たとえば、各人が公平性を無視して自分の利益だけを追求すると結局は全員が損をする、という「共有地の悲劇」などはその典型です。

日本史や世界史となると、長大なストーリーそのものです。ここで「年表の丸暗記」などの無機的な勉強法を選択してしまうのはもったいない話です。年代を覚えるための「語呂合わせ」も、良い方法だとは思えません。起こった出来事の内容と直結する語句を使っているならまだしも、大半はかなり無理のあるこじつけや、無関係な言葉です。出来事と語句の関係性が薄いため、思い出しにくいのです。出来事の前後関係や背景を踏まえて一連の流れとして覚えるほうが効率的で、ひとつのエピソードから連想して思い出しやすくもなるはずです。

では、語学はどうでしょうか。英単語や文法の暗記はストーリーとは縁が薄いように思われますが、「面白いストーリーを伴う文章」を読むことで楽しく覚えられます。小説や興味のあるテーマのニュース、海外スターのゴシップ記事なども面白い教材になります。英語「を」覚えようとするのではなく、英語「で」覚える感覚で楽しむのが良い方法です。

「覚えている自分」もストーリー化しよう

また、分野を問わずお勧めしたいのが、「覚えているときの自分」と結びつけるという方法です。「この本はあの店でコーヒーを飲みながら読んだ」「この部分は○○線の車中で覚えたところだ」と、インプット中に自分が何をしていたかというエピソードとセットにすると、学んだ内容も強く記憶され、思い出しやすくなるのです。

ちなみに、私は美容院で髪を切りながら勉強することがよくあります。「髪を切る」という、ある意味特異な状況と結びつけることが、印象を深めるうえで効果的なのです。

また、「自らストーリーを作る」という意味で有効なのが「ひとり質疑応答」。学んだ内容に関する質問を想像し、それに答えてみましょう。

私も司法試験の勉強中に「ひとり口頭試問」をよく行ないましたが、それによって理解が深まりました。聞かれて答える自分、というストーリーを描くことでより深い学習体験ができ、記憶として定着させることができるのです。

山口真由(やまぐち・まゆ)弁護士 1983年生まれ。札幌市出身。筑波大学附属高等学校進学を機に単身上京。2002年に、東京大学入学し、法学部に進み、3年次に司法試験、翌年には国家公務員Ⅰ種に合格。また、学業と並行して、東京大学運動会男子ラクロス部のマネージャーも務める。学業成績は在学中4年間を通じて“オール優”で、4年次には「法学部における成績優秀者」として総長賞を受け、2006年3月に首席で卒業。同年4月に財務省に入省し、主税局に配属。主に国際課税を含む租税政策に従事。2008年に財務省を退官し、2009年に弁護士登録。現在は主に、企業法務を担当する弁護士として活動するかたわら、テレビ番組や執筆等でも活躍中。 著書に『天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある』(扶桑社)、『東大首席弁護士が教える超速「7回読み」勉強法』(PHP研究所)がある。(取材・構成:林加愛)(『The 21 online』2017年7月号より)

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